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日本の男が「気持ち悪い」と思う男に女性が「反則級にカワイイ」と悶絶…韓流"ヒョプ様"で稼ぐTV局のニンマリ

プレジデントオンライン / 2024年3月18日 18時15分

画像=TBSテレビ 火曜ドラマ「Eye Love You」の公式サイトより

そろそろ最終回が近づいてきた2024年冬の人気恋愛ドラマ。代表的な2作品に関する視聴率やSNSを分析した次世代メディア研究代表の鈴木祐司さんは「最も特徴的だったのは、従来の日本ドラマになかった韓流要素への視聴者の反応。女性は悶絶し、男性は拒んだ。また、テレビ局は放送時の視聴率だけでなく、その後のネット配信でのマネタイズを重視し、新たなビジネスへと進化させるために模索している」という――。

2024年冬ドラマは最終盤。いくつかの作品はすでに最終回を終え、“恋愛ドラマ”対決となったフジ月9「君が心をくれたから」とTBS火10「Eye Love You」も間もなく終了する。両者とも視聴率は似ているが、細部をみると大きく異なる。今、テレビ局はネット配信でのマネタイズを重視している。ところが特定層の視聴率を分析すると、そこでの手法に違いが生じ始めており、さらに新ビジネス開拓の余地が生まれてきていることがわかる。

画像=フジテレビ「君が心をくれたから」公式サイトより
画像=フジテレビ「君が心をくれたから」公式サイトより

■両ドラマの支持層

永野芽郁主演「君ここ」は、長崎を舞台に“過酷な奇跡”が引き起こすファンタジーラブストーリー。対する「Eye Love You」もファンタジーを前提にした恋愛ドラマだ。心の声が聞こえる“テレパス”を持つ役柄の二階堂ふみが、超ストレートな年下韓国人・チェ・ジョンヒョプと恋に落ちる。

両ドラマの見られ方の差を、特定層の視聴率まで割り出すスイッチメディア「TVAL」のデータを比較しながら確認してみよう。

【図表】恋愛2ドラマの特定層別視聴率
筆者作成

「君ここ」(ピンク線)は高校生から20代の恋を描いているためか、T~1層(男女13~34歳)で上回った。また高校生男女や、男子大学生も同様だった。中には2割以上も率が高くなった層もあり、純愛物語がどの層を惹きつけるかよくわかる。

ところが「Eye Love You」(青線)が逆転した層もある。女性では2層(35~49歳)で約2割上。また若年層でも女子大生は「Eye Love You」に軍配を上げた。単なる純愛ではなく、日韓の文化差や仕事と恋愛の関係などが垣間見え、大人が見る恋愛ドラマとなっていたかもしれない。

ここで1つ、押さえておきたい層がある。3~4層(男女50歳以上)で「君ここ」が上回った点だ。特に75歳以上に至っては、1.5倍も差がついた。これは「君ここ」が好まれたというより、「Eye Love You」が敬遠された側面があったのかもしれない。

■視聴率推移から見えるもの

両ドラマは共にファンタジーと恋愛を扱いながら、視聴率の推移をみると大きな差がある。多くの連続ドラマに共通するように、「Eye Love You」は緩やかに数字を落としている。「君ここ」は、序盤に急激に数字が下がり、4話までに2割以上も視聴者がいなくなってしまった。

【図表】恋愛2ドラマの視聴率推移①
スイッチメディア「TVAL」データから筆者作成

両者の差は、同じようなファンタジーでも、ドラマの設定やストーリーの大胆さによるものが大きかった。そのあたりの事情は、SNSの投稿にも明確に表れている。「君ここ」はこんな感じだ。

「暗い・つらい・救いがない」
「まじで内容しんどすぎるよ」
「主人公が悲しい展開になるの今は無理」

かつてただ一人心を通わせた高校時代の先輩・太陽(山田裕貴)と再会した雨(永野芽郁)。ところが太陽が交通事故に遭い、自分の五感と引き換えに命を救うことを決断し、味覚や触覚などを一つずつ失いながら二人の恋愛関係を深化させるという物語だ。

「設定に無理があるよなあ」
「ファンタジー過ぎて、どうも集中できない」
「見なきゃ良かった過ぎる。私はこのつらさについていけない」

一方の「Eye Love You」は、「個人全体」のデータは緩やかに右肩下がりとなっているが、「特定層」では途中から急伸している。例えばF2(女性35~49歳)は、初回や2話は3.5%ほどだったが、4話以降で4%を大きく上回る回も出てくる。鍵を握ったのは、民放GP帯連ドラ史上初のヒロインを演じたテオ役のチェ・ジョンヒョプだ。

「ちょこちょこ韓流を見るワタシとしてはハマり出したー!」
「チックショー‼ ユンくん可愛すぎかよ!!!」
「私は韓流苦手なんだけど、eye love youは面白い」

ドラマの中でチェ・ジョンヒョプはヒロインの二階堂ふみに対して、臆することなく「そこのキョロキョロしてるかわいい人ー!」 「きみがいっちばんかわいいですよ」と話しかける。従来の日本の恋愛ドラマでは聞かれない甘いセリフのオンパレードが、F2中心にある種の女性たちのハートを鷲づかみにしたようだ。

