なぜ「一生独身の男性」が30年前から急増しているのか

プレジデントオンライン / 2020年3月11日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LeoPatrizi

なぜ結婚しない人が増えたのか。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏は「出会いの機会があったにもかかわらず、男女とも「まだ若いから」と結婚を先送りしている傾向がある。未婚化の問題は統計的にみて女性よりも男性の方が深刻で、4人に1人が『生涯独身』となっている」という――。

※本稿は、天野馨南子『データで読み解く「生涯独身社会」』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

■未婚化は女性より、男性の方が深刻

講演会でも感じるのですが、高齢の方ほど、男性よりも女性の生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚経験がない人の割合)のほうが高い、未婚化は女性の話、という印象を持っている方が多いようです。

「未婚化」といったキーワードを目にすると、漠然と「(男女雇用機会均等法が制定・施行された)1980年代以降、高学歴化した女性が社会進出するようになって、結婚しなくなったからだろう」とイメージする方もいまだに見られます。

世間では未婚化と言えば「女性の未婚化」をイメージづけする傾向が強く、未婚化を題材にしたテレビドラマなどでも、独身中年キャリア女性と既婚の中年キャリア男性、といった役の組み合わせなど、女性の「おひとりさま」のイメージを強めるかのように描写されていたりするものもあります。

しかし、日本の未婚化は、統計上は女性よりも男性に顕著に起こっている現象なのです。

まずはこのことをデータでしっかりと確認したいと思います。【図表1】からわかるように、1985年の国勢調査までは、男女ともに生涯未婚率が非常に低く、強いて言えば女性の生涯未婚率のほうがやや高い状況が続いていました。

日本における男女別 生涯未婚(50歳時点 婚歴なし)率の推移

それが1990年の国勢調査になると、男性の生涯未婚率が急上昇を開始し、それ以降は男性の生涯未婚率が女性のそれを大きく上回り続けています。

■4人に1人の男性が50歳で婚歴なし

確かに女性の生涯未婚率も2000年から上昇傾向にありますが、男性の上昇カーブには追いついていません。直近の2015年国勢調査では、男性の生涯未婚率は24.2%、女性は14.9%となっています。表現を変えるならば、「日本の50歳男性の約4人に1人は一度も結婚経験がない」という状況です。

これに対して女性は約7人に1人ですので、両者の生涯未婚率には大きな開きがあることがわかります。2015年時点の50歳人口は男女ともに86万人です。ですので、この人口に生涯未婚率を掛けて単純計算してみると、女性約13万人に対して、男性は約21万人程度の生涯未婚者が存在することがわかります。

実数でみても、割合でみても、女性に比べて圧倒的に男性の生涯未婚者が多い、というのが日本の現状なのです。

■交際相手がいない34歳までの男性は7割

【図表2】を見てください。

日本における18~34歳の若い男女の「交際相手がいない」割合の推移

これは18~34歳の婚歴のない未婚者のうち「交際相手がいない」人の割合(非交際率)の推移を示しています。2000年あたりからその割合が増加し、2005年以降は急激に上昇していることがわかります。

直近の2015年に行なわれた調査結果では、実に未婚の男性の7割、女性の6割が、そもそも「交際相手がいない」と回答しています。未婚化に関して解決策として「婚外子が認められれば子どもが増える」という見解を見かけますが、そもそもこれは交際相手ありきの話になります。

交際相手がいない状態で、子どもの籍を入れる/入れないという議論は、あまり有効な少子化対策の議論とはなり得ないであろうことが、データからは見えてきます。非交際率と生涯未婚率の推移は、タイムラグはありますが、ほぼパラレルで推移しています。

この2つのデータから見えてくるのは、「交際相手がいない状態で未婚でいる」男女が急増している、という姿です。街中で目にとまる若い独身男女の大半が、若いにもかかわらず、特定の彼氏/彼女を持たなくなっている。これが、データが示す今の日本の姿なのです。

■単純に片付けられない新しい社会問題

もちろん、交際相手がいないこと自体が、その個人にとって悪いことだ、と言うつもりはありません。そもそも今の若い男女が交際や結婚をしたくないなら、それもいいのです。周囲が交際や結婚をそういった人に強制するべきではありません。

そこで、どれだけの若い男女が実際に結婚願望を抱いているのか見てみたいと思います。これについては、さきほど非交際率を示したのと同じ、18~34歳の独身男女の結婚意志を尋ねた国の大規模調査結果があります。

