R9走る運転手を支えた京都・ドライブインやくのが閉店へ 昭和のクルマ文化の象徴は各地で逆風 人気復活のカギは若い世代
まいどなニュース / 2024年3月24日 18時50分
閉鎖、閉店が相次ぐドライブイン。2024年3月末、国道9号沿いのドライブインやくのが閉店することになりました。一方、昭和レトロな雰囲気が若者に静かな人気を集めているところもあるようです。
ドライブインやくのの閉店
京都府福知山市の中心部から国道9号で西へ向かい、兵庫県朝来市と境界近くの夜久野峠付近に「ドライブインやくの」があります。広い駐車場、レストラン、お土産物コーナーを備えた、昭和のころによく見かけた懐かしいスタイルのドライブインです。
以前から何度か前を通ったことがあるものの、立ち寄ったことはありませんでした。しかし、なんとなく頭の片隅に引っかかっていました。それは、ラジオCMの「ふるさーとのー 味とかおりの夜久野そーばー♪」というメロディがずっと耳に残っていたからです。
このドライブインが2024年3月31日で閉店すると聞いて、訪ねました。1987年に経営が現在の会社に移り、その際に新装開店したのだそうです。今回の閉店の理由の一つに建物の老朽化も伝えられていますが、確かにそろそろ改装が必要な感じです。
エントランスに、あの懐かしいCMのメロディーが流れていて少しテンションが上がります。また、フードコーナーの上の、流れる電球のイルミネーションが昭和ノスタルジーを感じさせます。そうそう、あの頃、家族でドライブするとこういう感じのお店でご飯を食べたなあ、なんて懐かしくなります。
レストラン前のガラスケースには食事のサンプルがいっぱい並んでいて、これも時代を感じます。この地のものをと、丹波とり唐丼とお蕎麦のセットをいただきます。丹波地鶏だけではなく、夜久野そばも名物です。
ドライブインの隆盛と衰退の流れ
かつては日本中のロードサイドにあったドライブイン。モータリゼーションの発達に伴って数を増やし、1975年頃が最盛期といわれます。観光地近くでは行楽の家族連れで賑わい、また交通量の多い深夜の国道沿いではトラックドライバーのオアシスとして、食事や休憩、駐車場での仮眠などに利用されていました。
24時間営業のドライブインが少なかった時代には、建物の中に自動販売機がずらっと並んだオートスナックも各地にありました。ハンバーガーやうどん、そばなど、飲み物だけではなく食事が提供できる自動販売機が開発されたことや、さらにその頃爆発的にヒットしたインベーダーゲームなども併せて設置された店舗も多く、休憩場所として人気だったようです。
その後、高速道路網の整備に伴い、国道を走る車が減ったことで、ドライブインもオートスナックもその数を減らしていきました。夜通し国道を走っていた時代から、高速道路で一気に時短、サービスエリアで休憩、といういまのスタイルに変わっていったのです。
一般道でも、1993年から「道の駅」という施設がインフラの一つとして公的に指定されるようになりました。2024年時点で1200カ所以上の道の駅が供用されています。
道の駅に加えて、広い駐車場を持つ郊外型コンビニエンスストアも24時間食事や休憩ができるスポットとして、一部でドライブインと競合したとみられます。2022年3月末で閉店した名阪国道沿いの伊賀上野ドライブインの場合、20キロあまり離れた針テラス(道の駅・1998年登録)は休日など多くのクルマでにぎわっていました。新名神の開通で名阪国道の交通量が減っただけではなく、こちらに人が流れた影響もあるでしょう。
その道の駅も、国道の交通量の減少の影響は受けているようです。実はドライブインやくのの北450メートル、国道から少し入った場所に「道の駅農匠の郷やくの」(1999年開業、2002年登録)があるのですが、ここも最盛期には年間30万人の来客で賑わったもののその後低迷、いまでは道の駅内の多くの施設が休止しているといいます。
一部で静かな人気も
そんな中、生き残った一部のドライブインがいま、若い人たちに「エモい」と人気になっているそうです。Webやドライブ情報誌などでも最近取り上げられるようになってきました。昭和世代にとって懐かしい雰囲気が、当時を知らない若い人たちの心にも響いているというのは面白いことです。一周回って昭和歌謡やシティポップが新鮮に感じられ、受け入れられている状況と重なって見えます。
オートスナックなどに設置されていたハンバーガーやうどんの自動販売機が、静かな人気を集めているという話も。昔なじみの模型店の店頭でうどんの自動販売機のプラモデルを見かけて驚いたのですが、背景にはこういう動きがあるのでしょうか。
うどんの自動販売機がいまも現役として稼働しているところがあります。神戸市東灘区の臨海部の道路沿い、飲料や煙草の販売機に混ざって設置されています。たまに食べに行きますが、結構な頻度で若い世代を見かけます。わざわざこの自販機を目指してやって来ているのでしょう。
今後、全国にドライブインがたくさんできるということは考えにくいものですが、工夫次第に集客に成功する既存店も出てくるでしょう。ぜひそうあってほしい、と昭和世代の筆者は強く願います。
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)
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