1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

日本初のロシア人弁護士「日本育ちの私がネイティブ級の英語力を手に入れた勉強法」

プレジデントオンライン / 2020年7月28日 11時15分

法務省旧本館前にて - 写真=筆者提供

英語を効率よく勉強するにはどうすればいいのか。日本育ちでロシア国籍の弁護士、ベロスルドヴァ・オリガさんは、「聞き取った英語を紙に書き、同時に読み上げるという方法は、読む・書く・聞く・話すの4つの技能を一度で磨くことができる」という——。

■第三言語でもTOEIC990点

ついに連載3回目となりました。今回は、英語の勉強についてお話したいと思います(以前の記事については、6月4日配信「日本初のロシア人弁護士『バイト4つかけもちでも一発合格』の勉強法」、6月23日配信「日本初のロシア人弁護士『私に一発合格をもたらした5つの生活習慣』」をご覧ください)。

私は現在、六本木にある外資系のポールヘイスティングス法律事務所に所属し、毎日、英語・ロシア語・日本語を用いながら業務を行っています。クライアントの多くは海外企業なので、クライアントとの会話はもちろん、事務所内での会話も9割方、英語です。

私は司法試験受験生時代、大学受験予備校で英語を指導していたことがあるのですが、自分の指導法が間違っていないことを示すために生徒と一緒にTOEICを受験したところ、990点をとりました。また、つい先日、アメリカのロースクールへの留学に向けてお試しでTOEFLも受けましたが、特別な勉強しない状態でも100点(ハーバード等一流大学の一般的なボーダーライン)を超えたので、今後120点を目指して対策するつもりです。

とはいえ、私にとって英語は第三言語。私はロシア出身の両親の下、2歳半から日本で暮らしているので、英語に囲まれて育ったわけではありません。日本で生まれ育った方々と同様、学校等での勉強を通じて習得したものです。

そこで今回は、実務で遜色なく使えるような英語力を身につける勉強法についてご紹介します。

■ロシアでは小学校高学年から第二外国語を学ぶ

近年、英語教育が世界的に重視されていますが、ロシアにおいても同様の傾向が見受けられます。実際、私の両親が学生だった頃は、小学校4年生頃から英語が授業の一環として行われるようなカリキュラムとなっていましたが、現在では多くの学校で小学校低学年から英語の授業が行われるように教育方針が変わってきています。

そのうえ、ロシアの多くの学校では、小学校高学年から英語学習とは別に第二外国語(フランス語やドイツ語等)を学ぶような授業が展開されています。この点、日本では多くの方が第二外国語(英語以外の言語)を大学で初めて学んでいることからすると、ロシアの語学学習は、幼少期から開始する点で特徴的だといえるのではないでしょうか。

もっとも、幼少期からの語学学習に力を入れているにもかかわらず、世界的にみて、まだ英語の能力はそこまで高くはないのが現状です。実際、100カ国における英語の能力を比較したEF・EPI英語能力指数のランキングにおいて、2019年のデータでロシアは48位です(なお、同ランキングにおいて、日本は53位となっています)。

英語教育に力を入れているロシアですが、私自身、ロシアで英語を学習したわけではなく、基本的には地元である仙台の国公立の学校に通いながら、英語を学習してきました。

■入学後3カ月で破綻したインターナショナルスクール

私は小学校5年生の頃、以前仙台にあったインターナショナルスクールに在籍していたことがあります。この学校は、ネイティブの先生が外国人や日本人にすべての教科の授業を英語で行うことが特徴でした。そこで、両親は、学校にいる間、ネイティブスピーカーと英語漬けの日々が送れることに魅力を感じ、入学金と1年分の授業料を払い、私をこのインターナショナルスクールに入学させました。

インターナショナルスクールの入学記念に祖父と1枚
写真=筆者提供
インターナショナルスクールの入学記念に祖父と1枚 - 写真=筆者提供

ところが、通い始めて3カ月すると、このインターナショナルスクールは突然閉校となりました。後になって水道管が未整備であったこと、校舎建設費4億円や校地代1億円相当を未払いで開校したことが判明しました。理事長は、多くの保護者が先払いした授業料を返済せず、新聞で問題が報じられると姿を消しました。

この経験があったからこそ、後に私は弁護士を目指すようになり現在に至るのですが、当時の私としてはそれどころではありません。このインターナショナルスクールに入学する際、当時通っていた公立の小学校の友達に最後のお別れかのような盛大な送別会を開いてもらっていました。それもあり、3カ月後に再び同じ学校に戻る際はどのような顔をして戻ればよいか、本当に悩みました。

