【逆説の日本史】「木造文化の国・日本」が率先して進めるべき「トランジスタ原発」構想
NEWSポストセブン / 2025年1月11日 16時15分
しかし、それこそ歴史から見れば日本人がハマりやすい落とし穴であり、私の意見はまったく逆で、むしろ日本はいま以上に原発開発に国力を注ぐべきだということだ。
なぜ、そうなのか? それは、日本以外にも外国というものがあり、とくに日本の隣りには中国というきわめて厄介な超大国があって「東京から中国・上海まで境無しの空域」だからだ。これも前編で述べたように、彼の国の人口は少なく見積もっても日本の十倍もあり、しかも一人っ子政策という超愚策を実施したために日本より早く高齢化大国となる。
老人たちをサポートするためにも、国力全体を伸長させるためにも必要なのは電力だが、その厖大な需要は代替エネルギーへの変換などでは到底賄い切れるものでは無く、かといって中国がこれ以上火力発電や水力発電を進めれば、地球環境の大きな破壊につながる。つまるところ、原子力発電しかないのだ。
そして中国の地勢を考えれば、事故が起こった際に国土が放射能汚染に晒されないように、原発地帯は東シナ海や南シナ海の沿岸に造るのがもっともリスクが少ない。当然彼らはそうするだろうが、それは中国の「風下」にある日本にとっては、中国製原発が狭い海を挟んだ場所に何基も造られ、いつ大事故が起こって放射能汚染が日本を襲うかもしれない恐怖におびえる、ということだ。
いや、恐怖だけならいいが、中国は自国の高速鉄道が大事故を起こしたときに穴を掘ってすべて埋めてしまい、知らぬ顔をした国である。粗悪な中国製原発が事故を起こしたら、「二十一世紀前半には北九州にも人が住めたのに」などということにもなりかねない。
この問題の一番厄介なところは、中国国内に原発をどのように造るかというのは純然たる中国の内政問題であって、いかなる国も口を出す権利は無い、ということだ。口を出せば内政干渉になる。また、いかに中国と友好関係がある政治家でも政党でも、まさか中国に対し「粗悪な原発は造らないでくださいね」とは言えない。もちろん外交官も言えない。そんなことを言えば、昔なら戦争になってしまう。また、民主主義国家でも無いから政府に批判的な中国国内の市民団体と連携することも不可能だ。そもそも中国には、政府に批判的な市民団体など存在できない。
だから、とりあえず「歴史家としての私」が警告したわけだが、ではこの近未来に実現する可能性が高い危機的状況に対して、どのような対策があるだろうか? まず考えられるのは、中国との友好関係を強化し緊密な連携の下で、中国の「原発銀座」の建設に日本も積極的に参加していくという方法だが、じつは私はこの方法は絶対取るべきでは無いと考えている。なぜなら、日本は日中国交回復以来このやり方でさんざん食い物にされてきたからだ。
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