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好きで始めたことでも嫌になったらやめていい…売れるチャンスをつかみかけた若手芸人が躊躇なく引退した理由

プレジデントオンライン / 2024年3月17日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/howtogoto

仕事がつらくなったときは、どうすればいいのか。3人組のYouTubeグループ「ニートと居候とたかさき」(チャンネル登録者数28万人)メンバーの南さんは「芸人として売れかけたとき、心身ともにつらくて解散を選んだ。好きで始めたことでも嫌になったらやめていい」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、ニートと居候とたかさき『嫌なこと全部逃げてみた アラサー男3人のがんばらない日常』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■芸人として売れかけている最中に解散を選んだ

ニート……野尻
居候……南
たかさき……たかさき

2020年7月、僕は「オドるキネマ」というコンビを組みました。

すぐに結果が出て、劇場のバトルライブで優勝したり、ネタ番組に出たり、『キングオブコント2021』や『M-1グランプリ2022』で準々決勝まで進出したり……なかなか順調に売れかけていたと思います。

でも、2023年1月に、「オドるキネマ」は解散しました。

一番の理由は、僕の体力が続かなかったからです。仕事が終わったら、へとへとで家にたどり着くので精一杯。まともに動くこともできず、そのまま眠りにつくような毎日でした。

もちろん、テレビにいっぱい出て売れている芸人に比べたら全然忙しくないです。ただ、毎日何本もライブがあるような生活は僕には耐えられませんでした。

ご飯を食べる体力もなかったし、精神的にもしんどかった。

ひどいときは、自分が今どこにいるのかも分かりませんでした。

地方で仕事があったとき、ホテルで目が覚めると自分がどこにいるのか分からないのです。地図のアプリを開いて、やっと「今ここにいるのか」と理解するようなことが頻繁にありました。

コロナ禍も影響していると思います。

コロナに感染した芸人がいると、ほかのコンビが「代演」としてライブに出演します。僕と相方は幸か不幸か感染しなかったので、自分たちの出番に加えて、代演・代演・代演……。

休む暇がなくて、こんなこと言ったらダメですけど「コロナになられへんかな」とずっと思っていました。

そのくらい休みたかったけど、休めないくらい忙しかったのです。

■しんどい状態でダラダラ続けるほうが思考停止

「これ以上売れたらヤバい」。そう思って、僕から解散を切り出しました。

解散が決まったとき、世界に色が戻ってきました。

「オドるキネマ」として活動したのは、2年と少し。積み上げてきたものを手放すことに、なんのためらいもありませんでした。

今でこそ「ちょっともったいなかったな」と思うけど、当時はしんどすぎて無理でした。今でも、あのときの選択は間違っていなかったと思っています。

解散すると発表したとき、いろんな意見をもらいました。

僕と親しくない人からは、「意味分からん」とか「奇行や」みたいなことも言われました。でも僕のことを知ってくれている人は、「この状況で辞めるんやったら、本当にそういう人間なんやな」と分かってくれていたと思います。

「ファンがかわいそう」とか「相方に申し訳なくないのか」とか言う人もいましたけど、僕からしたらそっちの意見のほうが意味分かりません。こんなにしんどい状態をダラダラ続けるって、逆に「頭を使ってない」ってことではないでしょうか。

■「つらい」と感じている自分の気持ちを大事にする

一番大事なのは、自分の気持ちだと思います。しんどかったら、誰かに遠慮とかせずに手放していいのです。

まぁ、僕は人一倍握力がないんですけどね。自分なりに大事に持ってたつもりですけど、持ち続けることはできませんでした。

「オドるキネマ」のときは、早く「ネタをやらんでええ場所に行きたい」と思っていました。ネタを考えたり毎日ライブに出たりする生活ではなく、その場でしゃべるだけでいいバラエティーのひな壇に早く行きたい。

なんも準備しやんでも、ぱっと行ってぱっとしゃべって帰るような芸人になる……これが僕の理想でした。でも、そんな都合よくはいかないです。

■好きで始めたことも嫌になったらやめていい

好きで始めたのに、上手くいかないなんてよくあることです。恋愛と一緒です。好きで付き合い始めたのに、好きじゃなくなって別れるなんてよくあることじゃないですか。まぁ、僕の場合「お笑いが好き」だったのかはよく分からないですけど……。

