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創業50年の老舗学習塾が「宇宙飛行士」スクールを開設したわけ〜日本人の子どもの3人に1人が、なりたい職業がない

集英社オンライン / 2022年6月1日 14時1分

2022年4月に開校した、宇宙飛行士、医療関係者、起業家を目指すための学びが得られる小学生のためのキャリア教育オンラインスクール「DreamDriven(ドリームドリブン、以下ドリドリ)」。このドリドリを開発・運営している株式会社ミライメイクは、創業50年になる学習塾だ。なぜ老舗の学習塾がキャリア教育に乗り出したのか、代表の鹿嶌將博さんに話を聞いた。そこには「子どもの学力を伸ばしたい」と願う全ての保護者が知っておくべき理由が隠されていた。

まずは中学受験、で良いのだろうか…

私自身は父親が運営していた学習塾で学び、中学受験をして神奈川県にある私立の中高一貫校に進学。その後、首都圏の大学を卒業しましたが、自分が父親の後を継いで指導する側に立った時に、自身の学びのキャリアを振り返り、「本当にこれで良かったのか」「皆がこのパターンでいいのだろうか」というような違和感や疑問を持ちました。



特に小学校4年生ぐらいからスタートする中学受験は、目的と手法が逆になりがちです。

「将来になりたいものがあるから手法のひとつとして私立中学校へ進学をする。そのために塾を選ぶ」というのが本筋だと思うのですが、昨今は「とにかく良い私立中学校へまず行こう。大人になって何をしたいかは、その後ゆっくり考えればいい」というような風潮がある。そこに非常に課題意識を覚えました。

今の時代、終身雇用が主流ではないですし、入社した当時からセカンドキャリアを考えるような社会になってきています。皆でお手々つないで新卒一括採用のフォーマットに乗るというような時代でもありません。

だとすると、やはり将来の設計図から逆算して、学びのキャリアはあるべきなのかと思います。まずは親世代の価値観から脱却しないと大変なことになるなということを強く感じています。

なりたい職業がない日本の子どもたち

このような社会に移行していく中で、まず大切にしなければと思ったのが、「何で勉強するの?」という子どもたちからの質問です。

親や先生であれば、一度や二度はこの質問を投げかけられた経験があるのではないでしょうか。ちょっと考えてから「知らないことを知るって素晴らしいことじゃないか」とか、「将来の自分のためだよ」とか、「とにかく頑張れ!」と答えたかたもいるかもしれません。

ただこうした日本人の答えかたには問題があると思わざるを得ません。学校外で勉強している時間が、世界平均1.8時間に対し、日本の子どもたちは世界最低レベルの1.1時間。世界の6割程度しかないことが、そのことを示しています。

この原因を、我々はキャリア教育の不足にあると考えました。というのも「なりたい職業がない子たちの割合」が日本は突出して高く、約3人に1人が夢を持っていないというのは、世界平均の5倍の水準だからです。

日本人は謙虚で夢を堂々と語ったりしないという文化があるとはいえ、やはりちょっと異常値だと思います。夢がないと学ぶ意欲も湧きませんし、学ぶ意欲が湧いていないのに受験だけは激化していく。結果、子どもたちはやらされて勉強するという形になってしまって疲弊している状況です。

ユニセフが出している精神的幸福度のデータによると、日本は38カ国中37位です。また内閣府は「日本の若者たちの自己肯定感が世界最低水準にある」ということを、2019年に認めてしまっています。教育の問題を非常に多く抱えているのが、今の日本なのです。

子どもを机に向かわせる方法

これらの問題を解決するためにも、キャリア教育を充実させることが重要だと考えました。

キャリア教育の先進国だといわれるアメリカでは、キャリア教育の目的を「学力向上」と「コミュニティを支える人材の育成」の2つだと明文化しています。

日本の場合、キャリア教育というと、職業の理解という意味での「コミュニティを支える人材の育成」だと考えられがちですが、アメリカではこれに加え、「学力向上」につながると捉えている。

