バイデン米大統領、「USスチールは米国の鉄鋼企業であり続けることが重要」との声明発表(米国、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月18日 11時20分
米国のジョー・バイデン大統領は3月14日、日本製鉄の米国USスチール買収を念頭にした声明を発表し、「米国の鉄鋼労働者によって運営される、力強い米国の鉄鋼企業を維持することが重要だ。私は鉄鋼労働者に対して、彼らを支えると言ったが、これは本気だ」「USスチールは1世紀以上にわたって米国を象徴する鉄鋼企業であり、国内で所有・運営される米国の鉄鋼企業であり続けることが重要だ」と述べた。
日本製鉄は3月15日にUSスチール買収に関する声明を発表し、「日本製鉄が目指すものは、USスチールを強化し、米国市場において共に成長することであり、このためには優秀な従業員が不可欠です」「日本製鉄は、米国政府による、法の支配の下で、客観性のある、適正に定められた手続きを信頼し、米外国投資委員会(CFIUS)を含む規制当局の審査に対応しています」とした。
日本製鉄は2023年12月にUSスチールを買収すると発表した(2023年12月19日記事参照)。バイデン政権は、外国企業による買収が安全保障上の懸念がないか審査する対CFIUSの審査対象になり得るとの見解を示していた(2023年12月25日記事参照)。
米国国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官はバイデン大統領の声明発表と同日に行われた記者会見で、「大統領は、日本製鉄による買収の中止を望んでいるのか、それとも声明で示した条件を満たすように変更できると考えているのか、明らかにしてほしい」との問いに対して、「大統領が声明で述べた以上のことを言うつもりはない。大統領は、米国の鉄鋼労働者を支えており、米国を象徴する鉄鋼企業が米国人の手に残ることに取り組んでいる。私から言えることはそれだけだ」として、明確な回答を避けた。他方、米国商工会議所シニアバイスプレジデント兼国際部長のジョン・マーフィー氏は同日に声明を発表し、「日本が米国の最も重要で信頼できる同盟国のひとつであることを考慮すれば、CFIUSの審査はこの買収を支持することは間違いない。日本の対米投資は100万人近くの米国人の雇用を支えている」「CFIUSの審査の結果、安全保障上の懸念がないことが明らかになれば、売却を進めるべきだ」として、CFIUSの客観的な審査を尊重すべきだと主張した。
政治専門紙「ポリティコ」(3月14日)は「鉄鋼労働者が民主・共和両党にとって必要な票田である選挙シーズンに、バイデン政権は米国の象徴的な企業の売却を審査するという政治的ジレンマに直面している」として、買収が11月の大統領選挙を前にした政治的論争の対象になっていると指摘している。
(葛西泰介)
(米国、日本)
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