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凡人が「天才の企画」に勝てるたった一つの方法

プレジデントオンライン / 2020年1月14日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bulat Silvia

いい企画を立てるには、どうすればいいのか。マーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏は「企画と計画を取り違えている人が多い。計画は完璧でなければいけないが、企画はざっくりでいい。それがわかれば、天才の企画に対抗することもできる」と指摘する——。

※本稿は、永井孝尚著『超実践マーケットイン企画術 7つのテンプレートで「お客様のニーズ」がつかめた』(PHP研究所)を元に書き下ろしたものです。

■「計画」とはまったく違うもの

ジックリと時間をかけて完璧な企画を立てようとするビジネスパーソンは実に多い。これはやり方が間違っている。時間をかけて完璧な企画を作ろうとしてはいけない。しかし部下がこう言うと、本気で怒るマネージャーも多い。

永井孝尚著『超実践マーケットイン企画術 7つのテンプレートで「お客様のニーズ」がつかめた』(PHP研究所)

「とんでもない! 企画は時間をかけて、完璧に作れッ!」
「サボるな! ちゃんと一生懸命に働け!」

これは昭和な考え方である。「企画」を「計画」と勘違いしている。企画と計画はまったく違うのだ。

企画の役割は、「何をすべきか?」という正しい問いを見つけることだ。たとえば「交通量が増えたので、この地域に鉄道を作ろう」。

計画の役割は、その問いに「こうすればいい」と答えることだ。たとえば「では、この鉄道の建設計画を作ろう」。

決定事項を完璧に行うのが計画だ。昔の多くの仕事は決めたことをやればよかったので、時間をかけ、完璧に計画すればよかった。

■サクッと「叩き台」を作り、精度を高める

しかし企画は違う。何も決まっていない状態で、何をすべきか決めるのが企画だ。しかも現代は変化が激しい。ボヤボヤしていると置いていかれる。企画段階で完璧を期して時間をかけること自体、致命傷になる。だからこう考えるべきだ。

「企画とは、ザックリした仮説である」

企画は「こうすればうまく行くはず」という「仮説」であり、叩(たた)き台なのだ。叩き台なので簡単でいいし、間違ってもいい。

ただ間違った企画をそのまま実行すると大変なことになる。そこでサクッと叩き台を作り、仲間に見せて意見をもらい徹底的に叩く。叩き台として仲間の知恵を集めていく。こうして企画の精度を高めていくのだ。

仮説を立てて企画を進める上でいくつかコツがある。その中の1つを紹介しよう。

■よい企画は、最初に「完成イメージ」がある

企画がどんな形になるのかが誰もわからないまま、企画を進めていることはないだろうか? これではよい企画にはならない。よい企画は最初に完成イメージを作り、全員がその完成イメージを共有し、ゴールに向かって一枚岩で動く。

あるヒット商品を連発する企画担当者は、最初に本物と同じ商品カタログを作るという。商品カタログの役割は、消費者に向けて、写真や文章で製品の特徴を簡潔に伝えることだ。最初にリアルなカタログを作れば、お客様が買いたくなるかもわかるし、開発・営業チームも具体的なゴールを共有できる。

あるベンチャーの創業者は、出張先で同僚とお酒を飲んでいる時に新規事業のアイデアを思いついたという。その晩、ホテルの部屋でサービスの発表プレスリリースの文章を書き、翌朝読み返したら「これはいける」と手応えを感じて事業を立ち上げた。今は日本を代表するベンチャー企業だ。

いずれも最初に完成イメージを作っている。

■「最小限の製品」を作って、改良を重ねる

アントレプレナーであり、『リーン・スタートアップ』の著者エリック・リースは、MVP(Minimum viable product/実用最小限の製品)という考え方を提唱している。

ターゲットの顧客を決め、新規事業のアイデアを作ったら、そのアイデアを元に、お金をかけずに短期間でシンプルな製品を作り、顧客に受け入れられるか検証する。これがMVPだ。MVPを想定顧客に見せて反応を観察し、よりよい反応を引き出せるようにMVPを何回も何回も改良し続ける。反応が悪ければ、MVPそのものを大きくゴッソリと作り替えてしまう。このようにMVPは、企画で考えたアイデア=仮説を、実際に触れるように実体化したものだ。

私も著書の企画を思いついたら、最初にタイトルと表紙イメージを作ることが多い。本が書店に並ぶイメージを具体的に作り、チーム仲間の編集者と共有する。そして大まかなプロットを作り、より詳細に作り込み、そのたびに編集者や想定読者の意見を聞きながら修正したり、場合によってはそれまで作ったものを全て捨てて、ゴッソリと書き直す。こうしたプロセスを経て本を仕上げていく。

最初に企画の完成イメージを作れば、チームでゴールを共有できるだけでなく、実際にその企画が成功するかどうかも把握できる。そして企画の成功確率が上がるのである。

■愚直な仮説検証は、凡人が天才に対抗できる武器

このように企画は、仮説検証を通した「学び」により育てていく。仮説検証とは、試行錯誤による失敗を通じ、確実に学びを深める仕組みだ。「失敗からの学び」が差別化の武器なのだ。

一方で「失敗したくない……」と思う人も多い。

誰でも失敗するのは、嫌なものだ。失敗を避けるのは、実に簡単である。

何もしなければ、絶対、失敗しない。

しかし企画とは、新しいことをして、何かを変えることである。新しいことには失敗が付きものだ。では、どうするか? 実は、簡単なことである。

「数を沢山やることだ」

沢山やれば、どれかは当たる。

沢山の苗を植えて、育ちが悪い苗を間引いていくのと同じだ。

春の田んぼには、小さな苗が沢山植えられている。

苗を一本一本じっくり見ても、育つかどうかなんてわからない。

しかし肥料と水をやりながら育ちが悪い苗を間引いているうちに、毎日育ち続け、秋になると稲穂が稔り、大きな収穫を迎える。

これと同じだ。仮説検証の学びを蓄積し続けることで、あなただけの武器がゆっくりと育っていく。そして気がつくとそれは強大な武器になっている。

「継続こそ、力なり」という言葉は言い古されている。この言葉をバカにする人は、常に近道を探す。結果、時間が経っても力が付かない。

世の中の99.99%の人は凡人だ。しかし愚直な仮説検証の積み重ねにより、凡人でも天才に対抗できる。愚直な仮説検証は、凡人が天才に対抗する唯一の武器なのである。

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永井 孝尚(ながい・たかひさ)
マーケティング戦略コンサルタント
1984年に慶應義塾大学工学部(現・理工学部)を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャー、人材育成責任者として同社ソフトウェア事業の成長を支える。2013年に日本IBMを退社後、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体に新規事業開発支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供しマーケティング戦略の面白さを伝え続けている。さらに仕事で役立つ経営戦略を学ぶための「永井塾」を毎月主宰。主な著書にシリーズ60万部『100円のコーラを1000円で売る方法』、7万部『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(以上、KADOKAWA)、10万部『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)、『売ってはいけない』(PHP新書)。最新著書は『超実践マーケットイン企画術 7つのテンプレートで「お客様のニーズ」がつかめた』(PHP研究所)永井孝尚オフィシャルサイト

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(マーケティング戦略コンサルタント 永井 孝尚)

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