動画で再現! NASA最新の探査車はこうして火星の大地に降り立つ
sorae.jp / 2021年1月31日 23時16分
その瞬間まであと3週間を切りました。2020年7月30日(日本時間、以下同様)に打ち上げられたアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査ミッション「マーズ2020」の探査車(ローバー)「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」は、2021年2月19日(金)5時55分頃に火星のイシディス平原西端にあるジェゼロ・クレーターに着陸する予定です。
こちらはPerseveranceの火星大気圏突入から着陸までの約7分間の様子を1分ほどに凝縮した再現動画。Perseveranceを運用するNASAのジェット推進研究所(JPL)から公開されています。最新の火星探査車がどのようにして火星に降り立つのか、まずはその様子をご覧下さい。
火星の大気圏に時速約1万9500km(秒速約5.4km)で突入するPerseveranceは、耐熱シールドに守られながら降下しつつ速度を落としていきます。大気圏突入開始から約4分後、時速約1500kmまで減速された高度1万~1万3000m付近でバックシェルからパラシュートが展開され、時速約600kmを下回る頃には耐熱シールドが切り離されてPerseveranceが火星の大気圏にその姿を現します。
パラシュート展開から約2分後、時速約320kmまで減速した高度2km付近でバックシェルからPerseverance本体を含む降下ステージが切り離されます。降下ステージには8基のロケットエンジンが備わっており、Perseveranceは降下の最終段階をパラシュートを使わずにロケットエンジンで減速しながら降りていきます。
そして地表まであと約20mという段階で降下ステージからナイロン製のケーブルが繰り出され、Perseverance本体が7.6m下に吊り下げられた「スカイクレーン(sky crane)」と呼ばれる独特の形態になります。ケーブルはPerseveranceが接地すると速やかに切り離され、降下ステージは斜め45度の角度で飛び去ります。着陸地点から遠く離れた場所へ落下する降下ステージはその使命を終えますが、安全に火星の地表へと降り立ったPerseveranceの探査はここからがスタートです。
スカイクレーンによる火星への着陸は、2012年8月から探査活動を続けている火星探査車「キュリオシティ」で初めて実施されました。Perseveranceはキュリオシティをベースに開発されており、着陸方法として引き続きスカイクレーンが採用されています。なお、着陸当日は火星と地球の通信に片道11分以上のタイムラグがあるため、Perseveranceは自らの判断で大気圏突入から着陸までの行程を進めることになります。
1965年7月に火星をフライバイした探査機「マリナー4号」以来、NASAは「バイキング」や「インサイト」といった着陸機や「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」などの周回探査機、キュリオシティに代表される探査車を火星に送り続けてきました。これまでのミッションで得られた知識をもとに作り上げられたPerseveranceは古代の火星で誕生していた可能性がある生命の探索を重要な目的としており、将来NASAが欧州宇宙機関(ESA)との共同ミッションにおいて火星から持ち帰ることが計画されているサンプルを採取する重要な任務も担っています。
NASA科学ミッション本部の副本部長Thomas Zurbuchen氏は「我々の火星についての知識を広げるだけでなく、人類にとって最も重要かつ心躍る疑問のひとつである地球とその他の惑星における生命の起源の調査、その機会もPerseveranceにはあるのです」とコメントしています。
関連:【宇宙天文を学ぼう】火星ってどんな惑星? 探査機がまもなく到着
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏
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