働く女性が、辛い更年期症状を上手に乗り切る意外なコツとは
プレジデントオンライン / 2021年9月26日 8時15分
■卵巣が機能する期間は今も昔も約40年です
卵巣から分泌される女性ホルモンは、排卵や妊娠のサポートのほか、心身の健康にかかわる多様な役割を果たしています。しかし、卵巣が働く期間は約40年。これは今も昔も変わりません。
卵巣の機能が少しずつ低下して、生理が12カ月以上なく、永久に止まることを「閉経」といいます。そして、その前後5年ずつ、合計10年が「更年期」。この時期は女性ホルモンの分泌量が乱高下し、臓器や自律神経が影響を受けて心身の“なんとなく不調”が起こりやすくなるため、「ゆらぎ期」とも呼ばれます。
日本人女性の閉経の中央値は50.5歳ですので、一般的に45~55歳が更年期。平均寿命が50歳に満たなかった戦前は、閉経前に命を終える女性も少なくありませんでした。でも今は、日本人女性の平均寿命が85歳を超え、人生100年時代といわれるように。更年期の心身の不調や、閉経後の女性ホルモンの欠乏で起こる体の変化にどう対応するかが重要となっています。
また、閉経の年齢には個人差があり、更年期は閉経してみないと、いつ始まったのかわかりません。実際、40~45歳で閉経する人は普通にいて、その場合、35~40歳に更年期を迎えます。そのため30代後半に差しかかったら、女性ホルモンの分泌量が乱高下し始め、心身の不調が起こりうるという心づもりをしておくといいでしょう。
しかし現在は、40代で妊娠・出産を考える人もいます。40代は卵巣の機能が停止し、閉経を迎えるかもしれない時期。妊娠にはタイムリミットがあるのです。そうしたことを想定しつつ、人生設計を立てることが大切です。
■女性ホルモンの変化は生理周期にあらわれます
卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌量が減っていくと生理周期が短くなるほか、排卵を伴わない無排卵月経が起こります。
生理は25~28日に1回やってきますが、無排卵月経の場合、周期が長く、もしくは短くなって出血量の多い日がなくなります。こうした変化が起こり、生理の間隔が空いて12カ月こなくなる人もいれば、短期間に何度か生理がきて、パタッと止まる人も。ちなみに初潮の年齢は閉経の年齢に影響を与えません。また、閉経を早める原因として、喫煙、運動不足、ストレス、動物性脂肪が多すぎる食事、脂肪の少なすぎる食事などが挙げられます。
生理の出血量が減って周期がバラつくと、心配で婦人科を受診する人も多いですが、これは自然の変化。逆に出血量が増えたり、血の塊のようなものが出たりしたら受診が必要です。定期健診では子宮頸(けい)がんの検診のほか、子宮筋腫などを調べる経腟(けいちつ)超音波検査を受けましょう。
また、女性ホルモンのエストロゲンには血管や骨、脳の健康を保つ働きもあります。そのためエストロゲンが消失する閉経後は、高脂血症や骨粗しょう症、認知症などのリスクが高まります。更年期は、こうした体の中の見えない変化に目を向ける時期。健康診断でコレステロール値や骨密度などをチェックしつつ、運動、休養、栄養という健康の三要素を満たす生活を心がけてください。
更年期を迎えると「自分はもう年だ……」と思いがちですが、まだまだ人生の折り返し地点手前。心身の変化に気づき、早めに対応することが20年後の自分をつくり、年齢を重ねつつ自分の理想の生き方を実現することにつながります。(産婦人科医 高尾美穂先生)
■約60%の女性が更年期症状を感じる
「『更年期』と聞くと『更年期障害』をイメージし、『つらくて大変』と思いがち。しかし『更年期・更年期症状・更年期障害』は、すべて別ものです」と高尾先生。
「女性が100人いたら『更年期』は100人に訪れますが、『更年期症状=更年期に起こる心身の不調』を自覚する人は60人弱。『更年期障害=日常生活に支障をきたすほど更年期症状が重い状態』に悩む人は30人弱です。こうした現状を知ると、必要以上に更年期を恐れなくていいことがわかります」(高尾先生)
さらに、更年期とPMS(月経前症候群)の症状は似ているものがあり、PMSの症状が強い人は更年期の症状も強くなる傾向があるそう。
一方、精神科専門医の福永伴子先生は、日常のストレスも更年期症状の要因になるという。
「仕事や育児、人間関係の悩みといったストレスに、女性ホルモンの影響が加わって心身の不調が起こるケースがよく見られます。その場合、婦人科と心療内科の両方で治療を進めることもあります」(福永先生)
こうした現状を踏まえつつ、更年期に起こる症状について理解を深め、早めの対策を心がけよう。
■女性はガマンや無理を重ね心の不調に気づかないことも
心身の機能は、脳内で神経細胞同士が情報を伝達し合うことで保たれています。しかし、ストレスを感じると、セロトニンなどの神経伝達物質が減って情報の伝達に不具合が生じ、心身の不調を招きます。
ストレスによる心の不調は、落ち込みやイライラ、集中力の低下など個人差があり、症状が日によって変わることも。さらに女性の場合、生理前や更年期に女性ホルモンの分泌量が変動するなど、さまざまな要因が絡み合って心の不調が起こります。そのため「転んで骨折をしたから痛い」という明確な症状と異なり、本人さえ不調に気づいていないこともあるのです。
女性はマルチタスクを求められる場面が多く、つい無理をしがち。頑張りすぎることが当たり前の状態になり、自分では無理やガマンをしていると思っていない場合があります。さらに、無意識にストレスにふたをしてしまう人や、イヤだと感じた気持ちに気づかないフリをする人もいます。こうした人たちは、会社に行こうとすると、腹痛や頭痛、吐き気といった身体症状が出ることが多いようです。
現在は、コロナ禍によって生活が大きく変化し、「つらい」と感じるのは当たり前。思うように人と会って話せないストレスがあるほか、マスクをしていて表情が見えないため、会話中に「相手はどう思っているだろう?」など、無意識のうちに情報を得ようとして緊張が続きます。また、ウェブ会議も空気を読むのが難しいもの。さまざまな変化にストレスを感じて、どんどん積み重なっていくのです。
こうした状況でも女性は仕事や家族を優先し、自分のことが後回しになりがち。「私がいなければ」と考える女性も多いですが、あなたの心が壊れたら、職場の人たちも家族も巻き込まれます。まず自分を最優先に考え、大切にしましょう。
私のクリニックにも、ガマンし続けて、心が疲れきってから受診する人が多いですが、つらいときは、「つらい」と早めに言うことが重要です。さらに、普段の生活の中で心が整う生活習慣を実践し、自分をしっかりケアしていきましょう。(福永先生)
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産婦人科専門医
女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長、スポーツドクター、Gyne Yoga主宰。女性のライフステージ・ライフスタイルに応じた診療のほか、女性アスリートのメディカル・メンタルサポートを行う。
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精神科専門医
ともクリニック浜松町院長、日本精神神経学会認定専門医、日本医師会認定産業医。患者の悩みや不安を理解し、見た目や数値ではわからない心の不調を改善する診療を目指す。
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(産婦人科専門医 高尾 美穂、精神科専門医 福永 伴子 構成=籔 智子 イラスト=大山奈歩)
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