どんな提案もスルー、「忙しいアピール」がすさまじい上司の目を覚ますひと言

プレジデントオンライン / 2021年1月6日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

企画を提案しても反応が薄く、返事がないままいつの間にかボツになる──。そんな男性上司の態度に悩んでいる人も多いのでは。なぜそんな態度になるのか、スルーされないためにはどうすればいいのか。男性学を研究する田中俊之先生に聞きました──。

■「意を酌めないほうが悪い」という考え方

男性上司に企画提案した時、話は聞いてくれるのにいいとも悪いとも言ってくれない。本音を聞きたくても「忙しいアピール」が強くて話しかけにくい。今、そんなモヤモヤを感じている女性が少なくないようです。いくら一生懸命企画を考えても、暖簾(のれん)に腕押し状態では次の行動を起こそうにも起こせません。

彼らはなぜそうした行動をとるのでしょうか。ひとつには、世代的な問題があります。今の上司層は「人を巻き込める」「経験則で対処できる」「いつも忙しい」などの点で評価を得てきた世代。それが有能の証しでもあったため、この3つができない部下は無能、つまり「できないほうが悪い」と考えてしまいがちです。

自分を巻き込めない部下のほうに非がある、返事がない=ボツということなのにそれがわからない部下が悪い、自分は有能で忙しいからできない人の相手をしている暇はない。そんな意識が相まって「スルーする」という行動につながっているのではと思います。

■提案を「スルーする」のはマウント行動の一種

部下の提案をスルーするというのは、わかりやすいマウント行動でもあります。相手に自分の優位性を示し、有能感を高めるためのもので、ある意味とても男性的と言えるでしょう。

ただ、今はこうした態度はパワハラにも当たりかねません。自分の優位性を盾にとって相手の意見を聞かない、あるいは相手にしないというのは、現代の組織においては大問題。近い将来、上司としての評価は下がっていくはずで、そこに気づいていないのは少しかわいそうとも言えそうです。

■ハンパない“暖簾に腕押し感”の正体

原因としてはもうひとつ、コミュニケーション力不足も考えられます。そもそもコミュニケーションとは双方向であるべきもの。でも、一昔前の上意下達の風土の中で評価されてきた人たちは、上から下へと一方通行のコミュニケーションに慣れていて、たとえ上司から返事がなくても意を酌める人が有能だと考える傾向にあります。

部下が「暖簾に腕押し」と感じてしまう原因もここにあります。こちらから提案しても向こうからの回答が伝わってこないわけですから、コミュニケーションが双方向でないのは明らかです。上司側が「意を酌むべきだ」と思っていても、世代が違う部下側からすれば無理な話。これでは、部下としては「相手にされていない感」が高まるだけになってしまいます。

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写真=iStock.com/kanzilyou
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では、コミュニケーションを双方向にするにはどうすればいいのでしょうか。上司は双方向であるべきだとは思っていないわけで、そうなると部下の側から誘導してあげる必要があります。

■提案前に必ず伝えるべきこと

そのためには、まず自分がなぜ上司と話をしたいのか、動機を明確にしておいてください。たいていの人は、次の3パターンのどれかに当てはまると思います。

(1)単に話を聞いてほしい(指示や評価は求めていない)
(2)企画提案の出来を評価してほしい
(3)解決策を示してほしい(知識や経験を基にした助言がほしい)

動機が明確になったら、上司と話す時、最初にそれを伝えましょう。人間は「これが私のニーズです」と提示されると、何とかして回答しようという気持ちになりやすいもの。この会話が向かう先はどこなのか、あらかじめ前提を共有して、上司を“答える姿勢”へ誘導してあげるのです。

「言わなくてもわかるだろう」は通用しないことに気づかせる

上司が答える姿勢になれば、回答のパターンも変わってきます。暖簾に腕押しと感じるのは、回答がまったくないか、あっても「検討する」などの1パターンだけだから。他の回答パターンを引き出せれば、また違う角度から質問をしたり次の提案につなげたりと、双方向のコミュニケーションが可能になってきます。そうなれば、暖簾に腕押し感は減っていくのではないでしょうか。

こうしたコミュニケーションを続けていれば、上司の中には双方向の重要性を理解する人も出てくるはずです。これまでの「わざわざ言わなくてもわかるだろう」という姿勢が通用しないと気づき、部下が自分に何を求めているのか、会話から酌みとろうとしはじめるかもしれません。これからの時代、上司にはぜひそうあってほしいものです。

■「忙しそうで話しかけにくい上司」は無能の証し

しかし、上記を実践できるのは、上司に話しかけるチャンスがあってこそ。「忙しいアピール」や「話しかけるなオーラ」が強すぎて、それすらできないケースもあるかもしれません。

私は、そうした人は上司としてすでに失敗していると思います。「忙しい」も「話しかけるな」も、自分の有能さや優位性のアピールであり、有能感を満たすためのものでしかありません。管理職なら、自分の有能感アップより部下のモチベーションアップを優先させるべきなのに、それができていない時点で無能と言っていいでしょう。

しかも、部下と話す暇がないほど忙しいということは、自分のスケジュール管理ができていないということ。一人で多くの業務を抱え込んでいるのだとしたら、それもまた管理職の役割をはき違えている証拠と言えるでしょう。

■部下と対話できずに仕事を抱え込む管理職も

こうしたタイプは女性管理職にも見られますが、多いのはやはり男性。特にコロナ禍以降は、リモートワークなど新しい働き方が普及したこともあって、経験則で対処できない、部下とうまくコミュニケーションがとれないなどの理由から、一人で多数の業務を抱え込んでしまうケースが増えています。

これは、部下に弱みを見せたくない、見せてはいけないという思いも一因になっているのではないでしょうか。男性管理職には、自分が「男だから」「管理職だから」という視点にとらわれていないかどうか、いま一度自己を見つめ直してみてほしいところです。その視点を持つだけでも、後々のつらさはかなり防げるように思います。

そして、こうした管理職を上司に持つ人は、コミュニケーションを双方向へ誘導すると同時に、弱みを見せてもいいのだとさりげなく伝えてみてほしいですね。それが「暖簾に腕押し」な上司、「忙しいアピール」をする上司を減らすことにもつながっていくのではと思います。

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田中 俊之(たなか・としゆき)
大正大学心理社会学部人間科学科准教授
1975年生まれ。博士(社会学)。武蔵大学人文学部社会学科卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめる論客として、各メディアで活躍中。著書に、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)『中年男ルネッサンス』(イースト新書)など。

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(大正大学心理社会学部人間科学科准教授 田中 俊之 構成=辻村 洋子)

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