1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

女王蜂『奇麗』インタビュー(前編)

NeoL / 2015年3月26日 2時50分

写真

女王蜂『奇麗』インタビュー(前編)

 

女王蜂、約3年ぶりのフルアルバム『奇麗』。アヴちゃんが自身の恋愛を赤裸裸に描いた歌詞は恐ろしいほどに率直で優雅である。さらにその恋愛という普遍的なテーマを聴く者ひとりひとりの脳内で“僕の/私の歌”に転換させるポップさ、それを支えるバンドサウンドの跳躍——すべてが群を抜いた紛れもない傑作。

 

―今回はタイトルからしてこれまでとは異なりますよね。『魔女狩り』も『孔雀』、『蛇姫様』も人ではないイメージだったけど、今作の『奇麗』で人間になった印象です。さらに“もう一度欲しがって”、”髪の毛””売春””始発”ーこんなに具体的に恋愛や感情を描いた曲はなかったと思う。今作のテーマが『恋愛』ということは最初から決まってたいたんですか?

アヴちゃん「その通り。『魔女狩り』を録っている時から4枚目は恋愛をテーマにすると決めていて。当時、スタッフに向かって『私、恋愛の歌を録りたい。そのためにドッロドロの、ゴールも全くない恋愛をして、それを昇華したものを作りたいの。覚えておいてね』と言っていたんです。そして律儀にそれをやりました(笑)」

―宣言した通りの恋愛をしたと?

アヴちゃん「そう。だからすごく大変だったし、本当に死んでしまうんじゃないかというくらいの熱量でお互いぶつかって……。私、小さい頃から好きな漢字が1文字あるんです。『親』という漢字は、木の上に立って見るって書きますよね。私は片親やから、自分の親として自分を見て育っていこうと小さい時に決意して。だから女王蜂でライヴをやるにつけても親の目線というのを常に持っていて、ちょっと引いて木の上に立って見ていた。りりこ(『へルタースケルター』)じゃないけど、『自分は自分で作った』という感覚が常にあって。それで自分のことを自分でやればやるほどみんなの歌を歌っているような感じがしていたんだけれど、今回はそれにプラスして恋愛というみんなに起こりうること、起こってることを謡っているから、メロディや歌詞のはまり方もより“みんなの歌”になっているんだと思う。自分のブログのように心情や状況を書いた歌詞だったから、レコーディング中に嗚咽が出るぐらい泣いてしまったりーー初めての経験だった。もし木の上で立って見るという目線がなかったら世に出せるものじゃなかったと思うし、引く力というのがすごく、より強くなったのかなと思います」




av_2


―その木の上目線ゆえに、切ないのにポップさがあるんですかね。

アヴちゃん「うん、でもわからない。最近思うんやけど、SNSと住所さえあれば自分の髪の毛や自分から出てくる言葉なんかを紙に書いて売るとかでもビジネスが成り立っちゃう。インディもメジャーもガジェットもツイッターも色々あって、芸術とされているものや様々な芸術が乱立していて、色々な派閥があってーーそんな世界やからこそ諦めたというか。個人の歌を歌っても仕方がないから『ま、いっか。今回はみんなの歌を歌いましょう』って。それで”髪の毛”も”折り鶴”、”始発”も自分のことを歌ったけれど、自分のことを歌えば歌うほど『これって私のことやっけ?』みたいな、みんなの歌になっていった。両極端って似てたりするから、そういうことかなって思ってる」

―内にいけばいくほど深く広くなって宇宙になるという法則だ。

アヴちゃん「うん。私ってすごく典型的な“人”なんです。スペックも顔もなんでも典型的でマネキンっぽい。だからこそ“自分”と“みんな”をうまく折衷できたんかなあと思う。”売春”なんて男と女の目線すら曖昧でしょう? だから聴いていて懐かしく感じる人もすごく多いだろうし、見たことある風景のような既視感もあるだろうし、私自身もそうやった。あとね、今まであまり言わんかったけど、なんかもう私の中にある曲って決まっているんだと思う。人に寿命があるように、私にも書ける曲の数は決まってるし、なんかこう、全部決まってる。全部有限なんやなって確信した気がする。例えば女王蜂は1人抜けてまた新しい子が入ってすごく良くなって、悲しくなったり辛くなったりもしたけど、全部が大きな動きであって後々になったらそれは必然だったんだなと思うし。曲自体も1曲1曲の動きはあるけど大きな流れをちゃんと体現したいからアルバムという法則をとるわけだし、決まっているものにどこまで際限なく近づけるかということであって。だから4年前からこのアイデアや雛形はもう出来ていて、あとはそれを超えるために考えて実現するだけやった。昔はもっと『今、今』って生き急いでた感じやったけど、今は急がなくても限りがあることがわかってシナリオ通りにやってる感じがする」

―その有限性を意識したのは何がきっかけでしたか? メンバーが変わったことが大きかった?

