国境なき医師団、国連安保理で訴え 「ガザには即時かつ持続的な停戦が必要」
国境なき医師団 / 2024年2月29日 12時37分
国境なき医師団(MSF)インターナショナル事務局長のクリストファー・ロックイヤーは2月22日、国連安全保障理事会において、パレスチナ・ガザ地区での即時かつ持続的な停戦の必要性を訴えた。安保理のガザに関する会合で演説したもので、医療施設、医療スタッフ、そして患者を明確に保護するよう求めた。
医療の提供が困難に
「安保理は会合や決議を重ねるばかりで、この紛争に効果的に対処できていません。一般市民が命を落とし続けている中で、安保理の動きが極めて遅々としたものであることを私たちは目撃してきました。これまでの死、破壊、強制的な移動は、市民の命を軽視した軍事的・政治的な選択の結果です。全く異なる選択をすることができたはずですし、今、そうすることもできるはずです」。そうロックイヤーは訴えた。
ガザでは10月7日以降、イスラエルによる絶え間ない爆撃と攻撃の中で3万人近い人びとが犠牲になった。さらに、人口の75%に当たる約170万人が強制的に移動させられていると推定される。安全も命も保証されない場所で、人びとはけがや病気に直面している。医療施設であっても攻撃の対象となり、医療を提供することも困難な状況だ。
さらに、ガザの医療現場の状況をこう報告した。
「私たちの患者は、命に関わるけがや、手足の切断や粉砕、そして重度のやけどなどを負っています。彼らには、高度な治療や長期にわたるリハビリが必要です。しかし、戦場や、破壊され、がれきになった病院では、治療することはできません」
外科医たちは、患者の出血を止めるためのガーゼすら使い果たしています。一度使ったガーゼの血を絞り出して洗い、殺菌し、次の患者に再利用しているのです。
国際人道法を軽視
米国が国連安保理の停戦決議に拒否権を発動したのと同じ2月20日、イスラエル軍の戦車がハンユニスのアル・マワシ地区にあるMSFスタッフの避難所を攻撃し、スタッフの妻と娘が死亡、6人が負傷した。
その前には、イスラエル軍はガザ南部最大の医療施設であるナセル病院にいる人びとに退去するよう命じ、病院を襲撃した。ガザ北部は破壊されていて戻ることはできず、南部のラファはイスラエル軍が空爆を行い、大規模な地上作戦の計画が発表されていて安全ではない。ガザの人びとは行き場を失っている。
紛争が激化して以来、MSFはガザの9つの医療施設からの退避を余儀なくされ、5人のスタッフの命が奪われた。激しい爆撃や砲撃が続いているため、救命医療を提供すること、ましてやその規模を広げることはほぼ不可能だ。
「国際人道法を軽視した結果は、ガザの外にも波及するでしょう。それは、私たちの良心に重荷を背負わせ続けることになります。これは単なる政治的な不作為ではなく、政治的な共犯なのです」とロックイヤーは語った。
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