米大使また辞任、トランプの同盟国叩き耐えられず
ニューズウィーク日本版 / 2018年7月2日 16時20分
<外交官として33年のキャリアをもつエリートさえも、トランプの欧州批判やNATO軽視発言についていけず辞職を決意>
アメリカの駐エストニア大使を務めるジェームズ・メルビルはベテランのエリート外交官だ。そんな彼が6月29日、友人たちに対してドナルド・トランプ米大統領が欧州の同盟諸国について連発した問題発言を受けて大使の職を辞すると明らかにした。
メルビルは2015年から駐エストニア大使を務めている。外交官としてのキャリアは33年で、近々退職することが決まっていたが、個人としてのフェイスブックへの投稿で、トランプの行動や発言に我慢ができなくなった、と述べている。
フォーリン・ポリシー誌が入手したメルビルの投稿はこうだ。「在外公館の職員のDNAは政策を支えるようにプログラムされており、もしこれ以上は無理だとなったら、辞任こそが名誉ある道だと教え込まれてきた。特に自分がトップの職にある場合はそうだ。6人の大統領と11人の国務長官に仕えてきたが、まさか自分がこんな状況に陥るとは思ってもみなかった」
「非の打ちどころのないプロ」も堪忍袋の緒が切れた
「大統領がEUのことを『アメリカを食い物にしている』と言ったり『NATOはNAFTAと同じくらい悪い』と言ったりするのは、事実として間違っているし、私にももう潮時だと教えてくれた」とメルビルは書いた。これは、トランプがここ数週間で同盟諸国にぶつけた侮辱の言葉を指している。
メルビルとともに仕事をしたことのある国務省関係者の中には、彼の投稿に驚いた人々もいた。彼らに言わせれば、メルビルは非の打ちどころのないプロフェッショナルで、これまでは国内政治と自分の職務の間にきちんと線を引いていたからだ。
この辞任表明は、7月中旬のNATO首脳会議を目前に行われた。NATO加盟の欧州諸国は長年、アメリカと緊密な関係を保ってきたが、首脳会議でトランプが欧州批判を繰り広げてアメリカの孤立がさらに深まるのではと恐れている。アメリカと欧州は、貿易や防衛支出、アメリカのイラン核合意からの離脱といった問題ですでに厳しく対立している。
トランプはNATO首脳会議の後、フィンランドでロシアのウラジーミル・プーチン大統領と首脳会談を行う予定だ。同盟国叩きをやった後の米ロ首脳会談という流れが、すでに冷え込んでいる米欧関係にさらに痛手となるのではと欧州諸国は懸念している。
メルビルはフェイスブックへの投稿で、アメリカはEUやNATOを支持し続けるべきだという考えを友人たちに示している。
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