初心は、忘れてもいいのです。

ただ、「辞めてよかった」みたいなことを散々言ってますけど、実はまたコンビを組んで芸人をやりたい気持ちがあります。

好きで始めたことを、嫌になってやめたっていい。それと同じで、嫌になってやめたことをまた始めたっていいと思います。

幸いなことに、芸人ってそういうことがやりやすい職業です。僕のやり方がベストではないけど、またやれる可能性があるのはありがたいなと思います。

お笑いが僕に一番向いていることかどうかは分かりません。何が得意なのかも分かりません。

けど、また芸人に戻る日がやってくる可能性は多分にあります。

■お金がもらえなかったとしても後悔しない

僕は、むっちゃお金がないときでも「お金のために」働いたことはありません。

むしろ、たかさきとコンビを組んでいた5年間は、チケットノルマでマイナスになることもありました。

貯金箱と小銭のイメージ
写真=iStock.com/Altayb
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Altayb

お金がもらえなかったとしても、別に後悔はしません。それでいいと思っています。

そもそも僕は、給与明細にあまり興味がありません。「いくら稼いだんだろう」とか、気になったこともありません。

吉本を辞めてからは、自分で領収書、始末書……えーっと、請求書や。請求書を書かなあかんってことになって、そこで初めて1年やっていたレギュラー仕事のギャラを知りました。

お金のためにやっていたわけではないとはいえ、「お笑いが楽しいから無給でもいい」みたいな崇高な思いでやっていたわけではありません。

使命感で芸人をやっていた感じで、楽しいとかはあんまりなかったです。

目の前にあるから「やらなあかんもん」だと思って、やっていました。

今はその使命感からは解放されているんですけど、また「使命を感じたい」とも思っています。また、しんどい思いをしたい。

何かの納期に追われるとか、ネタをつくらないといけないとか……そうなったらなったで、めっちゃ嫌なんでしょうけどね。

でもそういう苦しみもまた、やりがいなんやと思います。ないならないで、ちょっとしんどい。縛りは欲しいっちゃ欲しい。俳句や短歌も、「五・七・五」みたいな縛りがあるからいいんですよね。なんもなかったら楽しくないですから。

いざやり始めたら、自由律がいいってなるんですけどね。

■ファンから“お布施”をもらってもありがたみは感じない

芸人辞めて、じゃあどうやって稼いでるんだって思うでしょう。基本的には、ファンの方から「PayPay」等で直収入をいただいています。たかさきからは「税金気を付けろよ」と言われました。

ニートと居候とたかさき『嫌なこと全部逃げてみた アラサー男3人のがんばらない日常』(KADOKAWA)
ニートと居候とたかさき『嫌なこと全部逃げてみた アラサー男3人のがんばらない日常』(KADOKAWA)

正直に申し上げますと「ありがたい」という気持ちはそこまでありません。たぶん、僕にお金をくださる皆さんは、僕に対して何かをしたいんです。皆さんは、僕にプレゼントをあげたい。じゃあ僕は何をもらったら一番嬉しいのか? それはお金なので、お金をくださっているだけ。僕にお金をあげることで満足するなら、もちろんもらいます。強要はまったくしていません。

まぁ、神社みたいなもんです。神様はそんなこと求めてないけど、皆さんお賽銭を納めるでしょう。そういうことです。

だから、僕にお金を渡すことで皆さんの生活が困窮するとかは意味分かりません。見返りを求められるのも、面倒くさいです。そんなんするなら、いらないです。

僕自身、僕みたいなヤツがおったら「そら、なんかしたくなるだろう」と思います。お金をもらうために何かを意識してやっているわけではまったくなく、結果的にこうなってしまっているのです。

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ニートと居候とたかさき YouTuber
元芸人で現クリエイターのたかさき、たかさきと高校の同級生でニートの野尻、解散したコンビの相方の家で居候をする芸人(仮)の南、3人のルームシェア生活を毎日配信する。

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(YouTuber ニートと居候とたかさき)

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