アヴちゃん「かなあ? いや、多分恋愛したこともそう。恋愛をして、すごく多幸感に満ちている時は、これがずっと続くんじゃないか、傍にいることが有難いなと思うけど、結局、私すごく残酷な人間なんですよね。4年前に出すときは全て終わらせるって決めてた。だから別れたし。すっごい泣いたし、ボロボロやったけど、でもシナリオを完成しないとって思って。だから残酷なんだよね」

―それはアーティストとしての目線で完遂しようと?

アヴちゃん「もうなんの目線でもない。わかんない。そうするって4年前に思ったからそうしなさいって。4年前の私とこの人とどっちが大事やろうと思って、天秤にかけたかったわけじゃないけど、でもかけないとアルバムを出しても人に聴いてもらえるものにはならないと思ったから。命綱を付けてその人と繋がってる状態で出すのって、私の中で許せなかったんです」

ーああ、命綱をつけている感じは全くないですね。

アヴちゃん「ね。別れなくたって聴いてる人にはわからなかっただろうけど、何かあるんだよ。だから、他のアーティストの人達と優劣とかいうところでは比較できないけど、なんか部門の違うものができたと思う。部門の違う、謎の安心感がある作品かなって」




av3


―うん。元から女王蜂は部門が色々違うけど、今回は特に、オリジナルという言葉は使い古されてるけど、そうとしか言いようがない。”一騎討ち”は聴きようによってはラップなのに童謡にも通じる懐かしさもあるし、”緊急事態”の最後の爽快ロックみたいな王道感もあるのに、最終的に女王蜂だよねって曲になっている。

アヴちゃん「嬉しい。ジャンルで言えないよねきっと、音楽をやりたいと思ったわけではなく、何か表現をしたいと思って楽器をとったり歌を歌った人間やから、1個1個に責任はとれるけど、系譜の中でうまくやるということはできないんだよね。何々風味の曲にしたいとかじゃなく、もっと言えば曲を作ってる時に激しい曲を作ろうとかバラードを作ろうとかさえも思ってないからーーなんて言ったらいいかな、アルバムとしてしか作っていない。『怪奇恋愛作戦』の話があって”ヴィーナス”は書き下ろしたけど、お題があってやるということを自分はできないと思ってたのが人の要望にも応えられるんやっていうところでも自信ができたし、篠崎愛ちゃんに楽曲を提供したり、セーラームーンのレイちゃんの曲もできたから、すごく面白いことになってるんだと思う、私が」

―”ヴィーナス”の話はアルバムの製作の途中段階で入ってきたんですか?

アヴちゃん「アルバムの前の話かな。去年の夏くらい」

 

―”一騎討ち”とか”ワンダーキス”の流れ的にもアルバムにちゃんとハマっていたから、元々あったものかと思っていました。

アヴちゃん「ああ、嬉しい。実はこれの前にすごくいい曲を出してんねんけど、レコード会社のプロデューサーに『もっとメロで中毒性のあるものを書いてほしい』って言われて。で、むくれちゃって、資料をいっぱいもらって聴いたけど、『洋楽聴いても英語わからへんわ!』ってプンプンしながらピアノで即興で作って、『どや! “ヴィーナス”』って聴かしたら一発オッケーで、私できるんだなと思って」

―途中の変調が中毒性を生んでると思うけど、あれとかどうやって作ってるかさっぱりわからなくて。

アヴちゃん「ああ嬉しい。あれ、いいよね。なんか世界変わるみたいな感じ。すごく好きなの。変わってドーン、みたいな」

―最初はキーボードで作っていくんですか?

