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彗星で見つかった「リン」の起源、アルマ望遠鏡と探査機の観測から判明

sorae.jp / 2020年1月20日 22時39分

DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)を構成する元素のひとつであるリン(P)は、地球の生命にとって欠かせない物質です。そんなリンがどのようにして地球にもたらされたのかについて、地上の電波望遠鏡と彗星探査機の観測データ双方を用いて探った研究成果が発表されました。

■彗星のリンは酸素との化合物として含まれていた

彗星探査機「ロゼッタ」によって撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(Credit: ESA/Rosetta/Navcam)

2016年、ESA(欧州宇宙機関)の彗星探査機「ロゼッタ」の観測によって、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)にリンが存在することが明らかになりました。

水、有機物、糖といった生命に必要な物質は、初期の地球に天体が衝突したことでもたらされたと考えられています。ロゼッタの観測結果はこのときにリンも運ばれてきた可能性を示唆するものでしたが、リンがどのような形で彗星に含まれているのかは未解明のままでした。

今回、Víctor Rivilla氏(アルチェトリ天文台、イタリア)やKathrin Altwegg氏(ベルン大学、スイス)らの研究チームは、チリの電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」とロゼッタの観測データを組み合わせることで、おもにチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のリンは酸素との単純な化合物(PO)として存在していることを明らかにしました。

冒頭で触れたように、リンは核酸の構成物のひとつであり、カルシウムなどとともに骨や歯を形作る成分のひとつでもあります。リンがどのような形で彗星に含まれているのかを明らかにした今回の研究成果について、Altwegg氏は「彗星と地球上の生命との結び付きをより強いものにするだろう」とコメントしています。

■リンを含む化合物は太陽系誕生前から存在していた

星形成領域と彗星のつながりを示したイメージ図。アルマ望遠鏡の観測結果(左上)によって星形成領域のどこで生成されているのかが判明したリンを含む化合物(左下)が、太陽の誕生前から彗星(右下)にも含まれていたとみられる(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Rivilla et al.; ESO/L. Calçada; ESA/Rosetta/NAVCAM; Mario Weigand, www.SkyTrip.de)

リンを含む化合物はどこからやってきたのでしょうか。アルマ望遠鏡を使って「ぎょしゃ座」の方向およそ7000光年先にある星形成領域「AFGL 5142」を観測したところ、若い大質量星が二手に放出するジェットの周辺において、リンを含む化合物が生成される様子が判明しました。

濃密なガス雲のなかで誕生した星からジェットが放出され始めると、ジェットの周囲に空洞が形成されるようになります。研究チームによると、ジェットの内部では強い衝撃波によってリンと水素の化合物(PH3など)が生成されるいっぽうで、空洞の壁面にあたる領域では紫外線による光化学反応と衝撃波によって、リンと酸素や窒素が結び付いた化合物(POやPN)が生成されていることがわかったといいます。

また、論文ではリンの酸化物が太陽の誕生前から彗星に含まれていた可能性を指摘しており、発表でもリンの移動を星形成領域から彗星への旅路になぞらえています。かつてどこかの星形成領域で生成されたリンを含む化合物が、やがて太陽系となる物質の集まりに引き寄せられていき、水などと一緒に彗星に取り込まれたものが地球へと衝突したことで、生命の誕生をもたらすことになったのかもしれません。

 

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Rivilla et al.
Source: ESA / ALMA
文/松村武宏

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