営業のプロ中のプロが気づいた「ブレイクするお笑い芸人」の共通点

プレジデントオンライン / 2021年1月15日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SSSCCC

たくさんいるお笑い芸人のうち、ブレイクする人としない人はどこが違うのか。ビジネスコンサルタントの和田裕美氏は「成功するお笑い芸人には、根底に『お客様をハッピーにしたい』という気持ちがある。これは営業で大事なことと同じだ」という――。

■売れっ子芸人達に共通する「本番力」とは

私はNHK・Eテレの番組『芸人先生』(2017年8月)『芸人先生』(2018年4月~2020年8月)に出演させてもらっています。これは、お笑い芸人さん達が自分たちの能力に秘められたビジネスでも有効なノウハウを企業の社員さん達へ伝授するという番組で、私は別室で講義内容の分析・解説をするというお役目でした。

今でこそ売れっ子芸人として名前を聞けば誰でも知っている人たちでも、最初から光り輝いていたわけじゃなく実はもともと人見知りだったり、いじめられっ子だった経験があったりと、人前に出ることが好きな人ばかりではないのです。

それでも彼らはほんの数分の漫才やコントで人を笑わせることができ、ときに役者としてもMCとしても活躍しありとあらゆる分野で活躍されています。すごい能力に圧倒されますが、これはまさに「本番力」=本番で力を発揮する能力があったと私は思っているのです。

今回は、そんな芸人さん達の共通点をビジネスコンサルタントの視点で考えてみたいと思います。

■ネタをつくるために日常を観察している

芸人さんが「本番力」を発揮するために必要なのは、なんといってもネタです。芸人さん達は絶えず、何気ない日常をじっくり観察しています。私が提唱している「WADA式・陽転思考」に「検索」という考え方があるんですが、脳に検索窓のような場所があって、そこに入力するキーワードによって心の中が変わり、現実が変わっていきます。

検索窓に入れる言葉が「ツイてないな」「しんどいな」というようなネガティブなものだったら悪い結果ばかりが出てきてしまいますが、芸人さん達はずっと「何か面白いことないかなー」と検索していると思うんですね。だから世の中が面白く見えてくる。あるひとつのことを意識すると、それに関する情報が無意識に自分の手元にたくさん集まるようになる現象を「カラーバス効果」と言いますが、常にそういう状態なわけです。

■「何か面白いことないかな」と検索する力

例えばひとりコントの横澤夏子さんの女性ネタ。よくある日常のシーンばかりですが、「面白いかもしれない」という目で見ているからネタになるんですよね。横澤さんも「ネタのモデルは自分の周りの女性たちで、彼女たちと話することから生まれてくる」とおっしゃっています。

また、お笑いコンビのチョコレートプラネットさんは、とにかく面白いと思ったものをスマートフォンの写真で撮りまくっておき、あとで見返すことによってネタにすることがあるそうなんです。これも「検索」のひとつですね。

もし「ネタが思いつかない……」と不安になって落ち込んでしまったら「面白いこと」を検索できなくなり、余計にネタが思いつかないという悪いスパイラルに入り込んでしまいます。でも、売れている芸人さん達は、ネタになろうとなるまいと「面白いことないかな」と検索し続けるクセが身についているのです。

■冒頭に「ツカミ」を持ってくることの大切さ

お笑いをどうやってお客さんに見せるかは、ビジネスではプレゼンに当たる部分です。トークは冒頭が命。最初の30秒~1分で人はだいたい興味があるかないかを判断すると言われていますので、伝えたいことを最初に言うのが大事です。ビジネスの世界ではスティーブ・ジョブズのプレゼン術が有名ですが、漫才やコントも同じです。

アイデア
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/penguiiin

冒頭で一番大切なのはいわゆる「ツカミ」です。これが抜群にうまいのは、お笑いコンビのサンドウィッチマンさん。「最速でツカミに入る」ことを意識していらっしゃって、ツカミを終えて本題に入り、最初のボケを終えるまでに1分しかかかっていないそうです。これは、番組によってひとつのネタを「3分にしてくれ」「5分にしてくれ」と言われることがあるので編み出した方法なんだとか。

また、サンドウィッチマンさんは、ツカミのためには磨き抜かれた言葉と決めゼリフが重要だとおっしゃっていて、漫才の中のひとつの言葉のために、ああでもないこうでもないと2カ月も3カ月も考えるそうです。

