灘中合格者数日本一を誇る塾の学園長「子どもの成績表は1年間は捨てないで」
プレジデントオンライン / 2020年6月19日 9時15分
※本稿は、橋本憲一『灘中に合格する子は学力のほかに何を持っているのか』(ポプラ社)の一部を再編集したのものです。
■親のネガティブ感情は子どもに影響する
「塾に通っていると、子どもの友だちの成績が気になる」という保護者の悩みを、ときどき耳にすることがあります。
相手がわが子と同じ学校を志望していたり、切磋琢磨(せっさたくま)するライバル同士だったりすることで、親としてつい意識してしまうこともあるでしょう。
しかし、ほかの子どもの成績がどうして気になるのかというと、それは親自身が、自分の子どもの成績が悪いと思っているときだからです。
その焦りが、周囲との比較になってしまい、「○○くんのほうが、わが子よりもよく頑張っているように見える」とか、「△△くんのほうが、うちの子よりもしっかりしている」という具合に、敏感に反応してしまうのです。
子どもの成績がよいときは、そんな比較はしません。
ほかの子どもとわが子を比較してしまうのは、コンプレックスがあるからです。
このような状態のときは、一度考えだすとそれがずっと頭のなかに残り、そのうちに四六時中考えてしまうようになります。わが子のことですから、それも仕方がないのですが、親がネガティブな感情にからめとられてしまうと、少なからず子どもにも影響を与えてしまいます。その結果、負の連鎖になりかねません。
■「成績の伸び悩み」は曖昧で漠然としている
そこで大前提として、「何を理由として、わが子が伸び悩んでいると思うのか?」ということを、保護者にはクリアにしてほしいのです。
例えば、その理由が「ずっと真面目に勉強しているけれど、成績がそれほど上がらない」ということであれば、子どもの1年前の成績表と、現在の成績表を並べて比較してみてください。その結果、1年前の成績よりも上がっていたら、その子はきちんと学力が伸びているということになります。
次に、「わが子の周囲の子どもたちも全然勉強していないのに、その集団のなかでも、ずっと最下位のほうにいる」という理由ならば、その子は親が心配するように学力が伸びていない可能性が高いかもしれません。
保護者が感じる「成績の伸び悩み」というのは、とてもあいまいで漠然とした部分があります。それゆえ、例に挙げたように「何を理由に、そう感じるのか?」ということを、まずクリアにする必要があるのです。
しかし私は、子どもの成績にとらわれて悩むよりは、「子どもが昨日した努力をきちんと評価する」ことを、保護者の方には大切にしてほしいと思うのです。
■努力したけど報われなかったときはどうするか
例えば、家庭学習ではしっかり努力して頑張ったにもかかわらず、翌日テストを受けたら、ちょっと点数が悪かったとします。これは、子どもがきちんと努力をしたけれど、報われなかったケースです。このようなときは「頑張ったのに残念だけど、テスト直しをして、次回頑張ったらいいじゃない」と、子どもに声かけをして、テストでは報われなかった昨日の努力を労ってほしいのです。そして、子どもに間違えた問題の解き直しをさせます。全部が無理ならば、半分でも3割でもかまいません。
このような、小さいけれど丁寧な積み上げをしていくことで、勉強のプラスの循環が始まるのです。
一方で、親がほかの子と比較して「あなた、○○くんよりも算数ができてないじゃないの」と言ったとします。それを聞いた子どもは、一生懸命努力して頑張るのですが、「今度は△△くんに負けた。あなたはやっぱり勉強が足りない」とか「集中してないからでしょう」とか、親がマイナスなことばかりを口にしていると、頑張りを評価されることがないため、子どものなかで努力の価値が積み重なっていきません。すると起こるのが、負のループです。
もしも「わが子の成績が伸び悩んでいる」とか「なかなか報われない」ということを親が感じる瞬間があったとしても、それをきっかけに子どもが「いい努力」をしてくれて、それがうまくつながっていったら、何も心配することはないのです。親がすべきことは悩みにとらわれることではなく、マイナスな要素があったときに「それをどう使うか」なのです。
■「プラスワン」の声かけを心がけて
学校の先生や塾の講師が成績表に書くコメントは、すべてその発想からきています。成績状況については一言ぐらい厳しいことを書いたとしても、その子のなかに芽生え始めているいい芽を見つけて、必ずプラスのコメントで締めくくるわけです。
親子においてもプラスとマイナスをやりとりしながら、子どもの能力を伸ばしていけたらベストだと思います。子どもはお母さんからマイナスの指摘を受けたら、自分で努力をしてプラスを生みだす。すると、最初にお母さんから受けたマイナスが消えます。ところが、努力したのにテストでは力を発揮できなかった。ここでまた子どもにマイナスが生まれます。
でも、報われなかった努力をお母さんに褒められることでプラスが加わり、プラス・マイナスはまたゼロになります。このように親子でプラスとマイナスを滞ることなくやりとりすることが、子どもを伸ばすよい循環になるのです。
そしてできれば、プラスマイナスゼロではなく、子どもに「プラスワン」が残るような形で、親はフォローしてあげてほしいと思います。子どもが自分で何かをしようとしたこと、そして、その後の結果をきちんと認めてあげること。これを心がけてほしいのです。
この親の少なくともプラスマイナスゼロ、できるだけプラスワンが残るような声かけ戦術は、子どもの「学びの器」をより強固なものに仕上げていくのは間違いありません。
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浜学園 学園長
創立1959年以来、関西でトップをいく進学塾として実績を重ねる「進学教室浜学園」の学園長に2003年春就任。浜学園は兵庫県西宮市に本部を置き、復習主義、テストで学力を伸ばすなど、独特の指導方法を展開している。2005年春入試から2020年春入試まで16年連続、灘中合格者数日本一を達成し、特に2019年春、2020年春入試で2年連続灘中合格者数100名突破を達成する。担当教科は算数。
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(浜学園 学園長 橋本 憲一)
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