米商務省、輸出管理の予算拡充、2025年度予算教書(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月13日 14時55分
米国のバイデン政権は3月11日、2025年度予算(2024年10月~2025年9月)の予算教書を発表した(2024年3月12日記事参照)。同日の商務省の発表によると、商務省は裁量的経費として114億ドル(2024年度123億ドル)、義務的経費として40億ドル(同40億ドル)の予算を要求した。うち、輸出管理規則(EAR)を管轄する産業安全保障局(BIS)は裁量的経費の2億2,339万ドル(同1億9,100億ドル)と、前年度から拡大した(注1)。
BISは2025年度予算の使途を示した提案書(Submission)の中で、中国、ロシア、イランなど米国の国家安全保障上の懸念国が軍事力の向上や、大量破壊兵器の開発、人権侵害の助長、近隣諸国の国家主権の侵害など、自国の国家安全保障政策を推し進めるために米国の物品やサービスを入手する方法を開発し続けていると課題視した。その上で、米国の技術を悪用する外国企業の特定と抑止、EAR違反の徹底的な調査、強力な執行措置を通じて、BISが米国の輸出管理強化に向けた主導的役割を引き続き担っていくとした。具体的には、増額要求分で、米国産技術を輸出する事業体間の複雑な関係を明らかにする分析能力強化のデータツールの活用のほか、台湾やフィンランドに配置する輸出管理官(ECO、注2)の維持、中南米に配置するECOの増員などによる、同盟国や有志国との多国間・2国間協力を拡大する意向だ。こうした取り組み強化に基づく積極的なEAR違反調査や情報共有により、エンティティー・リスト(EL)の活用などにつなげる計画だ。このほか、BISが示した取り組み内容(一部抜粋)は次のとおり。
中国の軍事力の現代化など、急速に変化する世界情勢や脅威に対処するため、エンドユース・エンドユーザー規制を拡大する。
量子コンピューティング、バイオテクノロジー、人工知能(AI)の新興技術の審査を強化する。
米国人の専門知識・サービスが外国の大量破壊兵器開発・軍事諜報(ちょうほう)活動に悪用されることを防ぐための規制を拡大する。
米国製品が人権侵害に利用されないことを確実にするための管理措置を改定する。
サイバー監視ツールに関する2国間・多国間の追加的な輸出管理を実施・促進する。
なお、商務省のジーナ・レモンド長官や民主党を中心とする連邦議会議員はこれまで、BISの予算拡充を繰り返し主張していた(2023年12月15日記事、2024年2月15日記事参照)。実際に2025年度予算で増額要望に至り、これが実現すれば、輸出管理の一層の執行強化が見込まれる(注3)。
(注1)BISはこのほか、バイデン政権の人工知能(AI)の開発と利用に関する大統領令(2023年11月1日記事参照)に基づき、AI技術の信頼性と安全制を確保するため、裁量的経費の889万ドルなどを計上している。
(注2)BISのウェブページによると、現時点で中国の北京、インドのニューデリー、シンガポールの米国大使館、香港、ドイツのフランクフルト、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ、トルコのイスタンブールの総領事館の7つの在外公館に9人のECOを配置している。各拠点でカバーしている国・地域はこちらを参照。
(注3)米国の輸出管理とその対応については、ジェトロの調査レポート「米国の経済安全保障に関する措置への実務的対応」も参照。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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