トランプ新政権の日本への意味とは その4 孤立主義ではない
Japan In-depth / 2025年1月9日 11時0分
古森 そう言えると思います。そもそも民主党は伝統的に軍事は避ける、軍事忌避の体質があるのです。バイデンもカマラ・ハリスも軍事についてほとんど語ったことはありません。民主党にはリベラル派のオカシオコルテス議員など4人組と言われる女性議員や社会主義者を自認する上院のバーニー・サンダース議員などといった人たちがいて国防費増額に反対している。だから、バイデン政権の一番新しい国防費は前年比の名目1%増です。今はインフレが3%ぐらいですから、実質上のマイナスです。それに対してトランプの前政権では四年間をすべてで前年比2桁増を続けてきたわけですから、その違いは大きいのです。
――トランプ大統領の対外政策は孤立主義だとする批判については、どうでしょうか。
古森 トランプ氏の対外政策は孤立主義ではなく、選別的な介入だと思います。アメリカの国民の命を奪う、あるいは国益の根幹を傷つける、さらには国際秩序の全体を揺るがすとかいう大きな出来事については、トランプ陣営は外国に対しても介入していくと宣言しています。
その象徴的なケースが、シリアのアサド政権が化学兵器を使ったときには59発のミサイルを撃ち込みました。しかも、中国の習近平がフロリダの私邸を訪問していたときに攻撃を実行したのです。
トランプ第一次政権の国家安全保障戦略には、孤立主義どころか同盟関係を重視する、強化するとはっきり書いてあった。むろん、その強化の有効な方法は、同盟相手にもう少し防衛努力してもらうことだとも書いていました。この同盟重視も孤立主義とは正反対ですね。
では日本側の一部の識者とされる人たちの間などで、「トランプ政権は孤立主義だ」と断ずるような見解が出てくるのか。その根源を探ることも意味がありますね。
まず第一はトランプ氏自身の言葉の切り取りです。彼は選挙戦では1時間半くらいはプロンプターなしで演説する人です。洪水のように言葉が彼自身の口から出てくる。その洪水のなから、孤立主義とも思われる瞬間的な表現を文脈から切り取って孤立主義だと断じる。こういう事例も多いのです。
NATOの欧州側諸国がもし防衛費をGDPの2%以上にするという公約を果たさない場合、「アメリカはその国を守らない」というトランプ氏の言葉も趣旨は公約をきちんと守ってくれという意味でした。しかも彼はそんな言葉のすぐ後に「そう述べたら、多くの国が公約を守ってくれた」とつけ加えていたのです。発言の目的はNATO脱退ではなく、NATO強化だったのです。韓国との関係、日本との関係も同じく同盟強化です。ただし日本に対してはもっと防衛費を増やせとか在日米軍経費を増やせとかは公には全然求めてはいません。
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