1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

〈日本よりヤバイ〉“国がなくなる”レベルの少子化にある韓国・若者のホンネ「キャリアアップが第一」「妊娠で上司から恫喝」男性からは「女性軽視だと騒ぐからイヤ」「騒ぐならお前らも軍隊いけよ」とフェニミズム女子への拒否反応

集英社オンライン / 2024年3月8日 11時21分

日本国内では「子ども子育て支援金」をめぐる議論が続き、少子化対策はもはや待ったなしだが、お隣の韓国では「国がなくなるかも」(20代女性)との声が現実味を帯びるほど、少子化が深刻化している。これにはさまざまな要因が絡み合っているが、激烈な競争社会の中で、子どもの出産と育児に時間をとられれば、即座に会社内でのポジションを失うことを危惧する人は多い。また最近は、フェミニズム論争を発端とした男女の分断も影を落とす。子どもが生まれなくなっているという韓国社会をどう見ているのか、日本に暮らす韓国人に聞いてみた。

韓国女性の合計特殊出生率は0.72

韓国政府の2月末の発表では、昨年生まれた赤ちゃんは前年から7.7%減の約23万人で、8年間でほぼ半減した。人口約1億2000万人の日本の昨年の出生数は過去最少の76万人弱だが、人口(韓国は約5100万人)を考慮すれば韓国は一層深刻だ。


韓国の少子化は日本より深刻だという

女性1人が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は、韓国は昨年通年で0.72。2022年の0.78からさらに減って過去最低を更新し、昨年10~12月期は0.65にまで落ち込むなど減少に拍車がかかっている。この数字は、100組200人のカップルがもうける次の世代の子どもの数が70人程度しかいないと考えればいい。

日本も2022年に1.26まで下がり危機感が高まっているが、韓国の状況は他に例がないほど深刻で、米紙ニューヨーク・タイムズは「14世紀にペストが欧州にもたらした人口減少をしのぐ」と表現している。

「私たちの世代の女性はキャリアアップが第一の目標で、結婚や出産は二の次と考えている人が多いです。私の故郷の釜山では、結婚した同世代の友達で出産した人はほとんどおらず、みんな仕事で精一杯です」

そう語るのは、昼間は一般企業、夜は新宿・新大久保のガールズバーで働くAさん(28)。彼女は「自分もキャリアップを続けたい。仮に金持ちの男性と結婚できても、子どもを育てるためだけに人生を使いたくはない」と話す。

キャリアアップのためガールズバーで働くAさん(撮影/集英社オンライン)

女性がキャリアを高めたいと考えるのは韓国に限らないが、韓国では大手企業に就職できても厳しい競争にさらされるのが一般的だとAさんは指摘する。

「韓国の大手企業には日本のように終身雇用が約束されている会社はほとんどなく、ずっと仕事で結果を出し続けないといけません。そうした会社に入る前にも、ひと月何万円もする塾でコツコツ勉強して受験戦争を勝ち抜き、語学力を高める必要もあり、韓国人はずっと競争を強いられるんです」

ベビーカーよりペット用カートのほうが売れる

日本人女性と結婚した40代の韓国人男性Bさんも「韓国では組織(会社)の中でずっと結果を残していかないといけません。あのサムスンですら、部長になれないままだと40代で会社に自分の席がなくなると言われています。必然的に労働時間も長く、子育ても難しい状況になっているんです」と話す。

日本人女性と結婚したBさん(撮影/集英社オンライン)

「女性が一度でも産休を取ったら出世競争を勝ち抜くのは難しいでしょう。それで出生率が下がっているんじゃないかな。最近では気軽に育てられるワンちゃんやネコちゃんが人気で、ベビーカーよりペット用カートのほうが売れているとも聞きますし……」(Aさん)

実際、企業のワークライフバランスに向けた取り組みに関する2022年の調査では、育児休業の取得の有無を、昇進とはまったく無関係に取り扱うとする企業は全体の30.7%にとどまるとの結果が出ている。

