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10kg減のダイエットに成功、うつ症状改善…日本初の「便秘外来」で次々驚くべき健康改善が起こるワケ

プレジデントオンライン / 2022年7月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mi-viri

自律神経研究の第一人者として知られる小林弘幸・順天堂大学医学部教授は日本初の「便秘外来」を開設し、1万人以上の患者を診てきた。腸内環境が改善するだけで、5~10kgのダイエットに成功する人がたくさんいるというのだが、いったいどういうことなのか──。(第3回/全3回)

※本稿は、小林弘幸『自律神経を整える』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■自律神経と腸の密接な関係

自律神経と腸は、互いにコントロールし合う、切っても切れない関係にあります。

自律神経が腸に与える影響については、皆さんも日常的に実感しているところではないでしょうか。

たとえば、大事な仕事のプレゼンテーションや習い事の発表会の前日などに、緊張やプレッシャーでお腹が痛くなったことはありませんか。また、ストレスフルな日々が続くことで、便秘や下痢をしたり、それらを交互に繰り返したりしたことはないでしょうか。

これらは、ストレスなどにより自律神経のバランスが崩れた結果、腸に悪い影響が現れてしまった典型的な現象です。

■腸の状態が自律神経に影響を及ぼす

しかし、ストレスが解消されて自律神経のバランスが整ってくると、腸の調子は自然とよくなっていきます。自律神経によって腸がコントロールされ、本来の働きを取り戻すからです。

逆に、腸の状態が自律神経に影響を与えてもいます。

不規則な生活が続いたり、食生活が乱れて便秘になったりするなどして、腸内環境が悪化すると、ドロドロの血液が全身を巡ることになります。栄養がきちんと吸収されず、余ったものが脂肪となって肥満を招いたり、老廃物が蓄積して全身がだるくなったり、肌が荒れたりします。

その結果、イライラしたり、神経質になったりして、交感神経が過剰に優位になり自律神経のバランスは大きく崩れます。

■自律神経と腸内環境の好循環を目指す

腸内環境がよい状態になれば、サラサラな血液が全身の細胞に行き渡って、低下していた副交感神経の働きが高まりますから、自律神経のバランスも自然と安定していきます。

つまり、自律神経が乱れると腸内環境は悪化し、腸内環境が悪いと自律神経のバランスも崩れていきます。そして、自律神経が整えば腸内環境が改善され、腸内環境が整えば自律神経のバランスもよくなっていくのです。

私たちは「自律神経が整う」「腸内環境がよい」という好循環を目指すべきであることはいうまでもありません。

ぜひ皆さんに覚えておいていただきたいのは、自律神経を整えるための方法はさまざまありますが、中でも、腸内環境を整えることは自律神経を整えるための土台づくりだということです。

腸内環境が整っていてこそ、乱れてしまった自律神経のバランスを迅速に整え直すことができるのです。

■「日光」と「腸」が交感神経のスイッチを入れる

私たちの体は、夜寝ている間は副交感神経が優位になっていて、明け方に近づくにつれて徐々に交感神経優位に切り替わっていきます。

その切り替えのきっかけ、スイッチとなるものが2つあります。

1つは、朝、日光を浴びること。これによって体内時計が「朝モード」に調整され、交感神経が活性化します。

そして、もう1つのきっかけは「腸」です。

朝目覚めたときに朝食をとると、胃腸に刺激が与えられ、腸が動き出して全身に血液が巡り始めます。すると交感神経が高まり、眠っていた間に優位になっていた副交感神経との切り替えが行われます。その後、腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発になると、今度は副交感神経が高まって、過剰に低下するのを抑えてくれます。

副交感神経と交感神経のいずれも過剰にならないように、腸が2つの神経をスムーズかつバランスよく切り替える“きっかけ”をつくっているのです。

腸は、交感神経と副交感神経とのバランスを整えるだけでなく、1日のサイクルの中での交感神経と副交感神経とのスムーズな切り替えにも一役買っているということです。

■腸は「血液の質」をつくる

ところで、そもそも「腸」は何をしている臓器なのでしょうか。

口から取り入れ、胃を通って小腸にたどり着いた食べ物は、小腸で本格的に消化され、栄養として吸収されます。そして、吸収されずに残った栄養分のかすが大腸に到達すると腸内細菌が働いて、便を形成して体外に排出します。

小林弘幸『自律神経を整える』(プレジデント社)
小林弘幸『自律神経を整える』(プレジデント社)

これが、皆さんがよくご存じの「腸の消化・吸収・排泄機能」の流れで、腸が「消化器官」である所以(ゆえん)です。

実はこの過程でもうひとつ、腸は「血液の質をつくる」という重要な働きをしています

小腸内壁の血管から吸収された栄養は、血流にのって肝臓に行き、そこから心臓を経て全身の細胞へ届けられます。私たちの体にとって重要なのは、いかに栄養たっぷりの血液が全身に届くようにできるかです。