実際に世界11カ国で実施された調査で、「なりたい職業がないと答えた子に対して、なりたい職業があると答えた子の毎日の勉強時間は30分多かった」という結果が出ています。

これはなぜかと言うと非常に簡単です。将来なりたい姿があったり、社会に出てワクワクできる教育を受けたりすると、机に向かう時間が増えるからです。

なぜ日本は勉強時間が少ないのか。それは理想とする未来がない、将来にワクワクできない、それゆえに机に向かう意欲が湧かないから。今、本当にモチベーションの悪循環が起きていると思っています。

仕事って楽しくなさそう?

私たちは、この不足するキャリア教育をオンラインスクールで提供しようと思って開発をしてきました。週に1回75分、最先端のキャリア探求学習を自宅で受講できるというのが「ドリームドリブン」です。

オリジナルキャラクターと一緒にゲーム感覚で学んでいく(ミライメイク提供)

今は、宇宙飛行士、医療、起業家という3つのテーマを通じて、主体性を引き出すための“参加型オンライン”形式でアクティブラーニングな授業を行っています。今後は法律家やゲームクリエイターなど、他の職業も追加していく予定です。

前述の約3人に1人の子どもが夢を持っていないということにもつながりますが、実は日本の中学生は大人になることに対してネガティブで、できれば大人になりたくないと思っているというデータもあります。「大人って大変そう」「いつも疲れている」「仕事って楽しくなさそう」と思ってしまっているのです。

でもこれは、疲れている大人しか知らないだけで、かっこよく現場で働いている姿をもっと見せることで改善できるのではないかな、と考えています。

ドリドリのコンセプトは「憧れ」。かっこいい大人を知り、未来にワクワクすることで、子どもが自分の“なりたい姿”を見つけ、必要な知識や学びを自ら探究していけるようなプログラムになっています。

レールを敷かず、一緒に道をつくる

学習塾を長く運営してきた中で、日本の学校で成績が良い子、学力が高いとされている子の多くは、未来のことを考えなくても、素直に勉強できてしまう子が多いと言えます。

「テスト前だから勉強しなさい」「宿題やったの?」と言われて疑問を感じることなく素直に従える子が、学校のテストで良い点数を取ってくる。でも、良い成績をとっていたから、大人になって活躍しているか、生き生きとしているかどうかというと、全くそうではありません。

これまでの経験から深掘ってみると、何かのきっかけで自分の“好き”を見つけて専門性を身につけようと頑張っているような子が、社会で活躍しています。特にこれからの時代、ますますその傾向は強くなっていくでしょう。

そのために親や大人にできることは、「子どもの好きを伸ばしてあげること」。

今回、宇宙飛行士をテーマの1つに選んだのも、JAXAがひさしぶりに宇宙飛行士の募集をする、前澤友作さん(株式会社ZOZO創業者)が宇宙に行くということで、子どもが宇宙飛行士という職業を見聞きする機会が増えるタイミングだと思ったから。興味を持ったその時が臨界点だと思っています。

興味を持った時に親が支援してあげられるかどうか。親がレールを敷くのではなく、子どもが走りたがっているところに一緒に道をつくってあげられるかどうか。小学生が好きなことや専門性を深堀りするのは簡単ではないので、その作業は大人が手伝ってあげるとよいのではないでしょうか。

親子で共通の話題ができ、会話が増えることも得難い魅力だ(ミライメイク提供)

なりたい姿を勉強のモチベーションに

今ドリドリのコースとして出しているものは、どれもハードルが高い職業ですよね。宇宙飛行士はものすごい倍率ですし、医者も医学部合格という難関が待っています。安定して利益を生み出す会社を作ることも、そう簡単なことではありません。