また、市民団体「職場パワハラ119」の今月3日の発表では、女性会社員が昇進の直前に「あんた、昇進した後に妊娠したり育休を取ったりして会社を裏切らないだろうな」と男性上司に恫喝されたエピソードが紹介された。

新大久保周辺で話を聞いた(撮影/集英社オンライン)

同団体の調査では女性会社員の4割が「同じ仕事をしながら男性と給料で差がつけられた経験がある」と回答。男女を問わない厳しい競争の中で不利な状況に置かれている女性には、子どもを産むことがキャリアの断絶に直結する現実がある。

「ソウルで暮らすならクビを切られる心配がない公務員、鉄道、水道、電気などの公共企業に勤めている家庭でなければ子どもを何人も作ろうとは思わないでしょう」とBさんは話す。

職場パワハラ119が1000人を対象に行った「少子化解決のために必要な政策は何だと思うか?」というアンケート調査によると、回答者の2割が「夫婦両方について育児休業を(政府が)義務付けること」と答え、最も多かった。

政府が子育て環境を整えるよう強制力を発動しなければ、企業の自主的な取り組みでは子育てはできないと考えている人が多い。

尹錫悦大統領が勝てた理由も反フェミニズムと関係が?

少子化の背景には多くの現象が絡まりあっている。人口が集中する首都圏での住宅費高騰や、塾通いなしでは進学校へ進めないとの考えを背景とした教育費による家計の圧迫、晩婚化や未婚率の上昇などだ。さらに、数年前から高まっているフェミニズムと、これに対する若い男性の反発も新たな要素とみられている。

大久保エリアの通称、「イケメン通り」の屋台で働く30代の韓国人男性Cさんの意見は激烈だ。

「私は韓国の女性が嫌いなんです。なにかにつけて『男性が悪い!』『女性蔑視だ!』と騒ぐから嫌になってしまって(韓国を)出てきたんです。キッカケは7、8年前に始まったフェミニズムの盛り上がりです」

イケメン通りで働くCさん

儒教に基づく家父長制が深く根を下ろしていた韓国では、1987年に軍主導の強権的な政治が終わって「民主化」が実現した後、徐々に女性の社会的地位が男性に近づいてきた。

2016年にソウルの繁華街、江南の地下鉄駅で「女性憎悪」が動機の女性殺人事件が起きたことでフェミニズムのムーブメントが一挙に高まり、2017年に発足した文在寅前政権はこれを後押しする政策を展開した。

しかしここで、2年前後の徴兵の義務を負う20~30代の男性を中心に「女性ばかりが優遇されている」との不満が拡大。前回2022年の大統領選は、文政権のフェミニズム政策を担った女性家族部(省)の解体を公約に掲げた尹錫悦候補(現大統領)が勝利。

これには若い男性の支持が大きく影響したとみられている。現在、女性家族部は存続しているものの機能停止に近い状況に追い込まれている。

若い世代の男女間に分断も

「『Me too運動』を行なうフェミニストが大量に出てきて、メディアも積極的に取り上げました。『それだけ男を叩くのなら、お前たちも軍隊に行けよ』と思います。SNSではフェミニズム関連の話題がよく炎上しますし、有名な反フェミニズムのユーチューバーは登録者数が50万人を超えています。

若い世代の男女は互いに対立し、僕自身も(韓国人ではなく)日本人と結婚したい。こんな状況では少子化になるのも当たり前です」(Cさん)

こうした風潮にガールズバーで働くAさんは「一時期、韓国メディアがフェミニストを持ち上げたことで若い男女がSNS上で罵り合いましたが、リアルの世界ではほとんど聞いたことがない。あれはネット上に限った話ですね」と、SNSを発端にした分断があることは否定しない。

尹錫悦統領facebookより

既婚者である前出のBさんは冷静な目で「就職や出世競争のプレッシャー、さらには兵役で2年ほど就職が遅れる男性の中で、社会に認めてもらえない20代の男性が『なんで女性ばかり』と声を上げ、その結果この世代の女性と男性が互いに罵り合うようなことになってしまいました。それも韓国の未婚化が進んだひとつの要因なのかなと思いますね」と話す。

韓国の状況が反転する見通しは立たないままだ。


取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください