なんでも「減点方式」の日本型教育への疑問…幸福度の高いデンマークが子どもの通知表をつけない理由
集英社オンライン / 2024年2月28日 11時0分
〈日本のお母さんは家事をやり過ぎ…日本人の僕が英・独で知った驚きの価値観「ドイツでは料理に“火を使う”のは、晩ご飯のときだけ」〉から続く
「日本において常識とは考えられていない」ことが、実は「世界の常識となっている」のは少なくないが、いわゆる「減点方式」の日本型教育も世界基準では特異なものとなっている。ドイツ在住の日本人実業家であり、世界に精通する人気インスタグラマーが48例に及ぶ世界のシン常識をまとめた初の著書『シン・スタンダード』より、一部抜粋、再構成してお届けする。
幸福度世界上位の国では通知表をつけない
「趣味は?」
こう聞かれると僕は、真っ先に「勉強」と答えている。そう答えると日本では、とても珍しがられるかもしれない。
だけど僕がヨーロッパで学生をやっていた時は、少なくとも周りに勉強を楽しんでいる人がたくさんいた。
「なぜ日本の人は、こんなに勉強嫌いの人が多いんだろう」
その理由をずっと考えていた時のことだ。ある中学2年生の日本人の女の子がこんな話を聞かせてくれた。
彼女は、クラスで2番目に成績が良く、勉強が大好きだったそうだ。しかし、環境が変わり、周りに勉強が得意な人ばかりになった時のこと、たちまち彼女の成績の順位は下から数えたほうが早くなったのだとか。
その途端、彼女は勉強が嫌いになったというのだ。
もちろん、勉強そのものの中身が変わったわけでも、彼女の理解度が変わったわけでもない。
変わったことと言えば、人と比べた時の成績の順位だけ。僕はなんだか日本人が勉強を嫌う理由が分かった気がした。
勉強そのものが好きとか嫌いとかの前に、それによって「点数」という数字をつけられ、他の人と比べられるのが日本。この仕組みを敷く以上、成績が上位の人以外は勉強が嫌いになる。
……そんな仮説が立てられるのである。
そう考えると、ひとつ納得できることがある。
デンマークでは、子どもにテストや通知表で点数をつけることが禁止されているそうだ。そして、そんなデンマークでは、勉強が好きな子どもが多いと言われている。
ひょっとしたら、幸福度ランキングで頻繁に上位になることにも、このことが影響しているのかもしれないとすら思う。
こんなことを言うと「いやいや、成績は数値化することで競争意識が生まれ、学力を伸ばすことができるんですよ」といった反論があるかもしれない。
しかし、そんな発言を一刀両断するように、国際学力調査でもデンマークは世界トップクラスという結果が出ている。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉があるが、まさにその言葉が現実になった良い例ではないだろうか。
日本は「自分の得意なもので評価されない」国
僕は、毎日のように全国の学校で講演させてもらっている。そんななか違和感を抱くのは、今の日本の小学校の先生たちの驚きを隠せないほどの「仕事量の多さ」だ。
「通知表」だって、とても大変な仕事のはず。
「当たり前のようにある」「これまでもそうしてきた」という先入観を取っ払い、なくすことができたなら、子どもたちはもっと勉強が好きになるかもしれないし、そうなれば、親たちもガミガミ言わずに済むはず。
そんなふうに、やめるだけで、みんながハッピーな世界が待っているかもしれない。
ちなみに僕が日本の教育に対して違和感を抱く、もうひとつの大きな点は「なんでも減点方式」だということだ。
例えば日本では、得意な教科があれば、「あなたはその教科は得意だから、他の苦手な教科を頑張ろう」と言われることが多くないだろうか。
そのせいか、「あいつは、〇〇はできるけど××はできない」といった具合に、自分の得意なものでは自分を評価してもらえないことが日本では多い気がするのだ。
一方、海外の多くの国においては、得意な教科があれば、「あなたはその教科が得意だから、さらにその教科を伸ばそう」となることが多い。
つまり、日本とは違い、海外の多くの国では「加点方式」なのである。この減点方式も日本人の多くが勉強を嫌いになる、大きな理由だと思っている。
たったひとつ、好きな教科や得意な教科があれば、それはもう「勉強が好き」と胸を張って言っていいし、「勉強が得意」と言っても良いのではないかと僕は思っている。
ましてや、「嫌いな科目」を、少しでもマシになるようにと、向き合わされるような勉強法はやらなくていい。
人生は短い。
嫌いなことや苦手なことに費やす時間なんてないのだ。
文/谷口たかひさ 写真/shutterstock
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