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「深夜のラーメン」に罪悪感をもってはいけない…「70代でも老けない人」が実践している食生活の意外な事実

プレジデントオンライン / 2023年9月27日 20時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyonntra

健康的な食生活とはどのようなものか。脳科学者の瀧靖之さんは「生活全般において、『絶対に○○してはいけない』ということは、あまり考えないほうがいい。『ダメ』と言われればやりたくなるのが人間であり、そのたびに落ち込むことになる。ときには夜中にラーメンを食べても、それが習慣化しないことだけ守ればいい」という――。

※本稿は、瀧靖之『70代でも老けない人がしている 脳にいい習慣 「ほんの少し」でこんなに変わる!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■特定の食品だけで「脳にいい」「頭がよくなる」はない

「○○を食べると健康にいい」「○○を飲むと頭がよくなる」といった食品が、しばしばテレビ等で紹介されます。昔ながらの食材のこともあるし、海外から入ってきた目新しい野菜や果物等のこともある。あるいは、いわゆる「健康食品」も無数に存在します。

いずれも、健康に悪いことはないでしょう。食卓に付け加えるくらいであれば、いいと思います。しかし根本的に、特定の食品だけで「脳にいい」「頭がよくなる」ということはあり得ません。食事の栄養素と脳の働きの関係は、トータルで見ればけっして大きくないのです。

食べたものは小腸で分解・吸収されますが、そこには腸内細菌叢が大きくかかわっていて、むしろ最近は、バランスのよい品物の多い食事をすることこそが重要ということがわかっています。そのため、特定の栄養素ばかり食べればいいということではありません。

それよりも問題なのは、こういう情報に振り回されて、食生活が偏ってしまうことです。極端な例では、その食品だけで一食を済ませたり、あるいは「これを食べて(飲んで)いるから不摂生な生活をしても大丈夫」などと過信する場合もある。

どんな食品であれ、特定のものばかり食べ続けることは、脳というより身体によくありません。

偏食は、いくつかの病気のリスクを上げる可能性があると言われています。特に糖尿病など動脈硬化性の病気を発症すると、それが脳にも悪い方向に働き、認知症のリスクを上げることになります。

当たり前の話ですが、食事で重要なのは一にも二にもバランスです。あまり神経質に考える必要はありませんが、いろいろな食品をまんべんなく食べることを心がけたほうがいいでしょう。

あるいは夜食を控えるとか、三食とも抜かずに食べるとか、ドカ食いをしないといった常識的なルールも尊重したほうがいいと思います。

■過度な「糖質ダイエット」は、むしろ危険

例えば「糖質ダイエット」の是非についても、いろいろ取り沙汰されています。たしかに食事から糖質を少し減らすくらいなら、ダイエットにも健康にもいいでしょう。

しかし、一般に流布する「糖質ダイエット」には、米もパンもいっさい食べないといった極端な方法もあります。

これは明らかに、健康に悪いと考えられています。糖分は身体のエネルギー源です。それが不足すると、身体に過度な負担をかけるため、平均寿命を短くするとさえ言われています。

かといって、もちろん糖分の摂りすぎもよくありません。例えば脳を動かすためには、ブドウ糖が必須です。ではブドウ糖だけ摂ればいいかというと、けっしてそうではない。エネルギー源としてはプラスですが、血糖値を高くするというマイナスの作用もあるからです。

よく知られているとおり、糖分を多く摂ると糖尿病のリスクが高まると言われています。それは、糖を分解するインシュリンを出している膵臓に負担がかかるからです。

しかし、糖分が身体に与える影響はそれだけではありません。血糖値が高くなると血管の内側の細胞を壊し、血管の老化を一気に進めてしまうのです。

その結果、糖尿病性網膜症という失明をともなう合併症を引き起こしたり、抹梢の血管を壊死させたりしかねないのです。これらはまた、認知症のリスクも高めると言われています。つまり糖分は、摂らないのも身体に悪いのですが、摂りすぎも悪いわけです。

食の情報に左右されやすい今だからこそ、声を大にして訴えたいのですが、結局のところ、糖分を含め、食事で重要なのはバランスなのです。

どの食品がよい悪いという話ではなく、いろいろな食材を適度に食べること。もちろん過食も少食もよくありません。

ごはん
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

■主食はお米を選んだほうがベター

とはいえ、仕事の都合などで外食が多い方の場合、どうしても食事は偏りがちになります。「いつもバランスを考えた食事などできない」という方もいるでしょう。

外食はカロリーも糖分も高くなりがちです。これは仕方がありません。むしろ、「○キロカロリー以下に抑える」とか「米もパンも控える」などと神経質になると、せっかくの食事が美味しくなくなります。

デザートにケーキや果物も食べたいでしょう。甘い清涼飲料水を飲みたくなるときもあるでしょう。あまりストイックに構える必要はないと思います。

ただし、繰り返しになりますが、極端なのはよくありません。連日のように脂っこいものばかり食べたり、大量の砂糖が使われている菓子パンやジュースを好んで食べたり飲んだりするのは、さすがにちょっと控えるべきでしょう。

特に、糖分の多い食事で血糖値が一気に上がる生活が続けば、それだけで血管内の細胞がどんどん壊されていきます。主食として菓子パンを食べるくらいなら、血糖値の上がり方が比較的穏やかなご飯(お米)を選んだほうがいいと思います。

