「勇気なくして栄光なし」-堀江翔太
プレジデントオンライン / 2013年2月1日 11時0分
ほりえ・しょうた 1986年、大阪府生まれ。小学5年生のときに吹田ラグビースクールでラグビーを始める。大阪府立島本高校卒。帝京大学卒業後、三洋電機入社。NZのカンタベリーアカデミーにラグビー留学。2008年より三洋電機ワイルドナイツに所属(2011年にパナソニックワイルドナイツに名称変更)。新天地となる「スーパーラグビー・クラブリーグ」は2月中旬に新シーズンが開幕する。
■堀江翔太(ラグビー日本代表フッカー)
チャレンジングなラグビー人生を歩む。ついに夢が実現した。パナソニックのフッカー、堀江翔太が、南半球3カ国(豪州、南アフリカ、ニュージーランド=NZ)のスーパーラグビー・クラブリーグ「メルボルン・レベルズ」(豪州)に移籍する。
同僚のSH(スクラムハーフ)田中史朗は「ハイランダーズ」(NZ)、東芝のフランカー、マイケル・リーチは「チーフス」(NZ)へ。日本代表の実力上昇を象徴するかのように、日本から初めて、それも一挙に3人が世界最高峰のスーパーラグビーに挑戦することになった。
堀江は27歳。日本代表のフッカーはくりくりっとしたドングリ眼を見開く。
「夢のステージに入ると何か変わると思っていたけれど、特に意識は変わりませんね。いつも通り、不安いっぱいで海外に行って、また一から頑張っていくような感じです。勇気を出して、そういう世界に一歩一歩、踏み出していきたい」
今や日本代表にはなくてはならない存在となった。一昨年のワールドカップ(W杯)NZ大会の3試合を含め、テストマッチ(国代表戦)出場を意味するキャップ数は「19」となった。2年後のW杯イングランド大会、さらには6年後のW杯日本大会での日本代表の躍進はこのフッカーの成長にかかっている。
「勇気なくして栄光なし」がモットーである。大阪・島本高、帝京大の時はそう目立った選手ではなかったけれど、大学卒業後のNZへの「ラグビー留学」が飛躍の契機となった。ナンバー8からフッカーに転向し、帰国後、三洋電機(現・パナソニック)で活躍する。09年のカナダ戦で初キャップを獲得。短期のNZ挑戦を重ねながら、プロ選手としてプレーしてきた。
現地のトップチームの試合になかなか出してもらえないこともあった。フッカーはスクラムをリードし、ラインアウトでボールを投じる。さらに走り回って、密集戦の軸とならなければならない。
「いつも、ほかの選手より、“上にいこう”という気持ちでやってきた。マイナスの経験もいずれプラスになる。試合を見て、NZのラグビーではフッカーがどう動いたら使ってもらえるのか、ずっと研究していました」
この向上心、忍耐力がチャンスにつながった。決してくさらず、迷うことなく、コツコツと精進を重ねてきた。
「やはり勇気がなければ生きていけません。一歩踏み出さなければ、栄光にたどりつけないのです。違う文化とか、違う指導とか、違うラグビーとか、まずはやってみて、なんでも吸収してきました」
パナソニックは1月下旬、トップリーグのプレーオフ準決勝で東芝に敗れた。これが堀江にとって今季の国内戦最後の試合となった。メルボルンには新妻と一緒にわたる。からだのケアのため、使い慣れた高級マットレスを持参する。
180センチメートル、104キログラムスーパーラグビーの選手と比べると、まだ体格、筋力では見劣りする。だがスーパーラグビーの試合でもまれることで、体の強さだけでなく、球際の厳しさや技術、精神力が向上するだろう。
「向こうでも身近な目標を一個一個クリアしていきたい。まずは試合に出る。監督に使いたいと思われるような選手になり、レギュラーになる。もちろん勝利に貢献したい」
いざ真夏の豪州へ。勇気なくして栄光なし。堀江の挑戦がつづく。
(ノンフィクションライター 松瀬 学 井田新輔=撮影)
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