TSMC起因の半導体投資効果、熊本から九州各地へ波及(九州、台湾、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月6日 14時0分
九州経済調査協会は2024年12月24日、前年同月に発表した九州・沖縄・山口における半導体関連設備投資による経済波及効果について推計値を更新した(注)。推計値の更新にあたっては、「新生シリコンアイランド九州」の実現に向けた九州・沖縄地銀連携協定(Q-BASS)が協力した(2024年6月19日記事参照)。
このたびの更新によると、半導体関連設備投資およびそれに伴う生産活動により、2021~2030年に九州・沖縄・山口地域へもたらされる経済波及効果は23兆300億円になるという。これは前年同月発表の推計値(20兆770億円)から2兆9,000億円超の上方修正となり、うち地場企業の投資による経済波及効果は1兆2,570億円と分析されている。県別にみれば、経済波及効果は熊本県(13兆3,890億円)で最も大きく、長崎県(2兆5,550億円)、福岡県(2兆1,050億円)、佐賀県(1兆4,540億円)、宮崎県(1兆1,010億円)、鹿児島県(9,290億円)と続いている。
熊本県の木村敬知事は12月27日、台湾積体電路製造(TSMC)の子会社ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing:JASM)から12月23日の定例会議の中で、熊本第1工場の稼働を開始した旨の報告を受けたと明らかにした。
福岡県では、半導体後工程分野で世界2位のシェアを誇るアムコー・テクノロジー(本社:米国アリゾナ州)の日本法人が2024年11月28日、福岡市内に国内初の研究開発拠点となる「R&Dセンター」を設立すると発表した。また、福岡市は12月23日、これまでITエンジニアのみを対象としていた「エンジニアビザ制度」を拡充し、半導体関連のエンジニアも活用可能とする新たな運用を開始した。半導体関連産業に従事する外国人エンジニアについては、在留資格の審査期間が通常1~3カ月程度かかるところ、福岡市が事前に審査の一部を担うことにより、地方出入国在留管理局での審査期間が1カ月程度まで短縮される。本制度は国家戦略特区制度の一環で、北九州市も2025年1月15日に同様の受付を開始するとしている。
TSMCの熊本県進出を契機とする半導体関連企業の集積により、経済的恩恵は九州各地に広がっている。
(注)推計期間は2021~2030年。推計対象は、期間内に九州・沖縄・山口で実施・計画された半導体関連設備投資案件のうち、設備投資総額が1億円を上回るもの。総数は201件で、総額は6兆1,820億円。
(片岡一生)
(九州、台湾、米国)
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