ついでに言えば、食後にある程度お腹が落ち着いたら、軽く運動することをおすすめします。血糖値を下げる、つまり糖尿病のリスクを下げる効果があるからです。

お店から職場まで早歩きで戻るとか、少し散歩するとか、エレベーターを使わずに階段を上るという程度でもいいでしょう。些細なことですが、こういう地道な工夫が大事なのです。

■子供の思春期のころまでの血流量は大人の2倍近く

いささか余談ながら、実は食事について、もっと気をつけるべきは大人よりも子どもです。「糖質ダイエット」は論外ですが、とにかく食べればいいというものでもありません。例えば毎朝、主食に菓子パンというような食生活は、やはり避けるべきでしょう。

脳の血流は、使う部分を高速道路のように太くして、使わない部分をどんどん壊していく性質があります。まして子どもの場合、思春期のころまで、その血流量は大人の2倍近くもあります。それにより脳をダイナミックに形成しているわけです。

当然、その過程ではエネルギーとして大量のブドウ糖を使います。ところが、肝心のエネルギー源が菓子パンのように血糖値を一気に上げて下げるものだと、効率が悪いのです。

あるいは、「ジャンクフード」と呼ばれる食品ばかり与えるのも同様に問題です。子どものころから偏食させたり、肥満にさせたりしてはいけない。これらは糖分の問題というより、海馬の萎縮につながると考えられています。

やはり大人と同様、子どもの食事もご飯を中心にしたほうがいい。親はどれほど忙しくても、それくらいのケアを欠いてはいけないと思います。

ジャンクフード
写真=iStock.com/Arijuhani
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Arijuhani

■過度の食事制限はストレスのもと

食事について、極端に走ることがどれほどよくないかという例を、1つご紹介したいと思います。

定年退職後、糖尿病と診断された方がいます。「これではいけない」とばかり、一念発起してその後の食事からいっさいの糖分を断ってしまったそうです。

その甲斐あって、糖尿病はかなり改善したとのこと。ところが、それに反比例するように、常にイライラして落ち着かなくなったそうです。ご家族によれば、「性格が変わってしまった」と思えるほど。これはご本人にとってもご家族にとっても辛いでしょう。

この原因は、おそらくストレスだと思います。あまりストイックなルールで自分を縛ると、どこかに“はけ口”を見つけたくなるものです。健康に徹底的に気をつけることが、かえって不健康な日々をもたらしてしまうわけです。

逆に、暴飲暴食に走る方もいます。身体に悪いことはわかっているのに、むしろそれが快感になってしまうのでしょう。これも、根本にあるのはストレスだと思います。

あるいは、極端に散財する“買い物依存”やドラッグに走るのも同様です。ストレスが大きくなるほど、そこから逃れようとして、より大きな快楽を求めるのです。

快楽は人間の本能が求めるものなので、そう簡単には消えません。そこで重要なのが、日常のストレスをいかに軽減するかということです。

これについては、それぞれにいろいろ工夫されていることと思いますが、基本は建設的で明るいほうに意識を向けることです。

本書でも述べていますが、例えば没頭できるような趣味を持つのもいいでしょう。仲間内でお酒を飲みながら語らうのもいいでしょう。

私自身は飲まないので、お酒のよし悪しはよくわからないのですが、やはりコミュニケーションはストレス軽減の原動力になり得ます。

もちろん、悪酔いして周囲に当たり散らすようでは逆効果。自己嫌悪に陥って、余計にストレスを増やすだけです。多少ネガティブな話も笑い飛ばせるような、明るい酒席にすることがポイントです。

■ときには夜中ラーメンもスイーツも楽しもう

とはいうものの、ストレスはけっしてゼロにはなりません。どうしてもイライラが収まらなかったり、気分が塞いだりすることもあるでしょう。

そんなとき、コンビニのスイーツを買いまくったり、夜中にラーメンを食べたり、お酒をたくさん飲んだり等々、暴飲暴食に走って一瞬だけスッキリすることもあると思います。

瀧靖之『70代でも老けない人がしている 脳にいい習慣 「ほんの少し」でこんなに変わる!』(三笠書房)
瀧靖之『70代でも老けない人がしている 脳にいい習慣 「ほんの少し」でこんなに変わる!』(三笠書房)

これも、「絶対にダメ」というわけではありません。たまにこういうことをして発散できるなら、すんなり容認したほうがいい。むしろ罪悪感を覚えたり、「自分はダメな人間だ」と自己嫌悪に陥ったりするほうが、よほどストレスを膨らませることになります。

脳は、たまたま夜中にラーメンを食べたからといって、急に悪影響が出るほど軟弱ではありません。

脳を含めて人間の身体には、「ホメオスタシス(恒常性)」という性質があります。多少のダメージなら、ある程度リカバーできるのです。

しかし、それが習慣化すると、リカバーが追いつかなくなって少しずつ脳を変えてしまうのです。だから肝心なのは、悪い食生活を習慣化しないこと。逆によい食生活は習慣化させること。この一点さえ守っていれば、あまり神経質に考える必要はないのです。

これは、食生活にかぎった話ではありません。

生活全般において、「絶対に○○してはいけない」ということは、あまり考えないほうがいい。「ダメ」と言われればやりたくなるのが人間であり、そのたびに落ち込むことになるからです。

そういう余計な“気苦労”は、まったく必要ありません。自分自身に対しても、寛容の精神を持つことが重要だと思います。

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瀧 靖之(たき・やすゆき)
東北大学教授
1970年生まれ。医師。医学博士。東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。読影や解析をした脳MRIは、これまで16万人分にのぼる。

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(東北大学教授 瀧 靖之)

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