仮想通貨マイニングで「先端半導体ライン争奪戦」が勃発
LIMO / 2018年6月12日 20時25分
仮想通貨マイニングで「先端半導体ライン争奪戦」が勃発
最先端7nmチップ登場も、TSMCはアップルなど既存顧客優先
半導体需要の新たな牽引役として浮上してきた仮想通貨マイニング用チップ。先端プロセスの稼働を埋める貴重な「バッファー役」として存在感を増しているものの、今後アップルなどスマートフォン用プロセッサー生産の最盛期を迎える夏場にかけては生産ラインの確保が大きな課題となりそうだ。
「早いもの勝ち」のマイニングでは先端プロセスニーズが強い
マイニングはいち早く計算を終えたマイナー(採掘者)に仮想通貨が新規発行される特性上、計算スピードを速めるために先端プロセスに対するニーズが強い。よって、ファンドリー各社にとっても、売り上げ・利益へのインパクトが大きくなっている。
特にマイニング最大手、中国ビットメインのTSMCへのASIC(特定用途向け集積回路)発注量は、17年後半から大きく増加しており、月平均1.5万枚前後の発注量で推移したとみられている。このほとんどが16/12nmで構成されており、マイニング需要がTSMCの稼働を下支えしてくれた側面は強い。
年明け以降は16nmに加え、28nmなどのレガシープロセス、さらには10/7nmといった最先端プロセスも加わり、18年上期は月平均2・5万~3万枚程度で推移するとみられ、その存在はより巨大なものとなっている。
TSMCは例年と異なる3月に過去最高売り上げ記録
マイニング需要の拡大もあり、TSMCの月次売上高は例年とは異なるパターンが見て取れる。18年3月の月次売上高が過去最高の1037億台湾ドル(前月比60%増/前年同月比21%増)を記録。通常、同社の月次売上高は8~10月にピークを迎えるのがここ2~3年の傾向であったが、18年は3月に一気に売り上げが拡大。スマホ需要の低調さを考えれば、マイニング需要が押し上げたことは容易に想像できる。
TSMCは会社全体で4~6月期は前四半期比減収予想となっているが、仮想通貨マイニングをはじめとするHPC(高性能コンピューティング)部門は堅調に推移するとコメント。18年下期はさらに需要が増加することも示唆している。
サムスン電子も先端ロジックファンドリーの一角として、マイニングチップの生産を手がける。月平均2万枚前後を手がけているといわれており、18年第1四半期(1~3月)決算カンファレンスでは4~6月期はさらに増加する可能性があると言及している。
ただ、組立・テストなどの後工程分野では17年末から18年初頭にかけて過剰発注気味なところがあり、パッケージ材料メーカーなどは一様に「3月から急ブレーキがかかった」と口を揃える。後工程装置メーカーのディスコは、18年4~6月売上高予想を大幅に下方修正したが、修正要因の1つとしてマイニング需要の減速を挙げている。
GMOが7nmチップ発表、製造はTSMCが担当
マイニングチップでは18年から7nm世代を採用したものが続々と登場してくる。前述のマイニングASIC世界最大手の中国ビットメインは、7月ごろをめどに7nmを採用したマイニングマシンの販売を開始するとみられているほか、これに先がけて国内企業でも7nm採用のチップおよびマシンの投入を開始している。
GMOインターネットは6月6日、7nm世代のASICを搭載した仮想通貨マイニングマシン「GMOマイナー B2」の販売を開始した。今後、マイニングマシンの販売とマイニングファーム運営による自社マイニングの両輪で仮想通貨事業の拡大を図っていく。
販売を開始したマイニングマシンには自社開発のマイニング用ASIC「GMO 72b」を搭載。SHA256の暗号通貨マイニングに対応しており、ビットコイン、ビットコインキャッシュのマイニングを行うことができる。
前工程の製造はTSMCが担う。設計は従来、パートナー企業ととともに進める予定であったが、現在はこの設計会社に対して直接出資を行っており、今後GMOグループの傘下となる見通し。なお、ASIC開発には100億円弱の投資を行っている。ちなみにこのパートナー企業は、スパコン開発ベンチャーで元社長が助成金の不正受給で逮捕されたPEZY Computingとみられている。
販売目標よりもまずは「数量確保」
GMOは新型マイニングマシンの具体的な販売数量目標などは明らかにしてない。それ以上に「7nm世代の生産ラインの確保」(熊谷社長)が重要なテーマになってくるという。現在はTSMCでの委託生産を進めるが、今後は複数ファンドリーでの生産も検討しており、生産リソースの確保に努めていく。
生産ラインの確保はマイニングASICベンダーにとって共通の課題だ。TSMCはかねてマイニングチップ需要に関しては懐疑的で、同分野の需要拡大に伴って生産キャパシティーの拡張を行わないスタンスを取っている。空いているラインは融通するものの、あくまでも優先すべきはアップルなどのスマホ用プロセッサーを手がける顧客だ。
今後夏場にかけてはアップルの18年新機種向けのプロセッサー生産が最盛期を迎えるため、ライン確保が一層難しくなってくる。GMOインターネットの熊谷社長も「近々に台湾に飛んで交渉してくる」と語っているとおり、ASICベンダーの「先端ライン争奪戦」が激しさを増しそうだ。
(稲葉雅巳)
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