【逆説の日本史】「木造文化の国・日本」が率先して進めるべき「トランジスタ原発」構想
NEWSポストセブン / 2025年1月11日 16時15分
私がもし明治の初期に生きていたら、歴史家として「日本人よ、地震国日本でレンガの建物など造ってはならない」と警告したところだろう。だが、当時の日本には部分部分の専門家である歴史学者はいたが、古代から現代まで日本史を見ている歴史家は残念ながら存在しなかった。では、われわれ日本人はどのような建物を造って地震と共存してきたのか? 京都の三十三間堂(蓮華王院本堂)について述べた、次の文章をお読みいただきたい。
〈このお堂は東に面し、見事な直線で設計され、その長さは一二八メートルもある。そして、この直線は現在でも、いささかも狂っていない。台風や地震などの多くの異変に、七百年を越える歳月を耐えてきたのである。
どうして、そのような高度な技術が可能だったのだろうか。〉
(『梅干と日本刀―日本人の知恵と独創の歴史』樋口清之著 祥伝社刊)
この『梅干と日本刀』は、日本史を語る者なら必ず読むべき畢生の名著なのだが、この「高度な技術」とは具体的にはどうするのか。
〈日本人には独特な自然感がある。“自然には逆らわない”という考え方である。現代の建築技術は、まず地盤を固めてから建てる。ところが、動かないように固めてしまうと、何百年という長い歳月の間には必ず陥没が起こったりする。そこで、地面を粘土や砂利など弾力性のある土壌で固める。地震があった場合には、土壌に弾力性を持たせておけば、地震エネルギーが放散されたあとは、土の粒子が元の静止した場所に帰る。ということは、地盤が地震以前の状態に復元するということである。いうならば、波に浮かぶ筏のようなものである。〉
(前掲書より一部要約して引用)
僭越ながらもっとわかりやすく言えば、日本列島はそもそも地震が頻発する国土で、ギリシャのパルテノンの丘やニューヨークのマンハッタン島のような堅固な地盤はほとんど無い。だから、日本全体を「泥の海」と考えればいいわけだ。「泥の海」だったら建物はまさに筏のような海に浮く「船」であるべきで、地面に固定するなどという考え方は捨てるべきだ、ということになる。
イメージとして日本製の原発というのは球体でも箱状でもいいのだが、地面に固定されていない泥の海に浮かぶ「ブイ」あるいは「箱舟」だと考えるのだ。内部の制御は無線でAIとリンクして行なう。外部とのリンクは、発電した電力を送る送電線だけ。こうすれば、大地震が起こって送電線が切れても原発自体にはなんの支障も無く、地震が治まればまた送電線をつなぎ直して稼働させればよい。
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