永田町大混乱!「新型コロナvs安倍vs菅」最後に勝つのは誰だ!
プレジデントオンライン / 2020年2月20日 17時15分
■不手際連発! ポスト安倍に影響大
世界中で感染拡大している新型コロナウイルスをめぐり、安倍晋三政権の後手後手な対応が批判を浴びている。現在は中国・湖北省に滞在した外国人の入国を拒否するようになったが、当初は「震源地」である武漢市からチャーター機で帰国した日本人全員を検査することができず、感染症法に基づく「指定感染症」の政令施行日や搭乗者負担としていたチャーター機費用も土壇場で方針転換するなど不手際ぶりが浮き彫りになっている。「危機管理」の強さを売りにしてきたはずの安倍政権に今、何が起きているのか。
野党が繰り返し追及してきた森友・加計問題や財務省の文書改ざん問題など、「普通ならば内閣が吹っ飛ぶ」(閣僚経験者)とされたテーマでも乗り切り、史上最長政権となった安倍内閣だが、新型コロナウイルスをめぐる対応はあまりに遅く、お粗末さが目立つ。
中国・湖北省では2019年12月以降、新型コロナウイルス関連肺炎の発生が確認されていたが、日本政府が関係閣僚会議で対応方針を決定したのは20年1月21日。その方針も感染リスクが高い地域からの帰国者・入国者に対する健康状態の確認や情報収集・情報提供など4項目で、この時点で安倍首相は「持続的なヒトからヒトへの感染が確認されている状況ではないが、一層の警戒が必要となる。感染症の発生状況など情報収集の徹底に万全を期してほしい」との認識だった。
■安倍首相には危機管理能力が欠如している
中国人旅行者が多い東京都は20年1月24日に危機管理対策会議を開き、大阪府も同日に対策本部を設置していたが、政府が対策本部を立ち上げたのは武漢市から29日に帰国した3人に陽性反応が確認された後の30日だ。一連の甘い対応には、安倍政権の支持層からも「安倍首相には危機管理能力が欠如している」などと厳しい声が相次いでいる。
安倍政権は首相官邸が危機管理を強力に担ってきたが、今回は官邸内に温度差があり機能しているとは言えず、感染症対策の「指揮官」である加藤勝信厚生労働相も一歩前に出た対応をしているとは言い難い。その結果、省庁間や政府・与党間の調整が思うようにいかず、「指定感染症」の政令施行日を急遽前倒ししたり、チャーター機の搭乗者負担方針を土壇場で撤回したりする迷走ぶりを露呈している。
こうした稚拙さの背景には何があるのか。首相官邸を取材する全国紙政治部の記者はこう声をひそめる。「安倍首相と菅義偉官房長官の意思疎通がうまくいかなくなっていることが要因の1つではないか」。解説によれば、危機管理の要である菅官房長官は、先の内閣改造で自らに近い菅原一秀経済産業相、河井克行法務相(いずれも当時)を入閣させたが公職選挙法違反疑惑で2人とも失脚。まだ疑惑に対する説明らしい説明もさせられず、菅氏の側近として力を蓄えた和泉洋人首相補佐官も女性問題が浮上し批判されている。
安倍首相は相次ぐ失態にいら立っているとされ、官邸関係者からは「19年の人事で生じた亀裂は残り、今政権内には『チーム安倍』と『チーム菅』の2つがある」との声が漏れる。安倍首相が公的行事「桜を見る会」に後援会関係者を多く招いていた問題などでも連日のように記者会見で批判の矢面に立たされている菅氏は「もう官房長官の職に辟易しているようだ」(自民党中堅)と見る向きもあるが、別の自民党担当記者は「もしも官房長官を外れたら『無役』になるだろう」と語る。それだけ政権の「屋台骨」である菅氏と、「チーム安倍」の間には深い溝ができているようだ。「桜を見る会」をめぐるチグハグな対応でも見て取れる。
安倍首相の自民党総裁任期満了が1年半後に迫り、岸田文雄自民党政調会長への「禅譲」を視野に入れる首相サイドと、それ以外の選択肢を目指す菅官房長官による「ポスト安倍」をにらんだ綱引きも激化しており、「安倍―菅」の二枚看板で築いてきた超長期政権にも脆弱性があらわれてきている。今政権がなすべきことは何か。ある民放政治記者の1人はこう苦言を呈した。「政局は別にして、くれぐれも国民の生命を脅かすような脅威の前には団結してほしいものだ」。
(雑誌「プレジデント」 写真=時事通信フォト)
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