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世界的な経済力を誇る「都市国家シンガポール」のルーツは「イギリスの植民都市」という定説への疑問

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月20日 9時55分

このように東南アジア史の大きな歴史展開を背景に、当時のシンガポール社会経済を詳細に捉えると、現代につながる発展の起源は単にイギリスの植民地都市にとどまらず、東南アジア地域の長期に渡る商業発展の中に見出すことができる。

現代の東南アジア諸国のほとんどが、厳密には「国家」の起源を植民地時代までしか遡れない。各自がそのアイデンティティの歴史的ルーツをさらに遡って認識しようとするならば、国家という枠を超えた地域史がより強く意識され、求められる。

同質性が高く、長大な日本史を持つ日本社会に生きる我々は、地域史への関心はさほど高くないかもしれない。しかし現在、大きく変貌する世界の状況を展望するうえで、国家を超えた地域史や世界史を理解する必要性は高まっている。

シンガポールという国家と東南アジア地域史の関係は、世界の現状と行く末を考えるための洞察を与えてくれるのではないだろうか。

[注](*)こうしたアセアン地域経済の一体化・統合の進展の中で、シンガポールは主導的な役割を果たしている。この都市国家は、人口550万人に満たないながらも、世界トップレベルの一人当たりGDPを記録し(2022年に約6万7000米ドル(2010年固定価格)、世界第6位、World Bank Databaseより)、金融、情報通信、そして海上輸送網の世界的なハブ都市として繁栄している。

小林篤史(Atsushi Kobayashi)
筑波大学第一学群人文学類卒、京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。2014年博士号(地域研究)取得。現在、京都大学東南アジア地域研究研究所助教。専門は近代アジア経済史。特に19世紀のアジア諸地域の国際経済の発展と世界経済への統合を研究。「19世紀における世界市場の形成とアジア―物価史的研究―」にて、サントリー文化財団2014年度「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」に採択。

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