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IBMの元部長はなぜ保育士になったのか…豊かな老後を迎えるため現役時代に準備しておくべきこと

プレジデントオンライン / 2023年9月14日 15時15分

IBMの元部長が保育士になっていた(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Drazen Zigic

シニアでの転職では、どんなことに注意するべきなのか。人材コンサルタントの大塚寿さんは「IBMの元部長だった男性が、保育士になった例がある。『高学歴でキャリアもあるのに、こんな仕事につくのか』と考えるのではなく、セカンド・キャリアをポジティブに受け止め、好きな仕事をしたほうがいい」という――。

※本稿は、大塚寿『今からでも間に合う! 会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)の一部を再編集したものです。

■元判事や元NHKの居酒屋、電通出身者のラーメン店も

意外と言っては失礼かもしれませんけれど、シニア転職で、前職とはまったく違うセカンド・キャリアを選択する人がいます。

もう20年ほど前になりますが、岡本健さんが話題となり、本やテレビ番組でも紹介されました。還暦を期に判事を依願退官し、辻調理師学校に入学。翌年に居酒屋を開店した方です。

私自身、NHK出身者の居酒屋や、電通出身者のラーメン店、リクルートOGの割烹やバーに行ったことがありますし、私の息子はTBSのOBが経営するダーツバーに通っていました。

また、東大出身のリクルート元役員が蕎麦懐石の店を経営していたこともあります。

■保育士になったIBMの元部長

セカンド・キャリアで飲食店を開店するケースにはもう驚きませんが、さすがにIBMの元部長が保育士になっていたのには驚きました。

保育士の資格を取り、保育園で週3日勤務しているのです。

「じじせんせーい」と子どもたちが駆け寄ってきてくれることが、今のいちばんの喜びだそうですが、やはり「なぜ、元IBMの人が保育士に?」と思ってしまいます。

達観しているというのか、最初のキャリアで「やり切っている」のか。セカンド・キャリアでは自分がホントに好きなことや、喜びを実感できること、健康維持に役立つこと、生活のリズムをつくりやすいこと、といった目的で仕事を選んでいるのでしょう。

いま「マンション管理人」の仕事に、なかなかのキャリアをお持ちの方々が応募し、倍率も高くなっています。

また、タクシードライバー、警備員、新聞配達、入力作業といった仕事にも、日本のトップレベルの大学を出た人がセカンド・キャリアとして応募し、粛々と従事しています。

「人はそれぞれ。自分が良ければ、それでいい」と考え、世間体など気にせず、自分の好きな仕事をする、ということは、人として成熟していないとなかなかできないものです。

「高学歴でキャリアもあるのに、こんな仕事につくのか」と考えるのではなく、セカンド・キャリアをポジティブに受け止め、好きな仕事をするほうが、豊かな60代を迎えられるでしょう。

■人生を自由に自己決定できるのはシニアの特権

よく「ライスワーク(生きるために必要な仕事)」と「ライフワーク(人生をかけてやりたい仕事)」という言い方をしますが、これを二項対立として捉える必要はないと思います。

むしろ、両者の「積集合」といいますか、「ライスワーク」でもあり、「ライフワーク」でもあるような働き方が、60歳以降には可能になるように思います。

自分の人生を自由に自己決定できるのは、ある意味シニアゆえの特権かもしれません。

ただ、定年時にキャリアを急に決めるのは難しいので、55歳からの5年間で、じっくり計画するのがいいでしょう。

■「レッドネック」を恥じる必要はない

また、シニアになると「オブリゲーション(義務)」を意識する人もいるでしょう。

私は現在、法人営業コンサルタントとビジネス書作家との二足のわらじ生活ですが、もともとの出自は材木屋の11代目です。

チェーンソーや草刈り機くらいは自由に使いこなせないと……という思いもあって、自ら汗をかくようにしています。

家業を継ぐ決断、継がない決断。実家の田畑山林の管理をどうするのか。

そういったことを考えながら、草刈り機で実家の周りの草を刈り、エンジン付きバリカンで庭木の剪定(せんてい)をしている時は、やりがいもあります。

ですが、これらの仕事は外注したほうがよほど経済的だと思うこともあります。

「レッドネック」とは、野外で働き首の後ろが日焼けしている人を侮蔑する言葉です。

「レッドネック」を恥じる必要はない(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/PercyAlban
「レッドネック」を恥じる必要はない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/PercyAlban