直近の2015年の結果を見てみると、男性の86%、女性の89%が「いずれ結婚するつもり」と回答しています。※注2

※筆者註:設問「自分の一生を通じて考えた場合、あなたの結婚に対するお考えは、つぎのうちどちらですか。」(1.いずれ結婚するつもり、2.一生結婚するつもりはない)。

つまり、若い独身男女の約9割が結婚意志を持っているということになります。そして、この割合は未婚割合が低かった1980年代の調査からほぼ変わらずの状態で推移しています。

今も昔も変わらず日本の若い独身男女の9割が結婚したいと思っているにもかかわらず、その男性の7割、女性の6割には交際相手がいないということになります。データからは、結婚願望といった個人のライフデザインの変化の問題として簡単に片づけられる話ではない、1980年代までにはなかった日本の新たな社会問題、といえると思います。

ここまで見てきたように、若い男女の大多数が昔と変わらず「いつかは結婚したい」と、希望しているにもかかわらず、それが実現しないまま50歳を迎えるケースが急増しているという状況です。

統計的には結婚の希望が叶わなくなりつつある時代となっていることが示唆される社会現象を、個人のライフデザインの問題だから、と捨象してしまっては、多くの人が抱えるライフデザイン問題を無視した議論となってしまいます。社会全体で、未婚化という問題をもっと正面から考えていく必要があるのではないか―。そんなふうに思います。

■結婚したいときには相手がいない?

【図表3】を見てください。

日本における18~34歳の若い男女の「独身にとどまっている理由」(3つまで回答・%)

18~24歳の若い独身男女への「なぜ独身にとどまっているのか」という質問に対しては、その多くが「まだ若すぎる」からだと回答しています。実に男性の5割、女性の4割が「まだ若いから結婚はいい」と思っているということがわかります。

データから「仕事や学業に打ち込みたい」と答えた人も男女とも4割いることがわかりますが、これもまた「仕事や学業が優先だから(結婚は)まだ早い」という考えからきているといえます。つまり、20歳前後のほとんどの独身男女が、「まだ早い」から、結婚するのは「いつかは」でいい、と考えているという結果になります。

しかし、これがアラサー(ここでは25~34歳)の独身男女の回答となると、独身理由が激変します。男女とも5割が「適当な相手がいない」という理由を挙げており、しかもこの割合がほかの理由の割合を圧倒しています。

なぜこうした大きな「理由の変化」が生じるのでしょうか。

一つは、学生気分か否かという点が関係してきているのではないか、と思われます。「まだ若すぎるから独身でいい」という回答が多数派である18~24歳という時期は、およそ高卒から大学院卒までにあたる年齢です。自分自身が学生であるか、あるいは同年代にはまだ学生でいる人が多いといえる年齢です。

大学進学率から考えると今の20代は、男女ともほぼ5割が4年制大学に進学しています。ですので、親の時代に比べると、同じ20歳前後の年齢でも圧倒的に学生気分に支配されやすい環境におかれているといえます。

■「出会いの宝庫」から状況が激変

年をとって振り返ってみると、学生時代というのは、同年齢異性との出会いの宝庫です。そのような機会は、ほとんどの人にとって、人生で「最初で最後」だといえるかもしれません。それゆえに、「まだまだ同年代の異性に出逢えるチャンスはあるのではないか。出会いのチャンスがあるのなら、結婚を念頭に置いてまで、わざわざ家庭を持つための相手探しをしなくていいのかもしれない」という錯覚に陥りやすいといえます。

その気持ちはあながちわからなくもありません。20代前半までは学生気分が「相手を探す」行動に影響していたものの、25~34歳という、男女とも一般的に学生ではいられなくなる「就業必須年齢」(学生だから就業していない、とは言いにくくなる年齢)に達してみると、周囲の環境が大きく変化してしまい「適当な相手がいない」という回答が圧倒的となる、という流れの解釈は説明力があるように思います。

この「就学可能年齢」(学生であることに違和感のない年齢)の終焉とともに、独身でいるトップ理由の「まだ若すぎる」が急落し、代わりに「適当な相手にめぐり会わない」が、20代後半からはトップに浮上します。

日本はただでさえ高齢化が顕著な社会です。確率的に考えても、職場には親世代の頃よりもはるかに高齢者が多く、同期もいない、もしくは少ない、という状況です。ですので、学生時代に比べて、職場環境の「激変ぶり」が与える「出会いたくても若い異性があまりいない」衝撃は、親世代に比べて相当なものだと思います。

