2023冬アニメ、見ないと損な3作「冒頭4分で鳥肌」「正直レベル高すぎ」

■本当に贅沢なアニメだ…時間を忘れて見入った「第1話」

　2023冬アニメの総本数は、なんと70本を超えています（2023年1月16日現在）。見たいアニメは限られるとはいえ、膨大な数の作品を全て見て吟味するのは、至難の業です。しかし、「もし名作を見逃してしまったら」と思うと、作品選びは難しくなってしまうもの。この記事では、作品選びの際にぜひ参考にしていただきたい、2023冬アニメのなかでも第1話がよかった作品を、3つご紹介します。SNSでも「めちゃくちゃ面白いじゃねえか」「早く全話見たい」と評判です。

●『TRIGUN STAMPEDE（トライガン・スタンピード）』

　砂漠に覆われ、地球からはるか何光年も離れた場所にある惑星、ノーマンズランド。空には5つの月とふたつの太陽が輝き、その灼熱の大地には、異形の原生生物・ワムズが住みついていました。そんな過酷な状況のなか、人類の生き残りは、生体動力炉「プラント」が生み出すエネルギーをもとに、なんとか暮らしていました。

　そしてノーマンズランドには、「人間台風（ヒューマノイドタイフーン）」と呼ばれ恐れられている、伝説のガンマンがいました。600万$$（ダブドル）の賞金がかけられた彼の名は、ヴァッシュ・ザ・スタンピード（CV：松岡禎丞）。しかし彼の本性は、決して人を殺したりしない「お人よし」の風来坊で――？

『TRIGUN STAMPEDE（トライガン・スタンピード）』は、マンガ『TRIGUN』（作：内藤泰弘／徳間書店・少年画報社）のオリジナル新作アニメです。原作は1998年に一度アニメ化されており、海外含めかなりの人気を博した名作です。エピソードと声優陣を一新した本作では、大迫力かつ違和感の少ない3DCGが取り入れられ、他作品と一線を画す作画クオリティの高さを見せています。

　前回のアニメ化から、約25年もの時を経て制作された本作。設定も原作や前作から変わっており、「新しいトライガン」が描かれているといえそうです。原作者・内藤さんも、本作のことを「帰ってくる、ではない。やってくる」と表現しており、タイトルの「STAMPEDE」は、英語で「押し寄せる、殺到する」という意味があります。

　そんな原作者の思いを表現するかのように、第1話冒頭から、スケールの大きい宇宙での一幕が描かれます。制作会社は、『マクロスF』や『創聖のアクエリオン』のCGパートを手がけた、有限会社オレンジ。3DCGの作画に抵抗を感じる方にも、ぜひこの冒頭4分だけでも見ていただきたいほどのクオリティです。

　作品全体に流れるおしゃれな雰囲気は健在で、主人公のヴァッシュは相変わらず憲兵たちに追われ、初登場時から逆さ吊りにされています。皆を助けようとひとり前線に躍り出るものの、弾を切らして情けなく助けを求める様子も、なんともヴァッシュらしい描写です。

　しかし一番の見どころは、第1話の終盤で、ヴァッシュがたった一発の弾丸で皆を助けようとするシーンです。もらった弾を必死に追うシーン、一発の弾丸に全神経を集中させて撃つシーンなど、そのスピード感と臨場感は鳥肌が立ってしまうほど。前作を見たかどうかにかかわらず、第1話だけでもぜひ見ていただきたい、近年のアニメーションの進化を感じられる作品です。この作品は、「dアニメストア」「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」などで見ることができます。

●『Buddy Daddies（バディ・ダディズ）』

『Buddy Daddies』　(C)KRM’s HOME / Buddy Daddies製作委員会

　殺し屋の来栖一騎（くるす・かずき／CV：豊永利行）は、同業者でバディの諏訪零（すわ・れい／CV：内山昂輝）の家に居候中。仕事の請負や情報収集はもちろん、引きこもりの零の身の回りの世話もしています。女遊びやギャンブルが好きな一騎ですが、実は過去に子を身ごもった妻がいました。

　そんな一騎は、幸せそうな家族連れを横目に見つつ、クリスマスに殺し屋の依頼を受けます。しかし、潜入先で「パパ」を探している少女・海坂ミリ（うなさか・みり／CV：木野日菜）に遭遇してしまいます。ミリに計画を邪魔されながらも、無事ターゲットを始末した一騎と零。一騎はミリをいったん、家で預かることにして――？

『Buddy Daddies（バディ・ダディズ）』は、『ウマ娘 プリティーダービー』『Angel Beats!』などで知られるアニメ制作会社「P.A.WORKS」が手掛けた、オリジナルアニメです。ストーリー原案を務めるのは、ゲーム『STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム』のシナリオを手掛けた、下倉バイオさん（ニトロプラス）。スタイリッシュで質の高い作画と、個性的なメインキャラたちの予想もつかない行動に、目が離せなくなる第1話です。

