会社を出てすぐホテルへ…「不倫社員」のレッテルを貼られた彼女がとった、驚きの行動とは（前編）

ジェクス　ジャパン・セックスサーベイ2020によれば、浮気・不倫経験があると答えた男性は67.9％、女性は46.3％。40代女性の32.9％が「特定の人物1人と（現在も）している」と答えています。婚外恋愛は、決して遠い対岸の火事ではありません。

では、過去に不倫を経験した人たちは、その後どんな人生を歩んでいるのでしょうか。相手との関係や自身の生活の変化について、女性たちのリアルをお伝えします。

【不倫のその後#5】

「お局に粘着されている」と彼女はいうけれど

スマートフォンが鳴り、画面を見ると表示されている名前がアサミだったので、出るのを少しためらった。ここ最近の彼女は混乱と焦りが強く会話に出ていて、話すというよりマシンガントークを聞かされる一方になるからだった。

それでも、この着信を無視したところでまた次が来るのも目に見えていて、ため息をついて応答のマークをタップした。

 

「もしもし、ねえ大変なの」

案の定、挨拶もなしにアサミは切り出す。こちらの事情はどうなのか、いま話しても大丈夫かどうかも確認しないのはいつものことだった。

「うん」

長くなるだろうなとスマートフォンにイヤホンを差しながら答えると、アサミは先日と同じく「あの人がね」と話しだした。

 

「あの人」とはアサミの職場にいる年上の女性社員で、アサミが言うには「お局さまってやつよ。結婚できずにいつまでも会社に君臨したい人」と扱いに困るタイプらしい。事実がどうかはわからないのでいつも黙ってその振る舞いを聞いていたが、今はアサミ自身がこの女性から「被害」を受けている、という状況だった。

 

「私のことで、人事に話すって総務の◯◯さんに言ってたんだって。信じられない。いい加減、しつこくない？」

アサミの声には大きな怒りが含まれていた。これも最近ずっと続いていることで、その「お局さま」はアサミに対して不審と疑惑の目を向けており、周囲を巻き込んで騒動を起こしているのだった。

 

「人事に話してどうしたいのだろうね」

イヤホンの音量を下げながら尋ねると、

「そんなの知らないわよ。人のことなのにいつまでも噂にし続けて、私のほうこそコンプライアンス違反で訴えてやりたいわ」

と、アサミは投げやりに答える。「コンプライアンス違反」なんて言葉が飛び出してびっくりしたが、アサミなりにこの女性の対処を考えて打てる手を調べたのかもしれなかった。

 

「……」

だが、それをあなたが言えるのかと思うのは、この女性から向けられている不審と疑惑の目は、アサミが不倫をしている可能性であり、実際にアサミは既婚にも関わらず夫以外の男性と肉体関係を持っていたのだった。

 

仕事の関係者との不倫。うかつだった振る舞いは噂になり…

アサミは結婚しており、年下の夫とふたりのお子さんと暮らしている。不倫相手は業務で接触のあった社外の人で、アサミの会社でその姿を目にしている人はほかにいなかった。それが油断を誘ったのか、アサミはこの男性とこっそり個人的な連絡を取り合うようになり、不倫が始まった。

 

わずか数ヶ月で不毛な関係は終わりその経緯は詳しく聞いていないが、問題は「不倫が終わった後」に生まれた。アサミが言うには男性と別れた数日後から、社内で「アサミらしい人が旦那さんじゃない男の人とホテルに入るのを見た」という噂が流れ始めたのだ。

 

それは事実であり、ホテルは会社の数キロ先にある。このときについて「その日は会える時間が短かったから、移動する時間がもったいなくて私が会社を出たらすぐそこに向かったの」と、会社の近くで男性と待ち合わせをしていたことも話していた。

 

会社の近くにあるホテルに退社後そのまま入るなんて、うかつだったとしか思えない。だが、アサミは

「別れ話が出ているところでね、何とかして彼を引き止めたかったの。わかるでしょ？」

と、自分の行動について正当化する一方だった。

 

結局そこまでしても男性が去ることは止められず、縁を切られてからは社内で不倫の噂が流れたのだった。

ホテルに入るところを見たのが誰だったのか、アサミは今でも「見当がつかない」と言う。

アサミは噂の火消しに奔走していた。

 

噂が消えた後で、しつこく残ったものは

ホテルに入っていった人物が「明確にアサミだった」とはなっていない以上、噂は放置していればそのうち止むはずだった。そうならなかったのは、噂に食いついたのが女性社員で一番長い勤務年数を持つ例の「お局さま」で、彼女は「本当なら見過ごせない」とアサミの身辺を嗅ぎ回り始めたのだった。

 

お局さまがアサミと仲のいい社員たちに「彼女が不倫しているって本当？」と尋ねてまわっているのを知ったとき、アサミは正面から「やめてください」と言ったそうだ。37歳のアサミより10歳は年上のこの女性は、おそらくこれも気に入らなかったのだろう、「後ろめたくないなら詮索を止めないはず」とこれまた勝手な理屈を周囲に話し、ふたりの対立は深くなっていった。

仕事に関係のない内容で個人的なことなら、ほとんどの人はこの噂にすぐ関心をなくしたという。アサミは社内で目立つほうではないことに加え、この「お局さま」の噂好きは有名で、「またか」と冷ややかな目で見る社員も多かったのではないだろうか。

 

それなのにこの女性がいつまでも「不倫の噂が立つような人はまともじゃない」と言い続けたのは、アサミに食ってかかられた後で「嫉妬じゃない？」「自分は不倫する機会もないしね」と陰で言う人がいたからだ、というのがアサミの想像だった。

こうやって「噂の真相」は遠ざかっていき、残ったのはアサミに「不倫する社員」とレッテルを貼りたがるこの女性の言動だった。

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