■婚活版、寓話「アリとキリギリス」

一般的に就学者(学生)の多い年齢であるうちは「まだ若いから」と思って真剣交際する相手探しを先延ばしにしていたものの、「就業必須年齢」に移行した途端、環境の変化に大あわて。相手を探そうと考えるも目に付く同年代の激減ゆえに相手を見つけられずにいる――。そんな極端ともいえる男女の結婚活動の様相が独身調査の回答状況からは見えるような気がします。

若い独身男女が学生気分に浸り、「いつかは・いつかは文化」に染まってのんびりしているうち、気づいたときには適当な相手を見かけなくなってしまう。これは言ってみれば、寓話「アリとキリギリス」の“婚活バージョン”かもしれません。

学生時代を含めた若い年齢から「一期一会」とばかりにアリのようにコツコツとパートナー探しをしている人は、早々に結婚、あるいは長年付き合った人と結ばれていく。ところが、キリギリスのように「今は楽しければいいや。面倒くさい関係は無理。もっといい人がいるはず」と、パートナー探しを怠っていると、アラサーという“冬”が訪れたときには周りに「適当な」相手が見えなくなってしまっている。

そんなライフデザイン・ストーリーは、あながち日本の婚活の現実からそう遠くは外れていないかもしれません。

■男性の方が「結婚年齢先延ばしリスク」が高い

「確かに、女性は子どもを産むのだから『結婚は急ごう』と特に意識改革をしないとね! 男性は出産しないから、多少のんびりしていても結婚できるけれどね」と、実際のデータとかけ離れた思い込みが語られる場面にでくわすことがいまだにあります。

しかし現実は、男性のほうが「結婚年齢先延ばしリスク」が高い、ということがデータ上では示されています。ここで再び【図表3】を見てみましょう。

20歳前後で独身でいる理由について、女性より男性のほうが10ポイントも「まだ若すぎる」と思っているから、とする回答割合が高くなっています。つまりそれだけ「いつかは・いつかは」と結婚相手探しを先延ばしにする傾向が、男性のほうが強いことがわかります。この先延ばしの結果ともいえるかもしれませんが、年齢を追った未婚率の推移に男女で差が出てきます。

男女の未婚割合差については、【図表4】を見てください。グラフからは、女性は30代前半ですでに「婚歴なしの未婚者」が3割しか残っていないことがわかります。

年齢ゾーン別 未婚者の割合

■20代後半が運命の分かれ道

一方、同年代の男性ではまだ5割が「婚歴なしの未婚」状態です。すでに30代前半で、男女のかなり大きな未婚格差が生じているのです。

天野馨南子『データで読み解く「生涯独身社会」』(宝島社新書)
天野馨南子『データで読み解く「生涯独身社会」』(宝島社新書)

これが20歳前後の年齢ゾーンであれば、男女とも9割以上が結婚しておらず、男女の未婚格差はほぼ見られません。読者の皆さんご自身のことを思い起こしていただいても、大学のキャンパスや入社したての20代前半当時の職場では、自分と同じくらいの年齢の異性が見渡す限り、ほとんど未婚の状態だったと思います。

しかし、20代後半になると女性側の未婚率が大きく下がり始めます。男性の未婚者が7割の高さにとどまっているのに対して、女性は6割にまで減少します。まだまだのんびり構えている男性を横目に、女性は20代後半には結婚相手探しのアクセルを大きく踏み込み始めることがデータからは見えてきます。

こうした女性の結婚に関する行動の変化に気がつかず、「まだまだ俺は若いし」「焦るのは女性の話」と男性が考えていると、30代前半になったときには、気になっていた「あの子」も「この子」もとっくに人妻だった、ということが起こってしまうのです。

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天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員
東京大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。1995年、日本生命保険相互会社入社。99年から同社シンクタンクに出向。専門分野は少子化対策・少子化に関する社会の諸問題。厚生労働省育児休業法関連調査等を経て結婚・出産。1児の母。不妊治療・長期の介護も経験。学際的な研究をモットーとし、くらしに必要な「正確な知識」を広めるための執筆・講演活動の傍ら、内閣府少子化対策関連有識者委員、地方自治体・法人会等の少子化対策・結婚支援データ活用アドバイザー等を務める。

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(ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員 天野 馨南子)

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