そのカギを握るものこそ、「腸」なのです。

■自律神経を左右する「血液の質」

腸内環境が悪く腸の蠕動運動が鈍くなると、腸の中に不要な物が溜まり、血流も悪くなります。すると、栄養を吸収する力も衰えて、血液の質が悪くなります。

「質の悪い血液」とは、余分な糖質や脂質、インドール、アンモニア、硫化水素などの毒素を含んだ、ドロドロと汚れた血液を意味しています。こうなると、血液中の赤血球も変形して酸素の運搬もうまくいかず、全身の細胞が栄養不足・酸素不足に陥ってしまうのです。

腸内環境がよくなり、腸の蠕動運動がきちんと働くようになると、栄養をしっかり吸収し、栄養と酸素をたっぷり含んだ「質のよい血液」が全身を巡り始めます。質のよい血液が全身に流れることで、自律神経が整うのです。

■腸内環境が悪いと太る

腸内環境が悪くなり、ドロドロした質の悪い血液が全身を流れると、代謝も悪化して、脂質は「内臓脂肪」として蓄積され始めます。一方、腸内環境がよければ、吸収されずに余ってしまった栄養が脂肪として蓄積されることはありません。

同じだけ食べていても、太る人と太らない人の違いがあるのは、体質もありますが、単純に、腸内環境が悪い人は内臓脂肪が溜まって太りやすく、腸内環境のよい人は溜まらないからであることも多いのです。

私の「便秘外来」を訪れた患者さんの中には、腸内環境が改善しただけで、5~10kgのダイエットに成功した方がたくさんいます。

とくに、①それほど食べているつもりはないのに太ってしまう、②年齢を重ねて太りやすくなった、③ダイエットが失敗ばかり……という方は、ぜひ腸内環境に目を向けてみてください。

■肝臓が見た目の若々しさのもと

次に、私たちの見た目の若々しさや美しさは、どの臓器の影響を受けると思いますか。意外と知られていないかもしれませんが、その答えは「肝臓」です。

肝臓がきちんと機能していれば、肝臓から心臓を通って全身に行き渡る血液は、きれいで質のよいものになります。その結果、疲れにくい体になるだけでなく、肌や髪も美しくつややかになり、全身が生き生きしてくるのです。

そして、肝臓をよりよく機能させるためには、血液をつくる大本である腸内環境をしっかり整え、肝臓に質のよい血液を送ることが必須条件です。この点でもやはり、腸内環境の重要性がわかると思います。

なお、腸内環境が整っていないと、いくら高価なサプリメントをとっても、その有効成分はほとんど体内に吸収されず、また、高価な化粧品を使っても髪や肌の細胞には届かないということも覚えておいてください。

体重を落としたり、見た目の若々しさを維持したりしたいのであれば、まずは腸内環境を整えることです。

■腸内環境はメンタルヘルスの好不調も左右する

腸内環境の悪化は、血液の栄養不足とともに、酸素不足を招きます。血液中の酸素が不足すると、全身の細胞の生命力が失われて体力や免疫力も低下し、いざというときに体調が崩れたり、風邪をひきやすくなったりします。

また、脳が酸素不足になると、メンタル的にもマイナス思考になって、うつ症状が現れたり、イライラして怒りっぽくなったり、集中力が散漫になることもあります。

ここで考えたいのが、「腸」と「脳」の関係についてです。

「ストレスなどの影響で自律神経が乱れると、腸の調子が悪くなる」という話をしましたが、これは、脳のストレス状態が自律神経を通して腸に悪い影響を及ぼした結果だといえます。

■脳と腸は自律神経を介して影響し合っている

この「脳から腸へ」の影響は、以前からよく知られていました。

脳腸相関
写真=iStock.com/Pikovit44
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pikovit44

しかし近年になって、腸内環境の悪化による不快感や不安が自律神経を通して脳に伝わり、脳にも強いストレスを与えてしまって、気分や感情というメンタルヘルスに悪影響を及ぼすという「腸から脳へ」の影響もわかってきました。腸に病原菌が増えることで、脳で不安感が強くなるという報告もあります。

つまり、脳と腸は自律神経を介して互いに双方向に影響し合う関係にあるのです。これを「脳腸相関」といいます。

便秘や下痢などを繰り返し、腸内環境が悪化した人に、メンタルの不調が起こりやすい要因のひとつに、この「脳腸相関」があると考えられています。慢性的な便秘や下痢に悩まされている方で、心当たりのある人もいるのではないでしょうか。

■腸は「第2の脳」

私の「便秘外来」では、便秘や下痢を改善して腸内環境がよくなった結果、気持ちが明るくなっただけでなく、うつ症状まで改善したケースも少なくありません。

腸は「第2の脳」と呼ばれ、メンタルヘルスにも大きく関係しています。

コロナ禍の今こそ、メンタルヘルスを考えるうえで、「脳腸相関」は注目すべきテーマのひとつであると私は考えています。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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