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【本日放送】大人も見るべき『若おかみは小学生!』 吉田玲子脚本の「日常x魂の再生」とは

マグミクス / 2020年5月16日 8時10分

【本日放送】大人も見るべき『若おかみは小学生!』 吉田玲子脚本の「日常x魂の再生」とは

■心に傷を抱えた主人公を迎えた、幽霊たち

 心に喪失感を抱えた少女と不思議な仲間たちとの交流を描いた長編アニメ『若おかみは小学生!』が、2020年5月16日(土)15:25よりNHK Eテレにて地上波初放映されます。2018年に劇場公開された本作は、作品のクオリティーの高さからロングランヒットを記録。富川国際アニメーション映画祭で長編部門優秀賞&観客賞を受賞するなど、海外でも人気を博しています。

 ひなびた温泉旅館を舞台にしており、主人公のおっこが考案した「露天風呂プリン」や、お客さんの心と体を満足させるおもてなしグルメの数々が登場します。GWはどこにも行けなかった人たちも、ほっこりした旅行気分を味わうことができるでしょう。

 小学生が主人公なので、子供向きのアニメと思う方もいるかもしれませんが、少女が成長していく姿を感動的に描いた内容は、大人も充分に楽しむことができます。家族で安心して視聴できる作品です。

 物語の主人公は、小学6年生の関織子(CV:小林星蘭)、通称「おっこ」です。おっこが乗る自動車が交通事故に巻き込まれ、両親が亡くなるという衝撃的なシーンから始まります。大事故に遭いながらも、不思議なことにおっこだけは無事でした。

 ひとりぼっちになったおっこは、祖母・峰子(CV:一龍斎春水)が女将を務める温泉旅館「春の屋」で暮らすことに。ここでおっこが出逢うのが、男の子の幽霊・ウリ坊(CV:松田颯水)でした。ウリ坊は少女時代の峰子の遊び仲間で、とっても陽気な性格です。

 今でも峰子のことを想い続けるウリ坊に頼まれ、おっこは旅館の仕事を手伝うようになります。旅館の後継者を失った峰子を、おっこも励ましたかったのです。おっこの「若おかみ」としての修業が始まりました。

 ウリ坊以外にも、いたずら好きな幼女の幽霊・美陽(CV:遠藤璃菜)、小さな鬼の姿をした鈴鬼(CV:小桜エツコ)といった人間ならざるものが、おっこには見えるのでした。「七つまでは神のうち」ということわざがありますが、小6のおっこも霊感が強いようです。ウリ坊たちとの交流を重ね、おっこは明るさを取り戻していくのです。

■主人公のもとに返ってくる温かいブーメラン

アニメ『けいおん!』

 全20巻ある令丈ヒロ子さんの児童小説を上映時間94分にうまくまとめたのは、高坂希太郎監督と脚本家の吉田玲子さんです。高坂監督は自転車レースを題材にした監督作『茄子 アンダルシアの夏』(2003年)や自分の夢を追い続けた航空技術者を主人公にした『風立ちぬ』(2013年)の作画監督として知られています。吉田玲子さんは『おじゃる丸』(NHK Eテレ)や『けいおん!』(TBS系)といった日常アニメの名手として人気があります。

 のほほんとした主人公たちが体験するささいな出来事を丁寧に描き出すことで、日常生活の楽しさを伝えることに吉田玲子さんは優れています。また、山田尚子監督の『映画 聲の形』(2016年)や湯浅政明監督の『きみと、波にのれたら』(2019年)などの劇場アニメの脚本も手掛けています。

『聲の形』や『きみと、波にのれたら』の主人公たちは心に深い傷を負っていますが、他者との関わりの中で、徐々に日常生活を取り戻し、心の傷を癒していきます。『若おかみ』のおっこも、ウリ坊たちに背中を押され、クセのあるお客さんやクラスメイトたちとも触れ合えるようになっていきます。

 つらい体験をしたおっこですが、その分だけ他の人たちに優しく接することができるようになります。おっこに勇気づけられたお客さんは元気になり、おっこ自身も元気をもらいます。優しさが温かい大きなブーメランになって、おっこのもとに戻ってくるのです。

■「もうひとりの自分になれる世界」の大切さ

 吉田玲子さんのヒット作に『けいおん!』や『ガールズ&パンツァー』(TOKYO MX)などがありますが、『けいおん!』の女子高生・唯も、『ガルパン』のみほも、普段はあまり目立つタイプではありません。でも唯はバンド活動しているとき、みほは「戦車道」に熱中しているとき、誰よりもキラキラと輝きます。日常生活とは異なる、もうひとりの自分になれる世界を持っていることが、唯やみほに元気を与えています。

 同じことが『若おかみ』のおっこにも言えます。旅館での修業や映画の後半では伝統ある神楽の稽古に、おっこは打ち込みます。唯もみほもおっこも、学校と自宅を往復するだけの毎日では弾けられなかったはずです。日常生活とは異なる別の居場所、自分を解放する表現手段を持つことは、心の健康のためにも大切なことなのかもしれません。

 他人と触れ合いながら、自分の居場所をつくることで、おっこは少しずつ成長していきます。おっこが大人になるにつれ、ウリ坊たちの姿は次第に見えなくなってしまいます。ウリ坊たちとのお別れは寂しいけれど、それはおっこがすっかり元気になった証拠でもあります。

 小さな温泉旅館を舞台にした『若おかみ』は、出会いと別れの物語です。子供のころ、自分の心のなかに住んでいたイマジナリーフレンドと一緒に冒険に繰り出した記憶はないでしょうか? 孤独感を癒してくれた懐かしい仲間との思い出が、よみがえる人もいるかもしれません。

(長野辰次)

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