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NBAが巻き起こすビッグデータ革命

ニューズウィーク日本版 / 2013年11月15日 8時0分

 NBA(全米プロバスケットボール協会)が、ビッグな男たちについてのビッグデータを公開するという。スポーツ観戦の楽しみを根底的に変えるかもしれない膨大な量のデータの公開は、テレビの発明に匹敵するほどの衝撃をもたらしそうだ。

 レブロン・ジェームズは火曜と金曜の試合ではどっちが調子がいいのか、あるチームのパスワークのパターンとは、どのパスコースを消せばゲームの主導権を握れるのか......。今まで曖昧だったこうした事柄についてのデータが大量に入手できるようになる。もちろんこうした情報の最善の活用法が確立されるのは何年も先になるだろうが。

 今シーズンからNBAのコートには、モーションキャプチャーシステム「スポートVU」が設置される。選手の動きを捉え、データを集積する技術だ。

 スポートVUは既に他の競技で導入されている。ヨーロッパの一部のプロサッカーチームは何年も前から使っているし、米メジャーリーグの球団も野手の動きを追跡し、守備を強化するために活用している。だがNBAのデータ収集は、こうした試みとは次元が違う。

 試合のたびに、6台のカメラで各選手とボールの位置を毎秒25コマ撮影する。NBAの試合時間は48分間なので、1試合につき40万以上のデータが集まることになる。

 とはいえ、データはそのままではただのデータだ。選別し、分類し、解析し、照合して初めて真価を発揮する。コーチとゼネラルマネジャーはそれを活用して斬新な戦術を編み出すだろう。チームのフロントは選手の価値を的確に査定できる。埋もれていた才能が発掘され、選手獲得にカネを使わずとも強いチームを作れるだろう。

 ビッグデータがもたらす変化はこの程度にとどまらない。NBAはデータをすべて公開する意向だ。公開が進むほど与えるインパクトは大きくなる。データ活用のためのアプリケーションも次々に開発され、素晴らしいアイデアも生まれるだろう。



無限の可能性が広がる

 例えばシューズにICチップを付けて、試合中の自分の動きと憧れの選手の動きを比較することも可能になるかもしれない。またはヘッジファンドのアナリストあたりがこうしたデータを分析すれば、精度の高い勝敗予想ができそうだ。スポーツ賭博のブックメーカーはおちおちしてはいられない。

 一般のファンにとって画期的なのは、実況画面に可視化されたデータを表示すれば、今までの何倍も試合を楽しめるようになること。テレビの普及以降、スポーツ観戦のスタイルが大きく変わるような新技術は登場していなかった。だがこれからは試合の見方がぐっと深まる。ビッグデータとブロードバンドのインターネット、タブレット端末の3つがそろえば、個々の選手やチームについて気になる情報をチェックしながら高解像度の画面で試合を観戦できる。

 好都合なことに、今ではこうした双方向型技術を使いこなせる世代が育っている。ニューヨーク・タイムズの最近の調査では、ミレニアル世代(15〜35歳)の34%が映像はほとんどオンラインで見ると答えた(ベビーブーム世代はわずか10%)。

 想像してみてほしい。実況画面にデータが次々に表示される。ある攻撃パターンで選手がどう動くべきかを示した線が画面に出れば、眼前で繰り広げられているプレーが的確かどうか判断できる。データに基づく詳細かつ客観的な解説付きで試合の展開を追えるというわけだ。

 ビッグデータの可能性は無限だ。これからは、スポーツをオンラインではなくテレビで観戦するのは......いわばラジオでボクシングの試合中継を聞くようなものになるだろう。

[2013.11.12号掲載]
ケビン・メイニー

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