船出したスーパーラグビー日本チーム「サンウルブズ」の魅力とは
プレジデントオンライン / 2016年2月19日 11時15分
■世界最高峰に初挑戦!
サンウルブズってご存知か。サンは「日出ずる国」の燃える太陽、ウルブズは牙をむくオオカミ群団をイメージしている。日本ラグビーの礎(いしずえ)を築くため、世界最高峰のスーパーラグビーに初参戦する日本のチームの愛称である。
スーパーラグビーには、ラグビー強国のニュージーランド、オーストラリア、南アフリカなどのプロクラブチームが参加する。今季からサンウルブズなど3チームが加わり、計18チームとなった。世界トップクラスの選手たちが、最高のパワーとスピード、技巧をぶつけあうのだ。
日本にとって、一番の目的は日本代表の強化である。選手との契約問題やスポンサー集めなどに苦労しながらも、ようやくサンウルブズが動き出した。13日、冷たい雨の降る愛知・豊田スタジアムで、サンウルブズはトップリーグ選抜とチャリティーマッチを行い、52-24の勝利を収めた。
試合前、サンウルブズを運営する一般社団法人ジャパンエスアールの上野裕一CEOは「ようやく、ここまできました」とホッとした顔をしていた。
「いろいろなプレッシャーがあって、やっとここまでこられたかなという感じですね。いろんなコンフリクトがあって、それをオーバーカムしないといけないという手続き論に時間がかかりました。一番よかったのは、トップリーグの人たちが思い切って助けてくれたことです」
昨年のラグビーワールドカップ(W杯)の日本代表の活躍はスポンサー集めなどでは追い風になっただろう。ただ、リーグ運営側との交渉は難儀だったようだ。今後、スタッフの役割分担を含めたチームマネジメントの整備も課題となる。
■強みは「リアクション」
スーパーラグビーの特徴は、プロとしての「エンターテーメント性」である。ボールがよく動く。インプレー(ボールが継続する時間)が比較的長く、パスやランのトライが頻繁にみられる。サンウルブズもそこを意識し、その上で勝たないといけない。
上野CEOは言う。
「試合の結果がすべてだと思います。そして、観客がどう見てくれるかでしょう。選手は“プロ”としておカネを稼いでいかないといけないわけだから、マインドをチェンジしていかないといけないし、我々も変えていかないといけないでしょう」
そうは言っても、他のチームはメチャクチャ強い。サンウルブズの魅力は? と聞けば、日本代表ウイングの山田章仁はこう、言った。
「ほかのスーパーラグビーのチームに比べて、しっかりシェープをつくろうとしているし、ひとりひとりのリアクションが速いところですかね」
シェープとは、連動した攻撃で相手守備陣を崩すことを意味する。要はスピードと体力勝負。相手にターゲットを絞らせないよう、複数による波状攻撃を仕掛け、しつこく組織で攻めていくことである。
サンウルブズとしては、個のフィジカル、体力をアップさせ、どうチームとして結束させていくのか。戦術、戦略の徹底、連係アップが必要となる。
準備期間は短い。「未完の魅力」と、37歳の大野均(東芝)は強調した。
「サンウルブズは新しいチームです。これまで歴史がないじゃないですか。僕らがどういうプレーをするかで、これからのチームの方向性が決まっていく。いままで経験したどのチームとも違うスタイルになるのでしょうか。キャラクターがいい選手がそろっているので、これからどうなるのか。きついと思うより、楽しんでやったほうがいい」
■「すべて勝ちにいく」
サンウルブズを率いるのは、元ニュージーランド代表フッカーのマーク・ハメットヘッドコーチ(HC)。「日本の礎を築きたい」と厳かに言った。
選手を見ると、W杯に出場した日本代表メンバーが10人、さらにスコッド(代表候補)5人と、ほぼ半数が日本代表の編成とだぶっている。堀江翔太主将ほか、大野、山田……。平野翔平(東海大―パナソニック)、具智元(拓大)ら、若いプロップも選ばれている。
堀江は力強く宣言した。
「最初から白旗を上げるようなことはしない。すべて勝ちにいく気持ちです」
リーグ開幕戦は2月27日、東京・秩父宮ラグビー場でライオンズ(南アフリカ)と戦う。未完のサンウルブズの挑戦が始まる。
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(ノンフィクションライター 松瀬 学)
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