しかし、こうした職業に憧れを持つことで、勉強を含め日々の生活や毎日のやりがいが底上げされることが、一番価値があることだと思っています。

もちろん特定の分野、例えば医者を志すようになれば、小中学校の理科、特に生物化学分野を学ぶ時は目の色が変わるでしょうし、宇宙飛行士を目指すのであれば、天体を学ぶ時にやはり心からワクワクするのだろうとは思います。

起業家コースもそうですね。今この世にはないサービスをプロダクトとして作るとなったら、政治経済、つまり社会の成り立ちやお金の流通の仕組み、税金の仕組み、公共サービスとの違いについて意欲的に学ぶでしょう。

それが学校のテストの点数に現れてくるのは多分何年か先になるだろうとは、正直思っています。でも早期キャリア教育に“あと伸び力”効果があることを、さまざまな調査から確信しています。

保護者は、できれば算数、国語、理科、社会の成績に直結して欲しいと思われるでしょう。それは至極自然なことだと思っています。

でも私は、将来なりたい姿がある、やりたいことがあるという夢を持ったお子さんの姿が、多分親御さんにとって一番見ていて嬉しいのではないかと思います。その延長上に学校の勉強を頑張ることを担保できたら最高だなという風に感じています。

ドリドリの授業って、どんなもの?

みなさんは、宇宙飛行士がISS(国際宇宙ステーション)で何をしているのか、彼ら・彼女らの宇宙での仕事が社会の中でどんなふうに役立っているのかをご存じですか? 宇宙飛行士が訓練で体験するマイナス20度の世界がどれくらい寒いのかを、体感したことはありますか?

ドリドリの宇宙飛行士コースでは、このような質問を子どもたちに投げかけ、仕事の内容を具体的に知っていくだけではなく、そのやりがいや、将来その職業がどうなっていくのだろうかということを一緒に考えていきます。

初級編では、各職業の仕事について基本から学ぶことができる(ミライメイク提供)

各コースでは、ナビゲーターが一方向から講義するのではなく、子どもたちにアクティブに参加してもらうことを大切にしています。先程のような大人でもパッと答えられない質問に、「こうかな?」と思う答えを出してもらったり、実際に冷凍庫の中に手を入れて、マイナス20度の世界を体感してもらったり。家の中を走り回るオンライン授業なんて、なかなかないですよね(笑)。

宇宙飛行士の極限訓練を体感するために、ナビゲーターから「冷凍庫に手をつっこんでこよう!」という指示も。まさにアクティブラーニングだ(ミライメイク提供)

毎回プログラムの前半は、その日のテーマについて楽しく学習し、後半は学んだことのアウトプットと、参加している子どもたちがコミュニケーションを取り合う時間を設けています。

アウトプットの時間は、“ドリドリ団”の一員としてクイズに正解し、ポイントを貯めることで“悪の組織”をやっつけるという協力型のゲームになっているんです。75分座りっぱなしというのは大人でも飽きてしまうと思いますので、「飽きさせないためのゲーム」を随所に盛り込んでいます。

同じ夢を持つ全国の仲間に出会えるのも、ドリドリの魅力の一つだ(ミライメイク提供)

子どもたちが将来に夢を持てるように

私たちは社名(ミライメイク)通り、「子どもたちの未来を作ること」をビジョンとして掲げています。

今キャリア教育が脚光を浴び始めているのも、全く先行きが見えないVUCA時代(※先行きが不透明で未来を予測することが困難な時代)に突入したから。こうした時代に必要になる、正解のない答えを探していくことは、日本人がとても不得手とするところだと思います。

学校でドリドリのようなことをやったら、「そんな答えも決まっていないようなことを教えるな」とクレームが来てしまいそうですが、こうした問いに向き合い、探究していくことがVUCA時代を生きていくために大事なことだと私たちは考えています。

先の見えない時代に突入するからこそ、一緒になって子どもたちがワクワクする未来を作っていってあげたいな、と思っています。

取材・文/ナミキジュンコ

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