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オルト・ライト(オルタナ右翼)とは何者か

ニューズウィーク日本版 / 2016年12月12日 16時0分

<トランプの大統領選と共にアメリカ政治の表舞台に登場してきた白人ナショナリズムの新しい極右勢力「オルト・ライト」は知識層の間で生まれ、移民受け入れや多文化主義でリベラルに譲歩し過ぎた社会を巻き戻そうとしている>

 ひと昔前までアメリカの極右の活動家というと概して無名で、ほとんどがネット上のサブカルチャー的な扱いだった。ところが今年に入り、白人ナショナリズムの右翼運動「オルト・ライト(オルタナ右翼)」と呼ばれる極右勢力がアメリカ政治の中心へと躍り出た。

 オルト・ライトの活動家たちは、米大統領選ではドナルド・トランプの最も熱狂的な支持者となった。右派ニュースサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」のスティーブ・バノン会長は7月、自分たちは「オルト・ライト運動のプラットフォーム」だと語り、8月にはバノン自身がトランプ陣営の選挙対策本部の最高責任者に任命された。バノンは来年1月に発足する新政権で、首席戦略官・大統領上級顧問としてホワイトハウス入りを果たすことがすでに決まっている。

【参考記事】トランプの首席戦略官バノンは右翼の女性差別主義者

 長年アメリカの極右勢力の動向を研究してきた私も、今回の運動はかつてなく勢いづいていると感じる。彼らに批判的な立場の人々にとって「オルト・ライト」という呼称は、白人によるナショナリズムや、ネオナチと白人至上主義に結びつく有害なイデオロギーを表す暗号に過ぎない。だが運動は極右の活動家や知識層を巻き込み、見かけ以上に複雑なニュアンスを含んでいる。

 果たしてオルト・ライト運動は数年でどうやってここまで躍進したのか。トランプが勝利した今、彼らはアメリカの政治を変革できるのだろうか。

運動を主流に変えた

 オルト・ライトの支持者には白人のナショナリストだけでなく、個人の自由を尊重する政治思想「リバタリアニズム」や、男性の権利、文化的な保護主義、ポピュリズムを信奉する人々も含まれる。

 比較的新しい運動だと思われがちだが、その起源は、白人のナショナリストが様々な運動を展開した数十年前まで遡る。この種の組織は歴史的に見ても主流の枠外へと追いやられ、メインストリームの文化、ましてや公共政策などには全く影響力を及ぼさなかった。ただし一部の最極右の過激派は、長年にわたり革命を標榜していた。

 反ユダヤの白人至上主義を掲げる「アーリアン・ネーションズ」や「ホワイト・アーリアン・レジスタンス」、「創造者世界教会(WCOTC)」といった団体は、「シオニスト占領政府(ZOC)」に反対して人種革命を起こすと息巻いてきた。そうした群衆の多くは、アメリカの極右活動家ウィリアム・ルーサー・ピアースが近未来のアメリカの人種間闘争を描いて1978年に出版した小説『ターナー日記(Turner Diaries)』に感化されていた。1995年にオクラホマシティ連邦政府ビルの爆破テロの犯人ティモシー・マクベイは、警察から拘束された際に同書の一部を所持していた。

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