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マンガ界の「残酷さ」を描いた実写映画4選 「よそよそしくなる編集者」に恐怖…!

マグミクス / 2024年3月24日 19時50分

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■「個人事業主」でもある漫画家の苦闘

 マンガは今や日本を代表する文化として、海外でも広く親しまれています。また、人気マンガが実写映画化やTVドラマ化されるたびに、大きな話題を集めます。その一方、原作となるマンガをゼロから生み出す漫画家たちの苦悩を知る機会は、とても限られています。

 TVドラマ化や映画化もされた『海猿』や『ブラックジャックによろしく』で知られる漫画家の佐藤秀峰氏は、著書『漫画貧乏』(PHP研究所)のなかで個人事業主である漫画家の過酷さについて明かしています。複数のアシスタントを抱えてのマンガ連載は、単行本がベストセラーにならない限り、収支は赤字だそうです。「連載貧乏」という言葉もあると言います。

 漫画家はデビューまでが大変と思いきや、デビュー後はますますハードな業界のようです。そんな漫画家たちが苦闘する姿をシビアに描いた実写映画を紹介します。

■新作が描けなくなってしまう『零落』

 斎藤工さんが主演し、竹中直人さんが監督した『零落』(2023年)は、浅野いにお氏の同名コミックを実写映画化した作品です。漫画家の深澤薫を斎藤さん、深澤がのめり込む風俗嬢をNHK連続テレビ小説『ブギウギ』でブレイク中の趣里さんが演じています。

 深澤(斎藤工)はベストセラーを生み出した人気漫画家ですが、8年間にわたる連載が終わった後、新作のアイデアが浮かびません。前作を超えるヒット作にしなくては……と考えれば考えるほど焦りを覚え、マンガを描けなくなってしまいます。

 出版社の担当編集者は、他の漫画家との打ち合わせに時間を費やすようになり、自分に対してよそよそしくなったように深澤は感じます。編集者でもある妻(MEGUMI)との関係もギクシャクし、アシスタント(山下リオ)からは「パワハラで訴えます」と脅されます。仕事を失った漫画家の恐怖感が、ありありと伝わってきます。

 精神的にどんどん不安定になっていく深澤は、風俗嬢のちふゆ(趣里)にハマっていきます。マンガに興味のないちふゆと過ごす時間だけ、癒しを感じる深澤でした。

 漫画家のナイーブな内面を、斎藤さんが繊細に演じています。猫顔の風俗嬢・ちふゆを演じた趣里さんはとてもセクシーです。つげ義春氏原作の『無能の人』(1991年)で監督デビューした竹中直人さんの、仕事や人間関係につまずいたダメ人間に対する優しさを感じさせる好編となっています。

■39歳で過労死『バクマン。』

映画『バクマン。』DVD(東宝)

 人気マンガ『バクマン。』(原作:大場つぐみ、作画:小畑健)は、2015年に実写映画化されました。高校生ながら、漫画家デビューを目指す真城最高(佐藤健)と高木秋人(神木隆之介)の物語です。最高の叔父、漫画家の川口たろう(宮藤官九郎)のエピソードが、ひときわ印象に残ります。

 川口は過去にギャグマンガをヒットさせましたが、読者アンケートの順位が低迷し、連載は打ち切りに。川口は熱心に新作を編集部に持ち込むものの、なかなか採用されません。仕事場で倒れた川口は、39歳の若さで急逝します。

 掲載予定のない原稿を描き続けての過労死とは壮絶です。原作者・大場つぐみさんの心情を投影したかのような逸話です。

 最高&秋人の担当編集者(山田孝之)が、編集者の心得を口にします。

「僕たち編集者は、決して君たちの敵じゃない。もし、漫画家と編集部が対立したら、僕は必ず漫画家の側につく」

 編集者のみなさんは、ぜひ覚えておいてください。

■原稿料がもらえない『ゲゲゲの女房』

映画版『ゲゲゲの女房』は、宮藤官九郎さんが水木しげる役を演じた。画像は映画『ゲゲゲの女房』DVD(キングレコード)

 水木しげる先生の妻・武良布枝さんの自伝エッセイを映画化したのは、吹石一恵さんが主演した『ゲゲゲの女房』(2010年)です。

 生活は安定していると聞いて、漫画家の水木(宮藤官九郎)と結婚した布枝でしたが、現実は違いました。水木の描く妖怪マンガは暗くて売れず、出版社は原稿料の支払いを渋ります。

 お米を買うお金もないので、農家からクズ野菜を分けてもらい、パンの耳で空腹を満たす生活でした。たまに食べる、黒くなったバナナがごちそうです。「貧乏でも死にはしない」と笑う水木の不思議な生命力に感化され、布枝もたくましくなります。

 NHKで放映された連続テレビ小説版と違って、映画では水木が売れっ子になるまでは描かれません。将来のことは分からないけれど、水木が描く『墓場の鬼太郎』のベタ塗りを布枝が懸命に手伝う姿に、夫婦愛が感じられます。

■時代の波に取り残される『トキワ荘の青春』

 最後に紹介するのは『トキワ荘の青春』(1996年)です。時代は昭和30年代。漫画家の寺田ヒロオ(本木雅弘)が暮らすアパートに、漫画家志望の藤本弘(阿部サダヲ)らが次々と訪れます。寺田はあれこれと世話を焼き、寺田を中心にした「新漫画党」が結成されます。理想のマンガを語り合う、夢のような時間が流れます。

 しかし、マンガは月刊誌から週刊誌が主流となり、刺激の強い内容を編集部は求めます。若手が売れる一方、理想にこだわる寺田は徐々に仕事を減らしていくのでした。夢を語り合って飲み交わしたチューダー(焼酎のサイダー割り)が、苦い味に変わります。

 時代の波に取り残された寺田は、静かにアパートを去ることになります。タイトルは『トキワ荘の青春』ですが、マンガ業界の青春期の終焉を描いた作品となっています。

 多くの漫画家たちの奮闘や挫折の上に、今のマンガ産業は成り立っていると言えるでしょう。漫画家はひとりの生身の人間であることを、忘れずにいたいものです。

(長野辰次)

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