もっとも、このような心配は無用でした。担任の先生やクラスの友達は戻ってきた私を嫌な顔一つせず快く迎えてくれ、そのおかげで私は無事に元の生活に戻ることができました。

しかし、全てが元に戻ったわけではありません。先払いした授業料は一切返済されず、両親が非常に落ち込んでいたことを今でも覚えています。それ以降は二度とインターナショナルスクールの話が家庭内で出ることはありませんでした。

■発音は「論理的に」学習することができる

私のことを詳しく知らない方と英語でお話しすると、私が英語圏に住んでいた経験があると勘違いされることもしばしばあります。その一番の理由は、英語の発音にあると思います。

しかし、私の発音は、自然に身についたものではありません。英語の発音について、論理的に学習することで努力して身につけたものです。

勉強の中でも特に役立ったのが、フォニックス(Phonics)です。フォニックスとは、英語圏の幼稚園や小学校などで用いられている、英語の文字と音の関係のルールを学ぶ学習方法です。このルールを習得すると知らない単語もある程度推測をして正しく発音ができるようになります。

例えば、“gorilla(ゴリラ)”と“giraffe(キリン)”は、同じ“g”という文字から始まりますが、その発音は違います。両者の違いは、“g”の後に続く母音の違いによるものです。他にも、“travel”と“trouble”の発音の違いや“heart”と“hurt”の違いなどをひとつずつ覚えていきました。

■日本の英語教育で重視されてこなかった「フォニックス」

日本では、これまであまりフォニックスを学ぶ機会がなく、発音を何となく習得する方法で勉強されてきた方が多いと思います。私の友人でも、英語のリーディングやリスニング能力はバッチリなのに、スピーキングが苦手という方が多くいます。これはフォニックスを学習する機会がなかったことで、英語の発音が日本語のように平坦になってしまっていることがひとつの原因なのではないかと思います。

発音を身につけるには、年をとってからでは遅すぎるということはよく言われます。しかし、たとえ大人であっても、フォニックスを学ぶ前と後とでは、その発音が格段に異なります。確かに、子供の頃から英語圏で育った人のような完璧な発音に到達するのは難しいかもしれませんが、発音が良くなれば相手に伝わりやすくなり、英語を話すのが楽しくなりますし、リスニング能力の向上にもつながります。

最近は日本語で書かれた本も充実してきています。本屋で「フォニックス」と題された本を手にとってみて、たとえ子ども用でもしっくり来た本にトライしてみるのがオススメです。

■ディクテーションとシャドウイング

フォニックスは主にスピーキング用の勉強でしたが、会話は、こちらから話すと同時に相手の発言を理解することができて初めて成立するものです。

しかし、何度も読み返したり辞書を引いて調べたりできるリーディングと異なり、単なる音の塊を英語の文章として捉えなければならないリスニングに苦労されている方も多いのではないでしょうか。

そこで重要なのが、ディクテーション、すなわち、聞いた言葉を紙に書き取るトレーニングです。大学入試等のリスニングテストでは、音声で流れる英文をそのまま解答欄に書くよう指示される問題がありますが、自分が勉強する際にも、それを延々と繰り返しました。

これと似たような勉強法に、聞いた英文をすぐその場でまねして発音するシャドウイングという勉強法があります。ですが、初期段階でシャドウイングから入るのはかなり難しいと思います。自分が繰り返した言葉が本当に合っているのかの確認ができず、英語能力の向上に直結しにくいからです。

ディクテーションの場合は、自分が聞き取った内容を紙にしっかりと残すので、第三者からのチェックも受けやすいですし、文法やスペル、単語選択等のミスについても、自分で気づくことができます。

ディクテーションを続けると、単なる音の塊が、それぞれ意味を持つ英単語にきちんと分節されて、相手の話した内容が理解できるようになります。

■全てのスキルを一度で鍛える「話しながら」のディクテーション

それでもシャドウイングを取り入れたいという方にオススメなのは、私も実際に行っていた方法なのですが、「話しながら」ディクテーションをするという方法です。小さい頃、学校から家に帰ると、母親が英語の例文が流れるCDを流していました。そこで、聞こえた英文を逐一書き留めていたのです。流れる音声が速い際は、母親が途中でCDを止めたり、巻き戻して何度か同じ英文を流したりして、スペルミスしなくなるまで、何度も同じ英文を書き取っていました。その際、自分が書いている文を小さい声で復唱していたのです。