■TVerとSVODの利用者でも差

この韓流要素は、「TVer(※1)を頻繁に使う人」と「SVOD(※2)の毎日利用者」との間で、視聴率推移に大きな差を生じさせた。「君ここ」はTVer利用者の視聴率がかなり高いが、逆にSVOD毎日利用者は低くなった。

※広告掲載型の無料動画配信サービス:他にYouTube、ABEMA(今回分析のデータはTVerのみが対象)
※2定額制動画配信サービス:他にNetflix、Hulu、DAZN

【図表】恋愛2ドラマの視聴率推移②
スイッチメディア「TVAL」データから筆者作成

グラフのデータはリアルタイムでドラマを見る人の多寡を示す。つまりTVerの見逃しで見ようと思えば見られるのに、あえて一刻も早く見られる放送に来ている人がかなりいたということだ。ところがSVODを毎日見るような、例えば海外ドラマや韓流ドラマも見る機会の多い人は、残念ながら「君ここ」には食指があまり動かなかったようだ。

逆に「Eye Love You」では、TVerの人は初回で低かったが、その後急伸した。同時にSVODの人は、「君ここ」より高い数字で推移した。やはり韓流に反応してきた人が、チェ・ジョンヒョプに見事に刺激されたようだ。さらに同ドラマにより韓流に目覚め、SVODの利用を始める人が一段と増えそうだ。

「韓流恋愛ものとか絶対見ない風吹かせてたのに」
「(ドラマ後)私が動画配信サービス漬けになっているのは間違いない」

ドラマを得意とするTBSは、多くのSVODサービスでドラマを配信し、その権利料を最も得ているテレビ局だ。つまり今回のドラマでもSVOD利用者を増やせば、結果的に収入増が期待できる。二階堂ふみ×チェ・ジョンヒョプという挑戦は、目的を一定程度果たしていると言えよう。

一方「君ここ」も捨てたもんじゃない。過激な設定で序盤にある程度視聴者を失ったが、中盤からは一定数を保っている。

「序盤は本当に重かったけど、ここに来てするするっとそれぞれの物語が交差しはじめて脱落しなくて良かった」
「脱落しそうになってるけど最後どんでん返しがあるのかなって思って一応観る」

視聴率が安定してきただけでなく、フジテレビのビジネスにも貢献し始めている。同局は1~3話を放送中はTVerでずっと見られるようにしている。その影響で初回は400万再生超えと、絶好調となった。序盤を見直して、ドラマにハマった人が一定数いるために、中盤以降の視聴率も安定した可能性がある。

さらに同局が運営するSVODサービスのFODも順調だ。SVOD毎日利用者の視聴率が低いが、これはあくまでリアルタイムで見る人の数。逆に言えばFODに加入して見始めた人が一定数出現しており、フジの狙い通りになっている可能性がある。

■男女差

オンラインで映画を見る人の視聴率でも、男女差が注目に値する。

【図表】恋愛2ドラマの視聴率推移③
スイッチメディア「TVAL」データから筆者作成

両番組ともに、ネットで映画を見るF2(女性35~49歳)は、1~2回をあまり見ていなかったが、3~4話で急伸し、中盤以降も堅調に推移している。一方M2(男性35~49歳)の視聴率は右肩下がりとなった。

「君ここ」が男女でそこまでの差ができなかったので、どうやら男性陣の中にはチェ・ジョンヒョプの存在を快く思っていない人が少なくないようだ。

「生理的に合わない、気持ち悪い行動ムリ」
「こんな男性いたら普通に怖い」

「チェ・ジョンヒョプに沼る」「反則級のかわいさ」と悶絶している女性陣とは、受け止め方に大きな差が生じたようだ。実は同ドラマの影響で、韓国語教室に通う女性が急増したという。ある意味“ヒョプ様”現象“が起きたと言えるが、もしTBSが、そんな彼が利用する女性の名前を囁き、生成AIを駆使して問いかけに応えるといったアプリをドラマに合わせて世に出していれば、月額500~1000円を支払うF1~2層(女性20~49歳)が万単位で出現したのではないだろうか。

TBSがそこまでやったとは聞いていない。ただし今後はこうした放送番組の波及効果を予測して、新ビジネスを展開する局が出てくるだろう。ドラマの中でも、恋愛ドラマは特に視聴者の感情が動く分野だ。もはやリアルタイムの視聴率ではなく、放送後にどれだけの人々が動き、新たな収入につながるのか、コンテンツ業からサービス業の色彩を強めていくのではないだろうか。

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鈴木 祐司(すずき・ゆうじ)
次世代メディア研究所代表 メディアアナリスト
愛知県西尾市出身。1982年、東京大学文学部卒業後にNHK入局。番組制作現場にてドキュメンタリーの制作に従事した後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。デジタル化が進む中、業務は大別して3つ。1つはコンサル業務:テレビ局・ネット企業・調査会社等への助言や情報提供など。2つ目はセミナー業務:次世代のメディア状況に関し、テレビ局・代理店・ネット企業・政治家・官僚・調査会社などのキーマンによるプレゼンと議論の場を提供。3つ目は執筆と講演:業界紙・ネット記事などへの寄稿と、各種講演業務。

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(次世代メディア研究所代表 メディアアナリスト 鈴木 祐司)

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