ツカミに関しては、3年連続でM‐1準優勝を飾った漫才師の和牛さんも、最初の30秒を1年、2年かけて仕上げていくという話をされていました。私たちがすんなり漫才やコントの世界に入っていって笑えるのは、こうやって練り上げられた言葉で冒頭からつかまれているからであり、これも「本番力」だと言えるでしょう。

■「ズラし」の思考が新しいネタを生む

ビジネスで新しい事業や展開を行う際に使う「ズラし」の考え方をお笑いに取り入れて成功している方も多くいらっしゃいます。ズラしの代表的な方法に「ピボット思考」がありますが、これはバスケットボールで軸足を置き、片足だけを動かす方法のこと。ベタなこと=なじみある設定や枠組みは動かさず、片方だけ動かしてアイディアを探っていくやり方です。

例えば「キングオブコント」で5代目王者となり大ブレイクしたお笑いコンビのバイきんぐさん。売れない時代に他の芸人さんを意識しすぎて、誰も考えたことのないような設定やコントを考えすぎ、お客様の共感を得られない自己満足のネタばかりですべり続けてしまっていたそうです。そこで、「帰省」や「コンビニ」といったベタな設定は動かさず、リアリティの延長でネタを考えていったところ、売れ始めました。

この「ズラし」の思考法は、ネタだけに限りません。例えばチョコレートプラネットさんは、コントに軸足を置きながらものまねをプラスして大成功しましたが、これは「時間・人・場所・方法・金額」のいずれかをズラしてみると思わぬ新しいものが生まれるという「ズラしファイブ」という考え方。定番を超えるために多角的に攻めたり、お客様の新たなニーズを察知したりすることにも有効なんです。

■自虐というマイナス自己開示で共感を得る

ビジネスの世界でも、あえて欠点から伝えることで有利になることがありますが、芸人さん達がお客様に共感されたり、好感を抱かれたりする理由に多くの方が「マイナス自己開示をしている」ことも挙げられます。欠点を笑いに変えているところが好かれるのです。自分の欠点を言えるというのはその人が心を開いている証拠になり、相手も虚勢を張らずに心を開きやすくなるので、親近感が湧くのです。

例えばお笑いコンビのトレンディエンジェル斎藤さんの「ハゲ」ネタ、お笑いコンビのアインシュタイン稲田さんの「顔」ネタなど、外見をネタにすることでブレイクした芸人さん達がいらっしゃいます。漫才やコントは通常3~5分なので、「私、ハゲなんです!」「デブですみません!」「ブサイクなんです!」というように、ぱっと見でわかるような外見ネタを使うことが多いようですが、これはツカミには最適な方法。

さらにそこには自分を卑下したネガティブなものが一切なく「笑い」と「明るさ」がプラスされるで魅力になっていく。

こういった明るい自虐ネタを使えることも芸人さん達の「本番力」と言っていいでしょう。

■圧倒的な努力と経験による引き出しの多さ

私は芸人さん達は直感が鋭いな、と思っているのですが、それは圧倒的な努力と経験を積み重ねてきたことによる引き出しの多さから来るものだといえるでしょう。

例えばお笑いコンビのミキさんは、ネタはお客様に合わせて現場で決める「現場第一主義」。ネタをかっちり決めないで登場し、子どもばかりであれば政治の話はしない、というくらい現場に合わせ、3割ほどはアドリブを混ぜるようにしているそうです。毎回、その舞台が唯一無二のオンリーワンのサービスとなり、ますますファンが増えていくといういい循環を生み出しますね。

このように、ほんの3~5分の漫才やコントにすべてを賭けてブレイクしてきた芸人さん達の共通点はたくさんありますが、彼らがこんなにもすごい「本番力」を発揮できるのは、根底に「お客様をハッピーにしたい」という共通した気持ちがあるからではないでしょうか。これは私がずっと営業で大事にしてきたことと同じです。これからも、リスペクトしてやまない芸人さん達に、そのマインドを学ばせていただきたいと思っています。

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和田 裕美(わだ・ひろみ)
株式会社HIROWA代表取締役
外資系教育会社での営業時代、世界2位の成績に。2001年独立。多業種での営業組織づくりに携わる。

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(株式会社HIROWA代表取締役 和田 裕美)

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