あの頃、俺たちはハングリーだった 『劇映画 孤独のグルメ』公開記念・松重豊×甲本ヒロト特別対談
日刊SPA! / 2025年1月10日 15時48分
同郷のふたりの会話には自然と方言が混じる
東京・下北沢にある中華料理店『珉亭』。俳優の松重豊さんとロックンローラーの甲本ヒロトさんは、若き日にここで出会い、共にバイトに励み、夢を語り合ってきた。それから40年の時を経て、松重さんが監督・脚本・主演を務める『劇映画 孤独のグルメ』の主題歌「空腹と俺」を甲本さんが書きおろし、ザ・クロマニヨンズが担当。初タッグを組んだ2人が思い出の場所で語ったことは?
◆極限まで腹を減らしていた十代の頃
――まずは、お2人の出会いからお伺いできますか?
松重: 最初の出会いは19歳ぐらいかな。どっちかが洗いもんしてて、「ヒロトじゃ」「豊です」って挨拶して。
甲本: 僕は岡山から、豊は福岡から出てきて、言葉がちょっと似たところがあるんよな。
松重: 同じ年だし、ここは日給でもらえるから、バイトして、飲みに行って。
甲本: シフトも前日に「明日行ってもいいですか?」って感じだった。
松重: どうしてもお腹が空いている時は、まかないというかメシだけ喰いに行っても許された。あの頃の俺らは、腹減ったってどころじゃないぐらいメシに困ってた。
甲本: 極限まで腹減らして、もう困った!って時に「行っていいっすか?」って電話して、「来いよ」って。白衣に着替えると、まず「何喰う?」ってメシを喰わせてくれる。
松重: 寛大。本当に助かってた。
◆街自体が劇場みたいだった
――その頃、一番食べたものといいますと?
甲本: 俺は意外とね、餃子好きだった。お客さんから餃子の注文が入るのを待つんよ。それで「俺も!」ってすかさず。
松重: そうそう。餃子は「ホシのオババ」と呼ばれとる人がひとりで作ってて。(声色を使って)「餃子食べていきなさい」。
甲本: いま、ちょっと似とった。
松重: 40年前のことでも、意外と細かいことを覚えてるよな。
甲本: 日々が傑作だったからね。下北沢自体が劇場みたいだった。
松重: 毎回、面白いイベントが起きる。店出ると乱闘が起きてて、「今日は演劇系が揉めてるな」。
甲本: 思い出したけど、俺、出前で本当は行かんといけんとこの隣入っちゃって、そこが中華料理屋だったことがある。
松重: (笑)。だけど、バイトとして優秀なヤツが多かった。伝票がないから全部覚えなきゃいけないし、オーダーを通す声もおっきいしね。
甲本: バンドマンと演劇人が多かったから声はデカかった。
松重: うん。俺ら、仕事はようやってたよな。
甲本: うん。できとった。
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