オリンピック競泳メダリスト・スポーツキャスター宮下純一~子どもたちには「人生の予行演習」という意味でも、水泳競技に進んで欲しい
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月21日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)にスポーツキャスター・北京五輪競泳メダリストの宮下純一が出演。スポーツキャスターとしての仕事、またこれからの競泳界について語った。
黒木)今週のゲストはスポーツキャスターで北京五輪競泳メダリストの宮下純一さんです。セカンドキャリアとしてのスポーツキャスターですが、いかがですか?
宮下)生放送だと修正も効かなくなるので、最初は緊張しました。50メートル自由形であれば、25秒のなかで喋らなくてはなりません。実況アナウンサーの方がいま起きていることを喋って、その隙間に選手のよさや現在の状況を伝えなくてはいけない。話すべきことのメモはたくさん書いてあるのだけれど、どこに差し込めばいいのかわからなくて、10個用意しても1~2個しか話せませんでした。
黒木)最初は。
宮下)でも経験を重ねて行くと、10個喋ることが本当に聞き手にとっていいことなのかと疑問を持ち始めたのです。そして、用意したもののなかから、どの位置にその武器を置いておくかということを考えるようになりました。そういうことも競泳をやっていた経験から思いついたことです。泳いでいる間は、「疲れて来たから、この部位を動かそう」などと考えながら泳いでいたのですけれど、実況解説も同じで、言いたいことをいちばん手前に、武器は時間が余ったときの奥の方に残す、などと整理できるようになりました。それからは徐々に喋れるようになって来ました。
黒木)なるほど。
宮下)ある程度レースの展開はイメージするのですが、長い距離になればなるほどイメージ通りには行きません。100メートルであれば、前半の50メートルでスピードを出して泳げるはずの選手が泳いでくれなかったとき、「調子が悪くて出ていないのか。それとも後半のために温存していてゆっくり泳いでいるのか」、それを遠くのプールを見ながら自分の感覚で、目でジャッジをしなくてはいけない。必ずしも当たるわけではないけれども、自分がイメージしたものが多ければ多いほど、そこに対して話せることが多くなります。それがうまくハマったときは、気持ちよく一緒に泳いでいるような感覚になります。
黒木)「日本は水泳が強い」という印象がありますが、宮下さんから見て、これからの競泳界はどうでしょうか?
宮下)スイミングスクールに通ってくれる子どもたちは多いのですけれど、タイムを争う競泳に進んでくれる子が少ないのです。競技として水泳をやってくれる子が増えるように働きかけをして行きたいと思います。
黒木)競泳を目指す子どもが増えてくれるといいですね。
宮下)いまは、運動会でも順番をつけないし、争うということを子どもたちがしません。私は負けたからこそ、「勝ちたい」という思いが強くなったし、「てっぺんに立ちたい」という思いがあったからこそ、頑張れたと思うのです。そういう気持ちを促すためには、競争というのは大事だと思います。社会に出ると、こんなに不平等な世界はないではないですか。野村監督の言葉でもありましたけれども、「人生の予行練習」という意味でも、水泳やスポーツで競争してくれる子どもたちが増えると、日本も盛り上がって行くのではないかと思います。
宮下純一(みやした・じゅんいち)/スポーツキャスター・北京五輪競泳メダリスト
■1983年生まれ、鹿児島県出身。37歳。
■5歳から水泳をはじめ、9歳のときコーチの薦めにより背泳ぎの選手となる。
■鹿児島県立甲南高等学校から筑波大学に進学、体育専門学群で学び、中高教員免許を取得。
■2008年8月、北京オリンピック競泳男子100m背泳ぎ準決勝で53.69秒のアジア・日本新記録を樹立、決勝8位入賞。400mメドレーリレーでは日本チームの第1泳者として、銅メダルを獲得(リレーメンバー:北島康介・藤井拓郎・佐藤久佳)。
■2008年10月、競技者として有終の美と感じられる結果に現役を引退。
■現在は、水泳・スポーツの美と感動、アスリートという人間の心のドラマやストーリーを伝えられるスポーツキャスターとして幅広く活動。日本水泳連盟競泳委員として選手指導・育成にも携わっている。
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