中学受験の7月模試で"合格可能性30%"…わが子を小6の夏から「4科目100点アップ」させる親の声かけ
プレジデントオンライン / 2022年7月18日 11時15分
■合否判定テスト「合格可能性30%」をどう評価するか
もうすぐ塾の1学期が終わり、受験生の6年生は、志望校の合格可能性がどのくらいかを見る合否判定テストを受ける。すべての単元学習が終わった後に行われる、この合否判定テストは、これまでのテストとは違い、問題文の文字数が一気に増えるなど、本番の入試に近い形の問題が出題される。そのため、その傾向に慣れていない子は、点を落としやすい。
中学受験の合格可能性は20〜80%の範囲内で評価される。最高数値は80%。どんなに優秀な成績をとっても、それ以上の数字は出ない。合格可能性80%と出たら、その時点では「ほぼ合格間違いなし」だが、実際そんな子はほとんどいない。
見込みありのゾーンとしては、合格可能性50〜80%だが、実際は50%以下の子も多い。それでも25%あればまだ十分に合格は狙える。
ところが、この事実を知らない親が多い。合格可能性30%という数字を見て、「もはや合格の見込みなしか……」と思い込み、即座に志望校を変えたり「こんなんじゃ合格できない。もっと勉強をさせなきゃ」と勉強量を増やしたりするケースが後を絶たない。悪くすると、間違った方向へとどんどん進み、“絶不調の沼”にハマってしまうことも珍しくない。
塾ではあまり教えないかもしれないが、合格可能性30%は、「よかったー! うちの子は合格できる見込みがあるんだな」と、本来であれば胸をなで下ろせる状態だ。だから、親は嘆くのではなく子供にこう声かけすべきだ。
「おっ! 7月の模試でここまでとれたのはすごいよ。1教科あたりあと3つ○の数を増やせば、ラクラク合格ラインに到達するよ!」
■点数を責めるよりも具体的な対策を伝えてあげる
模試が戻ってくると、真っ先に目が行ってしまうのが合格可能性のパーセンテージ。でも、25%以上が取れていれば、まずはヨシとして、見るべきものに目を向けてほしい。チェックすべきは、志望校ごとに必要とされるレベル問題の正答率だ。
男子校を例に出すと、開成・麻布といった最難関校を狙う場合は正答率30%以上の問題における子供の正答率がどの程度か。同じように本郷・芝といった難関校の場合は50%以上の問題の正答率、それより少し下の成城あたりは60%以上の問題は解けていないと合格が難しくなる。
正答率と照らし合わせながら、うちの子はどのタイプのどのレベルの問題なら解けていて、どの問題は解けていないかをチェックし、できていないところをどのようにしたらできるようになるか考えていく。現状を把握し、今後の対策に活かすために模試があるのだ。
例えば算数の速さの問題だったら、面積図で求める問題は理解できているようだが、ダイヤグラムで求める問題はまだ苦手のようだといった感じであらかじめ知っておくと、今後の対策がしやすくなる。
それとともに、どうやったらミスを減らせるかも考えていく。というのも、問題を解き直してみると気づくのだが、意外と問題を読み飛ばしていたり、計算ミスをしてしまったりといったうっかりミスで失点していることが多いからだ。ひどい場合だと、4教科の総合点の100点近くがうっかりミスということもある。
これほどもったいないことはない。一番防ぎやすいのは計算ミスだ。解答用紙の空きスペースの使い方を教えてあげるだけで激減する。親は、模試の合格判定や可能性に一喜一憂するのではなく、こうしたうっかりミスの有無を冷静にチェックしたい。それにより、一気に100点を挽回できる可能性もある。
問題を読み飛ばす子に多いのが、これまで暗記型の学習をしてきたがために「こういう問題のときはこう」と勝手に思い込んでしまうパターン。だが、入試を意識した模試では、塾のテキストに出てくるような問題をそのまま出すことはまずない。
「問題文で説明されている資料やデータなどをその場で読み解き、今ある知識とつなぎ合わせて考える」という解くためのやり方を知っていないと、得点に結びつきにくい。こうしたことを一つひとつ教えてあげる必要がある。「間違えた→その単元はわかっていない→その単元の問題を大量に繰り返させる」だけでは解決しないのだ。
よく子供のテストの結果を見て、「こんな点数では合格できなわよ。ちゃんとやらなきゃダメよ」と言う親がいる。子供を責めるだけで、抽象的なことしか言えない。これは一番いけないパターンだ。
わが子の成績を上げたいのなら、親は「ここはできるようになったね」「あとここさえできるようになれば合格に近づけるね!」といったように、合格の可能性を感じさせる言葉を渡し、かつ具体的な対策法を提示してあげること。具体的な対策を示してあげるには、親がわが子のできていること、できていないことをきちんと把握すること。愚痴や文句を言っている場合ではないのだ。
6年生にとって、この夏休みは受験の天王山といわれるほど重要な時期。それを迎える前の段階で、7月の合否判定テストで現状を正しく知り、今後の対策を親子で話し合うきっかけにしてほしい。ここできちんと分析と対策をしておくと、効果的な夏の学習ができる。
■2回連続点数が下がったら要注意! 5年生は勉強のやり方を見直す必要が
最後にひとつ注意点を挙げておく。先ほど模試の点数ばかりに目を向けないようにと伝えたが、2回続けて下がった場合はその原因をきちんと突き止めておく必要がある。
例えば5年生のこの時期に成績が下がり続けている場合、勉強のやり方に原因があることが多い。4年生の学習は基礎的な知識の習得が中心となるため、単に暗記だけでも点が取れてしまう。だが、5年生になると算数では割合や速さといった抽象的な内容の学習になり、「なぜそうなるのか?」きちんと概念理解ができていない子は途端にお手上げになってしまう。そこで、これまでの「暗記型の学習」から「納得を得た学習」へと勉強のやり方を変えていく必要がある。
一方、6年生で成績が下がり続けている場合は、気持ちの問題を抱えていることが多い。これまでに親から「なんでできないの?」「こんな勉強じゃ合格できないわよ!」とダメ出しをされ続け、「どうせ僕(私)なんか……」「今さら頑張っても無理だ」と勉強に対するモチベーションが著しく低下してしまった。それでも勉強をしなければいけないという義務感でストレスいっぱいになっている状態の子は、実はとても多い。
こうなってしまうと、立て直すのは非常に難しくなってしまうので、そうなる前の段階で「あれ? ウチの子、なんか元気がないな」と気づいたその日から、子供が前向きになれるような声かけを意識してほしい。それをくり返せば、ここまでひどい状態にはならない。万が一、そこまでひどい状態になってしまったら、家庭内で解消するのは難しい。親は一度離れて、プロの力を借りたほうが賢明だ。
7月の合否判定テストの結果を活かすも活かさないも、親次第。得点や合格可能性のパーセンテージといった数字だけに目を奪われず、その数字の裏に隠されている現状を読み取り、どのようにしたら今後改善していくかを考えていこう。
年末年始の受験直前は、どんな子供も必死に勉強する。受かる子は、ひと足先の夏にギアを上げる。7月の合否判定テストの結果を見て、親や本人が何に気づけるか。それこそが合否を分けるターニングポイントなのだ。
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中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。
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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)
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