私も草刈りによって首の後ろが日焼けしていますが、そんな自分を恥ずかしく思ったことは、一度もありません。

自らの意志でやっているからです。

60代でタクシードライバー、警備員、新聞配達、入力作業などに従事する人も、同じように考えているのではと推察しています。

■シニア女性におすすめしたい「士業」

現実問題として、60代女性の転職は、男性以上に選択肢が限定されてしまうのは事実です。

もちろん、年齢、性別なんて言っていられないほど人手不足の業界もあります。門戸は徐々に広がっているのは間違いありません。

シニア女性の転職活動では、資格を取り、「士業」につくことをおすすめします。

士業には定年がありません。もちろん、弁護士事務所や税理士事務所などに所属していれば、定年制度があるかも知れません。ただ、その場合でも定年が80歳くらいだったりするので、それほど気にする必要がありません。

■「80歳のおばあちゃん税理士」もいる

私が顧問税理士を探している時に、偶然ネットで見つけた、都内の自宅近くで一番大きな税理士事務所に、群馬の同じ町出身の「おばあちゃん税理士」がいたのです。

「80歳のおばあちゃん税理士」もいる(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/grinvalds
「80歳のおばあちゃん税理士」もいる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/grinvalds

しかも、後に私の母の実家に近い地域の出身で、母の従妹とは高校時代から親友ということが発覚。“世間は狭い”と驚きました。

最近、定年になったと聞きましたが、80歳か、それ以上だったはずです。

数年前に、私名義の河原の土地の一部を売却した際に、登記を担当していただいた司法書士は、もっと年上の「おばあちゃん司法書士」でした。80代前半だったと思います。

80代になっても現役バリバリで仕事ができるのは幸せなことだと痛感しました。

お二方とも、子育てのため、仕事をセーブしていた時期もあったそうです。

ただ、子供が独立してからは、まるで60代、70代が黄金期かのように、お仕事で活躍されたそうです。

80過ぎまで第一線で仕事ができたのは、「資格」の効用です。

■税理士、宅建は「食える資格」

「司法書士」は確実に「食える資格」ですが、合格難易度が高いため、誰にでもおすすめというわけではありません。

一方、「税理士」は、「公認会計士」と異なり、「一発合格」の必要がありません。

「科目合格」を重ね、数年がかりで合格してもいいので、コツコツ努力できる人なら合格のチャンスがあります。

「食える資格」の代表格である「宅建」もおすすめです。

他人の面倒を見るのが苦ではない、人とのコミュニケーションが得意な方には特にいいと思います。

■医療・介護は人手不足

ほか、建築士になる人もいます。

大塚寿『今からでも間に合う! 会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)
大塚寿『今からでも間に合う! 会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)

私がリクルートにいた時の同期に、バリバリ文系で経理に配属されていたのに、現在「一級建築士」として、還暦になっても現役で働いている女性がいます。

最初は「二級建築士」の資格を取ってインテリア関係の仕事をしていましたが、40代で「一級建築士」にキャリアアップしました。

その他、医療・介護業界はとにかく人手不足ですので、資格を取っておいても損はないと思います。80代まで働くのは難しいかもしれませんが、シニアで転職しても確実に食える仕事です。

このように、自分にもできそうな分野の食える資格を取るのは、シニアにこそおすすめできる方法なのです。

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大塚 寿(おおつか・ひさし)
営業・人材コンサルタント
1962年群馬県生まれ。リクルートを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。現在、オーダーメイド型企業研修、営業コンサルティングを展開するエマメイコーポレーション代表。著書に、『リクルート流 「最強の営業力」のすべて』『法人営業バイブル 明日から使える実践的ノウハウ』『50歳からは、「これ」しかやらない 1万人に聞いてわかった「会社人生」の上手な終わらせ方』(以上、PHP研究所)や、『40代を後悔しない50のリスト』(ダイヤモンド社)など多数。

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(営業・人材コンサルタント 大塚 寿)

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