　第1話冒頭では、ミリを預かった後のふたりの「お仕事」が描かれます。なめらかで美しい作画が目を引くカーチェイスの結果、華麗にターゲットを追い詰めるふたり。しかしそこに一本の電話が。「ミリちゃんお熱でーす、お迎えお願いしまーす！」。ミリを預けている保育園から、お迎えの電話がかかってくるのです。

　朝、ミリの異変を報告しなかった零に、一騎は激怒。夫婦ゲンカ（？）を経て、追い詰めておいたターゲットをサクッと殺し、「とにかくお迎えだ！」とふたりは保育園へ急ぐのでした。一騎と零は、「殺し」と「子育て」というまるで逆の内容を、交互にこなしていくのです。

　かつて結婚していて、子供も生まれるはずだった一騎は、料理や掃除が得意。そして、ミリにどこか特別な感情を抱いているように見えます。一方で零は、ゲームざんまいのひきこもり。一騎の作りおきをレンジで温める手間すら惜しみ、とても子供を育てられそうには見えません。

　そのうえ、あまり「仲がいい」とは言えないバディであるふたり。ミリを保育園に預けている時点で、「ある程度の期間はしっかり預かろう」という決意もうかがえますが、愛情を注げば注ぐほど、ふたりの弱点にもなってしまいそうです。殺し屋である彼らは、この先ミリとどう関わっていくのでしょうか。この作品は、「dアニメストア」「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」などで見ることができます。

●『REVENGER（リベンジャー）』

『REVENGER』　(C)ＲＥＶＥＮＧＥＲ製作委員会

　誠実で寡黙、不器用な剣術の達人・繰馬雷蔵（くりま・らいぞう／CV：笠間淳）。ある日、とある裏切りを受けた雷蔵は、武士としての帰る場所をなくしてしまいます。そんな雷蔵に声をかけたのは、「利便事屋（りべんごとや）」のリーダー・碓水幽烟（うすい・ゆうえん／CV：梅原裕一郎）。碓水は蒔絵（まきえ）師である反面、何でも屋のような働き方もしていたのでした。

　雷蔵を受け入れた「利便事屋」。しかし裏の顔は、人々の復讐代行を請け負う殺し屋「REVENGER（リベンジャー）」でした。そのメンバーは、破壊衝動を秘めている町医者の叢上徹破（むらかみ・てっぱ／CV：武内駿輔）や、美しい見た目に反して残酷な両性具有の少年・鳰（にお／CV：金元寿子）など、どこか「欠落」を抱えた男たちで――？

『REVENGER（リベンジャー）』は、虚淵玄さん（ニトロプラス）がストーリー原案・シリーズ構成を担当するオリジナルアニメです。虚淵さんはこれまでも、『魔法少女まどか☆マギカ』や『PSYCHO-PASS サイコパス』などの人気の「鬱アニメ」を手掛けており、本作でも、第1話からその本領を発揮しています。

　剣の腕が立つ雷蔵ですが、とある嘘にだまされてしまい、許嫁の父を自らの手で殺めてしまいます。「利便事屋」、もとい殺し屋集団の「REVENGER」は、亡き義父からの生前の依頼で、義父の思いを遂げるべく動き出します。雷蔵もその動きに協力しますが、当日はただ協力するだけでなく、単独で動き出すのでした。

　タイトルからして、ものものしい響きのある本作。裏で悪人たちを斬っていく往年のドラマ『必殺仕事人』を、現代アニメとしてスタイリッシュに描いたような内容です。しかし、「さすが虚淵さんの書く脚本」というべきか、その展開は第1話から、視聴者を絶望に突き落としてくれます。

「義父を殺してしまった」という、あまりにも重い十字架を背負ってしまった雷蔵ですが、「REVENGER」のメンバーも訳ありな人物ばかりです。リーダーの碓水は、禁じられた信仰に関する入れ墨を、背中に大きく入れています。両性具有の少年・鳰も、ガラス片を塗った凧糸を武器に、ちゅうちょなく敵を殺める残忍さを見せます。

　闇深さがにじみ出ているメンバーに、闇堕ちしてしまった雷蔵。さらに、本作の舞台はパラレルワールドの日本ですが、そのなかでも、正史では鎖国中に唯一他国との貿易を許されていた長崎に焦点を当てています。「REVENGER」が異国語であることや、碓水の入れ墨がイエス・キリストに似ていることにも、本作を読み解くヒントが隠されていそうです。この作品は、「dアニメストア」「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」などで見ることができます。

＊　＊　＊

　キービジュアルとタイトルだけでは、なかなかその作品の面白さは伝わりにくいものです。前評判やイメージで敬遠していた作品があった方は、ぜひ第1話だけでも見てみてください。毎週の楽しみになるアニメが、ひとつ増えるかもしれませんよ。

※配信状況は記事掲載時点のものです。

（新美友那）