「話しながら」ディクテーションをすることで、語学学習で網羅しなければいけない全てのスキル(リーディング、ライティング、リスニング、スピーキング)を一度に鍛えることができます。具体的には、CDから流れてくる英語を聞くことで、リスニングの力がつきます。そして、その英語を書き取ることで、ライティングの力がつきます。さらに、その書いている英語を小声で復唱することで、リーディングとスピーキングの力もセットで養えます。

“The post office is across the street.”語学学習において必要となるスキルを一度に用いて、頭をフル回転させて勉強をするからか、自分でも驚きですが、その際書いて覚えた英文は今でも鮮明に覚えています。

私は子供の頃に母親に手伝ってもらいながら行いましたが、最近は、Netflix等を活用することで、英語音声を書き取った内容が正しかったか、自分ひとりで答え合わせしやすい環境が整ってきています。

■「オリジナル単語帳」を作るときのコツ

語学学習においての難関。それは、今まで知らなかった新しい単語をたくさん学ばなければならないということです。そして、新しい単語を一度で自分のものにすることは難しく、語学学習をする際に、この点でつまずく方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、どんな言語であっても、単語力こそが最も重要です。単語力がなければ、相手が発した言葉を聞き取ることすらできませんし、自分が言いたいこともうまく伝えられません。

そこで、単語力を養うために、私は自作の単語帳を作るようにしていました。

ポイントとしては、この単語帳では日本語を一切使わず、単語も意味も例文も全て英語で書くということです。

具体的には、まず、市販のメモ帳等を用意し、アルファベット順に3~4ページをそれぞれの文字に割り当てます。そして、覚えたい単語を見つけ次第、頭文字別に新しい単語を書き入れ、そのすぐ横にはその単語のシノニム(同義語)や平易な説明を英語で書き入れます。そして、同義語や説明を書き入れた後は、その新しい単語を用いた短い例文を書きます。

全て英語で作成している単語帳
写真=筆者提供
全て英語で作成している単語帳 - 写真=筆者提供

■単語が出てこなくても別の言い回しで伝えることができる

新しい単語はどうしても使い慣れておらず、インプットした後も、実践的なアウトプットができるまである程度時間がかかってしまうものです。せっかく新しい単語を会話において使いたいと思っても、その単語をど忘れしたり、あるいは発音を間違えてインプットしたがために、相手方に伝わらないという経験をした方もいらっしゃるのではないしょうか。

自分の母国語以外の言語で会話をする際、言葉をひねり出そうとして“well(えーっと)”を何度も復唱してしまったり、沈黙してしまったりすると、自分の言いたいことを相手方に伝えられません。この際、新しい単語の同義語や平易な英語での説明をおさえておけば、たとえその単語がその場で出てこなかったとしても、別の言い回しによって、言いたいことはある程度は伝わり、会話のキャッチボールがつながります。もちろん、これはその場しのぎにすぎないので、後でもう一度単語帳を見ながらインプットし直します。

英語学習を始めた頃の写真。左から、私、父、当時の英語の先生、兄
英語学習を始めた頃の写真。左から、私、父、当時の英語の先生、兄(写真=筆者提供)

また、新しい単語を用いた短文を自分で作って、単語帳に書き加えることで、その単語の使い方もマスターすることができます。基本的には、英文を読んでいる際に新しい単語に巡り合った場合は、その英文1文を抜き出して、単語帳に書き入れる短文として用いていましたが、1文が長すぎるときは自分で頭を使って短文を作ったりもしていました。

私は今でも、ボキャブラリーを養うために単語の勉強を続けています。市販の単語帳だけではなく、アメリカの小中学校で用いられている理科や社会の教科書等も参照すると、実用性のある単語力を養うことができるようになります。

本稿で取り上げた英語学習方法が、皆さまの英語力アップにつながりましたら幸いです。

裁判所にて
写真=筆者提供
裁判所にて - 写真=筆者提供

----------

ベロスルドヴァ・オリガ 弁護士
ロシア生まれ。2017年3月、慶應義塾大学法学部卒業。同年4月、東京大学法学政治学研究科入学。学業とアルバイトを両立させ、同年11月、ロシア出身者としては史上初の司法試験予備試験合格。2018年9月、新司法試験合格(ロシア出身者初)。司法修習を経て2019年12月、弁護士登録。ポールヘイスティングス法律事務所で法律業務にあたる。

----------

(弁護士 ベロスルドヴァ・オリガ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください