実効性は意外とある?現代のストライキ事情
JIJICO / 2018年7月8日 7時30分
実効性は意外とある?現代のストライキ事情
そもそもストライキって何?労働者の団体交渉権
ストライキとは、労働条件や環境の改善を求めて、労働者が団結して仕事を放棄することです。憲法で保障されている労働三権の一つである「団体交渉権(争議権)」の一種で、正当な目的・手段によるストライキについては、それによって会社に損害が出たとしても、労働者は賠償する義務を負いません。
ただストライキは、あくまで労働者が団結して労働組合などを組織して行うことが必要であって(それゆえに同盟罷業と呼ばれます)、労働者が単独で行うものではないことに注意が必要です。
最近のストライキ事情~2016年で31件を記録
2016年の半日以上のストライキ実施の件数は31件(参加労働者数約2,383人)です。件数が最も多かった1974年の5211件に比べれば、随分少ない印象を受けます。
これは、労働組合の組織率が約17%と1970年代の約半分程度になっていることから、団結してストライキを実施する環境が整っていないことが影響しているのかもしれません。
さらに、個人を重んじる考え方が主流となり、集団で何事かをなすという風土が損なわれつつあることも遠因だと考えられます。
外部労働組合に参加して起こすストライキもあるただ、現代でもストライキを断行し、一定の成果を上げている事例はあります。
比較的記憶に新しいのは、昨年5月、自動販売機運営会社である株式会社ジャパンビバレッジ東京の社員が未払残業代の支払等を求めてストライキを実施し、東京駅の自動販売機の一部で売切れが相次いだというものです。このストライキは、自社の労働組合によるものでなく、ブラック企業ユニオンという外部労働組合に従業員が加入することで起こされたストライキです(現在も団体交渉継続中)。
また、実際に実施には至らなかったものの、保育士がストライキを準備し、労働環境の改善を勝ち取った保育園の例もあります。この保育士たちも自社労働組合ではなく、介護・保育ユニオンという外部の労働組合に加入しているそうです。
自社に労働組合がない場合でも、外部労働組合に参加することでストライキを含めた団体交渉を行う事例が増えているのです。
参考:厚生労働省 平成28年労働争議統計調査の概要
(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/14-28-08.pdf)
参考:e-start 政府統計の総合窓口(労働争議の時系列表)
(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&tstat=000001014031&cycle=0&tclass1=000001039336&second2=1)
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構(労働組合組織率・組合員数)
(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&tstat=000001014031&cycle=0&tclass1=000001039336&second2=1)
ストライキの実効性とリスク
ブラック企業に対する改善要求は実効性が高いいわゆる過酷な労働を強いるブラック企業に対して、ストライキを行うことには意義があります。ブラック企業は人材を使い捨てながら会社を回していることが多いため、ストライキをされると業務が滞るだけでなく、悪評が広まって新たな人材が集まらなくなると経営が立ち行かなくなります。ストライキで改善要求が通る可能性は高くなります。
また、労働市場が縮小し、人手不足が蔓延している今、労働者にストライキを起こされると経営側が困窮することは必至であり、そういった意味で、現代におけるストライキの実効性は以前より確実に高まっているといえるでしょう。
会社の経営状態によってはストライキによる倒産・失職のリスクもあるただ、ストライキを実行するにあたっては労働者側にもリスクを伴うことを覚悟する必要があります。違法状態である労働環境改善を求めるのはもちろん当たり前のことですが、そこまでいかなくとも会社側もギリギリのところで経営しているところが多いです。
そういった現状を考慮せず、いきなりストライキ等の強硬手段に出た場合、会社自体がつぶれて自身の職を失ってしまう危険性があるのです。状況を冷静に見極め、強硬策に訴える前に、話し合いでソフトランディングできないかをまず模索することが大切でしょう。
(大竹 光明/社会保険労務士)
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