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ファミコンのディスクシステムにあった「謎の端子」 幻になりかけた「任天堂の構想」が?

マグミクス / 2024年2月29日 20時10分

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■生誕38周年のディスクシステムに”謎の端子”が……?

 家庭用ゲーム市場の礎を築き上げた「ファミリーコンピュータ」(以下、ファミコン)の周辺機器として、「ファミリーコンピュータ ディスクシステム」(以下、ディスクシステム)が1986年2月21日に発売されました。ここから『ゼルダの伝説』や『悪魔城ドラキュラ』など、ジャンルを問わずさまざまな名作ソフトが誕生しました。

 ディスクシステムのゲームを遊ぶときは、ファミコン本体とディスクドライブを「RAMアダプタ」で接続し、ファミコンの電源をオンにしてからゲーム作品のデータが書き込まれた「ディスクカード」をディスクドライブに挿入しました。

 この接続に使われた「RAMアダプタ」には、周辺機器を接続するための「端子」が備わっていました。実際に遊んでいても、この端子には気づかなかった……という人もいるかもしれません。実はこの端子を使う機器は、最後まで発売されることはなかったのです。

 いったい何のために作られた端子だったのか。生誕38周年を迎えたディスクシステムの振り返りもかねて、「謎の端子」にまつわるエピソードを紹介します。

 ディスクシステムの通信用端子につながる「はず」だった周辺機器……その正体は、ネットワーク構築に必要な通信アダプター「ディスクファックス」でした。というのも、任天堂は1980年代半ばに、各家庭のファミコンを通してソフトのダウンロードが行える「ファミリーコンピュータ・ネットワークシステム」を想定していたのです。

 アミューズメント通信社による業界紙「ゲームマシン」1985年9月15日号によると、任天堂(当時)は「NTT側の大型コンピュータにファミコン用ソフトをインストールしておき、各家庭からそのコンピュータへアクセス。家庭にいながらソフトのダウンロードが行えるようにする」と表明。また別の使い方として、「アニメーションやサウンドを用いたファミコン間でのメッセージ交換」なども考えられていたようです。

 任天堂は数十年も前に、現代のオンラインサービスに通じる構想を抱いていたのです。しかし諸事情が噛み合わなかったのか、ディスクシステム向けの通信アダプタが発売される日はとうとう訪れませんでした。

■まさかの復活? 「ファミコン本体」向けの通信機器が登場

ディスクシステムの仕組みと注意事項をマンガで紹介する任天堂の冊子「これがファミリーコンピュータだ!! ディスクシステム編」の裏表紙では、「次回はネットワークシステムについて説明する」と予告されていた

 市場で日の目を見ることがなかったディスクシステム向けの通信アダプターですが、1980年代の後半に差しかかると、ネットワークシステム構想を叶える周辺機器が「ファミコン用」として登場しました。

 1987年7月。証券会社の山一證券(当時)から「山一のサンライン」と呼ばれる製品が発売されます。ファミコン本体に通信アダプタを取り付け、さらにアダプタに通信カートリッジを差し込むことにより、電話回線を介して証券会社や銀行などへ接続できました。ゲームプレイがメインの用途であったファミコンで、株式の売買が行えるようになったのです。

 その後、1988年ごろから通信アダプタと通信カートリッジが続々と誕生します。この「ファミコントレード」と銘打たれた新潮流にのるべく、野村證券、新日本証券、コスモ証券などの証券会社はこぞって専用の通信カートリッジを発売。ゲームソフトを遊ぶための玩具という側面とは別に、証券取引に意欲的なユーザー層から注目を集め始めました。

 なお、通信アダプタは「野村/任天堂」「マイクロコア」と大きく分けて2種類存在し、ホームバンキングや勝馬投票券の購入といった各種オンラインサービスも展開されました。

 1980年代は部分的なサービスの実用化に留まっていたものの、ファミコンソフトのダウンロード、日用品のオンラインショッピング・学習塾との連動、株式売買など、画期的なネットワークシステムが想定されていました。現代では誰もが利用している情報通信サービスの源流が、「ディスクシステム」に残された小さな端子に垣間見ることができるのです。

(龍田優貴)

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