アヴちゃん「ううん、頭。だからちょっと異質なのかもしれへんな。頭の中って御法度ないし、どんな音っていうのもない。それをギターの音とか自分の声とかに落としこんでるだけやから」

―頭の中で鳴っているという前提はあるものの、アヴちゃんは最初メロディーにする時にはキーボードで作ると思っていたんだけど、”髪の毛”はギターから作ったんじゃないかと思ってて。各所でギターの音が強いし、今作にはひばりくんの加入の影響も少なからずあるんじゃないかと思いました。

アヴちゃん「たたきは私が作って渡すけど、”ヴィーナス”に関してはひばりくんが自分でギタ―フレーズを考えてきてくれてね。ひばりくんは本当に恐ろしい子なの。『入れてください、どんなことでもするんで!』って来て、実際なんでもするし、女王蜂でやりたいことがいっぱいあるの。とにかく引き出しがすごい。そういうタイプのクリエイションする人と初めてやってみて、合うなって思った。ギターというもので全部終わらせたいんだと思う。横で支えようとすごく頑張ってくれてる。ルリちゃんややしちゃんは縁の下の力持ちやと思うし、にしては美しすぎるし、かわいすぎるけれど、でもいいバランスなんだろうね。男の子が入ったのも女王蜂からしたらすごいことやと思うし。美形が入ったな、と(笑)」

(後編へ続く)

 

撮影 中野修也/photo  Shuya Nakano

文 桑原亮子/text  Ryoko Kuwahara


kirei


女王蜂『奇麗』

3月25日発売

◆初回生産限定盤<CD+DVD>


3,889円+税


*完全オリジナル映像作品「残酷」(DVD/収録時間:45分)


*アヴちゃんオリジナル小説「残酷」


*特殊パッケージ:紙ジャケット


http://www.amazon.co.jp/dp/B00TZ049VC


http://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?cd=AICL000002851


◆通常盤(CD ONLY)


2,778円+税

http://www.amazon.co.jp/dp/B00TZ041QA

https://itunes.apple.com/jp/album/qi-li/id967156563

http://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=2845&cd=AICL000002853

女王蜂

2009年神戸にて活動開始。2011年3月に初の全国流通盤アルバム『魔女狩り』をリリース。同年9月、アルバム『孔雀』でメジャーデビュー。収録曲“デスコ”は映画『モテキ』のメインテーマに抜擢され、映画にも出演した。2012年5月、メジャー2nd『蛇姫様』をリリース。2013年2月より約1年間の活動休止期間を経て、2014年より女王蜂の活動を再開することをアナウンス。2月22日に渋谷AXで復活ライヴ「白熱戦」を行い、その後単独公演「灼熱戦」を各地で開催。2015年1月スタートのテレビ東京系ドラマ「怪奇恋愛作戦」のオープニングテーマを担当することでも話題に。NHK「あさイチ」に出演し、世代を超えた新たなファンも獲得。2015年4月より『奇麗』リリースツアー「女神たちの売春」を敢行。


http://www.ziyoou-vachi.com/


 

「女神たちの売春」

   2015年5月17日(日)札幌PENN YLANE24


〔問〕マウントアライブ 011-211-5600


チケット発売日:4月11日(土)


   2015年5月20 日(水)名古屋Electric Lady Land


〔問〕JAILHOUSE電話 052-936-6041


チケット発売日:4月11日(土)


2015年5月22日(金)大阪・umeda AKASO


〔問〕YUMEBANCHI 06-6341-3525


チケット発売日:4月11日(土)


   2015年5月24日(日)福岡DRUM Be- 1


〔問〕キョードー西日本 092-714-0159


チケット発売日:4月11日(土)


   2015年5月31日(日)広島Cave-Be


〔問〕YUMEBANCHI(広島) 082-249-3571


チケット発売日:4月18日(土)


   2015年6月5 日(金)仙台MACANA


〔問〕ジー・アイ・ピー  022-222-9999


チケット発売日:4月18日(土)


2015年6月27日(土)東京・赤坂BLITZ

〔問〕DISK GARAGE 050-5533-0888

チケット発売日:5月23日(土)

 

チケットオフィシャル第二次先行受付】 ※抽選制

■オフィシャル先行

【期間】3/25(水)12:00~4/2(木)18:00
【URL】 http://eplus.jp/zv15/ (PC・携帯・スマホ)

関連記事のまとめはこちら


http://www.neol.jp/culture/

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください