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「どこかに正解の塾があるはず」は幻想である…次々と子どもの塾を変える親に元塾経営者が伝えたいこと

プレジデントオンライン / 2023年8月9日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/frederic Michel

我が子に最適な塾はどうすれば見つかるのか。教育家の小川大介さんは「『どこかに正解の塾があるはず』という考えは幻想にすぎない。転塾を繰り返す親は、子どもではなく、『成績が上がるかどうか』という結果だけをみている」という――。

※本稿は、小川大介『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■親の「あせり」は子どもを振り回す

さまざまな親御さんの悩みを聞きながら近年強く感じるのは、みなさんなぜだかとてもあせっている、ということです。

「否定しない」「与えすぎない」。頭ではわかっていても、「このままでいいのかな?」と不安になり、ついつい「それじゃダメだよ」と否定したり、教育によさそうなものをあれこれと与えすぎたりしてしまう傾向が、以前にも増して目立つように思うのです。

特に「中学受験」を考え出すころになると、親御さんのあせりは顕著になります。

ある親御さんは、お子さんを次から次へと転塾させ続けていました。

3年生まではA塾に通わせていたけれど、何だか伸び悩んでいるような気がするから、4年生に上がると同時にB塾へ転塾。B塾も思ったほどに子どもの成績を上げてくれないから、5年生からは学年上位の子が通っているC塾に転塾。ところが友だちの成績は伸びていくのに自分の子はクラスが下がってしまったので、「この塾は合っていない」と感じて夏休み前に今度はD塾へ。そこでもうまくいかず、「塾の形態を変えたほうがいいのかな」と今度は個別指導塾へ。6年生になったら、今度は家庭教師をつけてみよう。

■「どこかに正解の塾があるはず」という幻想

このように、子どもの学習環境をコロコロと変えたがる親御さんが意外に多いのです。

「次々に転塾させる」という行動の裏には、「どこかに『正解』の塾があるはずだ。その塾を探さなきゃ」という思考があるのでしょう。

しかしこう目まぐるしく塾を変えていては、子どもの成績は伸びません。学習内容が一貫しませんし、環境になじむための負担が大きいからです。

ただ残念なことに、このような親御さんには、お子さんの負担が伝わっていないことがほとんどです。

親が「子ども」ではなく、「結果」を見ているからです。

ほかの子が「いい結果」を出したのに、うちの子は出していない。あの子が得た「いい結果」がうちの子にもほしい。なぜうちの子は「いい結果」を得られないのか。自分と子ども以外の誰かのせいだ。塾が悪い。塾を変わろう――こんなふうに考えてしまうのです。

■「チャレンジする機会」を奪っている

このように、結果しか見えなくなっている親御さんは、あせるあまりに「理想の塾」という幻影を求めてさまよい続けることになってしまいます。

塾に限った話ではありません。今は雑誌や書籍、インターネットに「子育てにいいもの」の情報があふれています。そうした環境の中で「子育てには『正解』があるはずだ」と思い込まされ、自分だけその正解を知らないことで子どもに損をさせるのは嫌だという思考になってしまうのでしょう。それが親御さんたちのあせりを生んでいるのではないでしょうか。

親が持つ「あせり」の根っこにあるもののひとつは、「子どもには失敗をさせたくない」という考えです。

これらの発想は、「子どもからチャレンジの機会を奪う」という行動となって表れます。

子どものすることに対して、「それは危ないから、もっと安全なこっちにしなさい」「そんなことは得にならないからやめなさい」と、親の判断で「ゴー」や「ストップ」のサインを出す。すると、子どもが「失敗から学ぶ」機会が失われてしまいます。

■小さな失敗を重大なものとして受け止めてしまう

小さいころから親の先回りによって失敗を回避してきた子は、ちょっとした挫折ですぐにあきらめてしまう傾向があります。

ささいなミスひとつで「もうやりたくない」と言い出して、今まで好きだったこともやめてしまったりします。もう少し深刻な例になると、間違いが多く点数が悪かったテストを親に隠すようになります。

失敗を必要以上に重大なものとして受け止め、大きな痛みを感じてしまうのです。

一方、親が先回りすることなく、小さいころから「できたり、できなかったり」という経験をしてきた子は、点数の悪かったテストを隠したりはしません。結果をそのまま受け止め、乗り越えようとします。

この経験が積もり積もって、「困難を乗り越えるメンタルを持つ人」と「そうでない人」の違いとなって表れます。

■失敗から立て直す経験を積む

ただ、現状すぐにあきらめてしまう子でも、心配はいりません。

このようなお子さんには、「失敗は悪いことではない」と辛抱強く教えましょう。親である自分自身にもそう言い聞かせましょう。「もうやりたくない」という発言は、翻訳すれば「不安で、自信がない」ということです。「やめてもいいけど、嫌な気持ちで終わったらもったいないから、ちょっと一緒にやってみようよ」などと、気持ちに寄りそってあげましょう。

失敗してもそこから立て直す経験を積むことによって、「困難を乗り越えるメンタルを持つ人」へと育つことができます。

困難を乗り越えられるようになるかどうかは、結局、「転んだら立ち上がればいい」ということを知っているか知らないかの違いなのです。だからこそ、小さいうちから「転ぶ経験」を上手に積ませることが必要になります。失敗するのは悪いことではないのです。

居間に一人で座っているうつ病の子供
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■失敗からしか学べないこともある

失敗したときに一番やってはいけないことは、「○○ちゃんには難しかったね」と子どもが取り組んでいた物事を取り上げてしまうことです。

子どもの「できない状態」を直視できない親は、子どもが傷つくに違いないと考えて「取り上げる」という行動に出てしまうのです。

しかし、できないことは決して悪いことではありません。人間はみんな、できないことから学びを得るからです。

「失敗は成功のもと」と言うように、うまくいかなかった経験は、次のやり方を考えるチャンスです。うまくいかなかったことを子どもから取り上げて失敗をさせないようにすると、次にどうすればいいのか考える力が養われませんし、失敗して落ち込んだ気持ちをどう整えていくか、訓練する機会も失われてしまいます。

■失敗を経験しないで育つ方が損

小川大介『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)
小川大介『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)

もうひとつ大事なことは、失敗は「今の自分にはできないことができる人もいる」ことに気づくチャンスにもなるということです。ほかの人のよいところに気づく目は、生きるために必須です。まわりの人の魅力をたくさん知って、素直に「すごい」と感じることは、子どもの成長段階で大切なことです。

何をさせてもうまくできるけれど、他人への敬意がない人は、周囲の人との関係をうまく築けず、孤独になりがちですね。

失敗して傷つく経験を子どもになるべくさせたくない気持ちは、わからなくはありません。ですが実際のところ、「失敗すると損」なのではなくて、「失敗を経験しないで育つのが損」なのです。失敗から立て直す経験を積ませ、困難を乗り越えられるメンタルを育ててあげましょう。

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小川 大介(おがわ・だいすけ)
教育家・見守る子育て研究所所長
京都大学法学部を卒業後、中学受験個別塾を創設。コーチングと学習タイプ分析を融合した独自ノウハウで受験学習、幼児からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。執筆、講演、教育系企業への助言など幅広く活躍中。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。著書に、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』・『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』・『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)、『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)、『子どもの頭のよさを引き出す親の言い換え辞典』(青春出版社)など多数。 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」

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(教育家・見守る子育て研究所所長 小川 大介)

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