全盲の人のスマホの使い方 「見る」のではなく「聞いて」いるんです
おたくま経済新聞 / 2021年6月15日 9時14分
スマホを「見ている」ように見えて「音声を聞いている」浅井さん(Twitterからのスクリーンショット)
スマートフォンの普及により、便利になったと思う人は少なくないと思いますが、それは健常者だけでなく障がいのある方も同様。ただ、一見似ていても別の使い方をしているケースもあります。全盲の方がスマホを「見ている」ように見えて、実は音声を「聞いている」という光景がTwitterに投稿され、注目を集めています。
盲導犬のヴィヴィッドくんと暮らす全盲の浅井純子さんは、TwitterやInstagram、Facebook、YouTubeを通じて、全盲の人がどのように暮らし、“世界”をどのように感じているかということを日々発信しています。生活の中でスマホも活用しているのですが、その様子を次のようにTwitterへ投稿しました。
「「盲導犬連れてるあの人。スマホ見てるけどなんで?」私に聞こえたヒソヒソ話(笑)スマホを顔の前で何かしていたら見てるように私だって思いますよ。私は全盲なので見ていたわけではなく音声を聞いていただけなんですけどね(笑)目の情報だけでごまかされることって本当に世の中たくさんありますね」
「追加です。私はどんな見え方をされていても全く気になりません。そして、ヒソヒソ話をしていた人に「見えてませんよ!」とお話しして爆笑した事は言うまでもありません。びっくりされていましたけどね(笑)」
ツイートに添えられていた写真は、浅井さんによると「同行していた夫が撮影したもの」だそうです。
目と耳はほぼ同じ高さにあり、スマホを顔の付近に持っていると「画面を見ている」のか、それとも「スマホから流れる音声を聞いている」のか、外見からは区別できません。スマホは「画面を見て操作するもの」と思っている人から見れば、顔の高さにスマホを持っていると「画面を見ている」と勘違いするのも当然かもしれません。
しかし、スマホには「画面を見ながら指で操作する」以外の操作を可能にする「アクセシビリティ」という機能が付いています。全盲の方の場合、画面を見て確認することができないため、テキストを音声で読み上げたりする機能があるほか、自分の声で操作することも可能です。
浅井さんに、普段スマホをどのように活用されているかうかがうと「TwitterやFacebook、InstagramやYouTube、そのようなSNSの投稿は全てスマホで行っています。例えば、お手紙などは写真を撮って文字に変化させて読み取るアプリがあるので、それで読み取っています」とのこと。手書きの文字も、画像の文字認識機能を使い、音声として聞くことができるんですね。
光を感じることのできない全盲の方は、色を認識することもできません。そこで活躍するのがスマホのアプリ。「対象物の色が分かったりするので、色違いのお洋服は簡単に判別できます。そしてとても便利なのは白いボトムスの場合、濃い色の下着を穿いてしまうと色が透けて見えてしまうので、そのようなものも色の判別を使います」と、誰かに見てもらわなくても大丈夫な場面が増えているそうです。
しかしなんといっても、便利なのはビデオ通話などの機能。浅井さんは「とても便利なのは、道に迷ったときにビデオ通話をして周りの風景を見てもらい、道を誘導していただくこともあります」と、目の見える人にとっても有効なビデオ通話の活用法を話してくれました。
テキストの音声読み上げ機能や音声入力機能により「メールやLINE、全てのものができるようになりました」という浅井さん。特に、肉声を届けることができるボイスメッセージを使っているそうで「文字で送るとやはり自分の思っている感情と違うニュアンスで伝わります。そして、声でメッセージをする方がめちゃくちゃ早いです」と語っています。
片手はいつも盲導犬ヴィヴィッドくんのハーネスを握って行動するため、基本的に歩行中はスマホを操作しない、という浅井さん。どうしても使う必要がある場合は、アップルのAirPodsのようなワイヤレスのイヤホン(ヘッドセット)を片方だけ装着することもあるといいます。
最近のワイヤレスイヤホンやヘッドセットの場合、外部の音を取り込むことができる上、耳に装着した本体にタッチセンサーが付いており、“手探り”で操作ができるのは便利ですね。それでも全盲の場合、視覚からの情報がないため、常に外部の音がしっかり聞こえるよう、両耳に装着することはないと浅井さんは語ってくれました。
筆者は以前、耳の不自由な方とお話しした際、携帯電話のおかげで離れた場所でも文字や画像によるコミュニケーションの幅が広がった、ということを聞いた経験があります。それと同じように、スマホの機能向上により、視覚が不自由な方にとってもコミュニケーションの世界が広がっているんですね。
スマホの音声操作は視覚障がい者だけでなく、麻痺などで指を使った操作が難しい人にとっても便利な機能。スマホの設定画面で「アクセシビリティ」の項目を開くと、実に様々な形で操作が可能になっていることが分かります。
浅井さんは全盲である自身がどのように生活しているか、そしてどのように“世界”を感じているかをTwitterやInstagram(junjun_vivid)、そしてYouTubeの「暗闇からAloha」と「目の見えないじゅんじゅんと盲導犬ヴィヴィッドのポケットチャンネル」という2つのチャンネルで発信しています。SNSやYouTubeを通じ、浅井さんの暮らしぶりや活動を知ることで、視覚障がい者について理解を深めてみてはいかがでしょうか。
「盲導犬連れてるあの人。スマホ見てるけどなんで?」私に聞こえたヒソヒソ話(笑)
スマホを顔の前で何かしていたら見てるように私だって思いますよ。私は全盲なので見ていたわけではなく音声を聞いていただけなんですけどね(笑)
目の情報だけでごまかされることって本当に世の中たくさんありますね pic.twitter.com/TuLKgWNHcW
— 浅井純子 (@nofkOzrKtKUViTE) June 10, 2021
追加です。
私はどんな見え方をされていても全く気になりません。
そして、ヒソヒソ話をしていた人に「見えてませんよ!」
とお話しして爆笑した事は言うまでもありません♡
びっくりされていましたけどね(笑)
— 浅井純子 (@nofkOzrKtKUViTE) June 10, 2021
<記事化協力>
浅井純子さん(@nofkOzrKtKUViTE)
(咲村珠樹)
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