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クイズでおぼえる、誰かに言いたくなる「原油の基礎データ」

トウシル / 2021年9月21日 5時0分

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クイズでおぼえる、誰かに言いたくなる「原油の基礎データ」

原油関連の基礎データ。賞味期限は3年!?

 今回は、原油関連の基礎データを、クイズ形式で、紹介します。こうしたデータを知ることは、世界全体を一望する(俯瞰(ふかん)する)ことにつながる、とても意味のある行為です。

 さらに、原油の基礎データが、ガソリンスタンドで給油する際「ちょっと値段上がった?」、「なんでビニール袋が有料化されたの?」などの、日常生活で起きる疑問を解決するヒントになる場合があります。ですので、投資経験の有無にかかわらず、知っておいて損はありません。

 世界情勢は毎日、目まぐるしく変化しています。毎日が激動、と言えるでしょう。こうした情勢の中、(原油に限らず)基礎データが、未来永劫、基礎データのままであり続けることは、ありません。このため、賞味期限は3年!? と、書きました。(5年は持たないとみています)

 まずは現時点の、基礎データを確認しましょう。大きな変化があれば、本欄でまた、紹介します。誰かに言いたくなるデータが、あるかもしれません。是非、最後まで、お読みください。

 それでは、1問目。

【問1】原油生産量No1は、サウジアラビア?米国?

ヒント:この問題の答えは、2018年に入れ替わりました。

 中東のアラブの国の広大な砂漠にある、石油関連施設の煙突のような設備から炎が上がっているシーンを思い浮かべた人は、サウジアラビアだと、思ったかもしれません。

 参考までに、あの炎は、原油生産・精製時に発生する余剰ガスを焼却しているために出ています。原油が燃えているわけではありません。フレアスタックと呼ばれます。

 かたや、ニューヨークの有名な建物「ロックフェラー・ビル」に冠されたロックフェラー氏が、世界の石油王と呼ばれたことを思い出した人は、米国だと、思ったかもしれません。

 世界で最も早く石油産業を一般化させたのは、米国です。1850年代、米大統領選で激戦区として知られる米国東部のペンシルベニア州で、本格的な石油の掘削がはじまりました。1900年代に入ると、その石油が、フォード社の自動車普及を燃料の面で支えました。

 答えは、次のページです。

【問1:答え】原油生産量No1は、サウジアラビア?米国?

【答1】米国

 原油生産量No1は、「米国」です。

 以下の英文の通り、米国の政府機関である米エネルギー情報局(EIA)のウェブサイトに、米国は世界で最も大きな原油生産国だと、書かれています。

The United States became the world’s top crude oil producer in 2018 and maintained the lead position in 2019 and 2020. (EIAのウェブサイトより抜粋)

 以下の図からも、2018年に米国がサウジを追い抜き、トップに躍り出たことが確認できます。

図:世界トップ3の原油生産量 単位:千バレル/日量

出所:JODIのデータをもとに筆者作成

 米国が世界No1の原油生産国になった原因は、2つあります。1つ目は、広く報じられているとおり、米国で「シェール革命」が起きたためです。

 歴史的に石油産業が根付いている米国は、高い掘削技術を持っています。土地の所有者に地質調査や鉱物資源を所有する権利がある米国独特のルールも、革命を後押ししました。2010年ごろからの生産量の急増劇は、まさに革命です。

 2つ目は、OPEC(オペック)加盟国とOPECの考えに賛同する非加盟国が、原油の減産を開始したためです。OPECとは、Organization of the Petroleum Exporting Countriesの頭文字をとった組織の名前で、日本語は、石油輸出国機構です。

「輸出」ですので、「輸入」する国は原則、加盟していません。かつてインドネシアは加盟国でしたが、2016年末に脱退しました。輸入量が増加したことが一因と言われています。米国が加盟していない主な理由は、主体が国ではなく、企業だから、だと考えられます。

 この場合の減産とは、原油生産量を人為的に削減することです。2021年7月時点で、OPECとその考えに賛同する国は合計で23カ国あり(OPECプラスと呼ばれています)、世界全体に占める生産シェアはおよそ半分です。

 こうした大きなシェアを占めるグループが、生産量を減らした場合、世界全体で供給量が減り、原油市場に上昇圧力がかかります。

 原油を輸出する国にとって、原油価格は「単価」であり、収益を支える重要な要素です。この「単価」を引き上げるべく、彼らは自ら「量」を減らしているわけです。量を減らしても、単価が一定水準を超えていれば、収益を維持することができるのでしょう。

 2017年1月から始まったOPECプラスの減産は、休止した2020年4月を除けば、4年8カ月、続いています。こうした、サウジアラビアとロシアの自ら生産量を絞る行為もまた、シェール革命と同様、米国を原油生産量No1にした要因と言えます。

 OPECプラスの国々については、「「全部のせ」ならぬ「全部高」!期待というニンジンに原油も銅も釘づけ状態」で詳細を述べています。

 では、2問目です。

【問2】石油消費量No1は、中国?米国?

ヒント:中国の各種エネルギーを使うことで発生する二酸化炭素の排出量は、米国のおよそ2倍ですが、石炭を重用していることが主な要因とされています。(IEA(国際エネルギー機関)の統計より 中国9,570トン、米国4,921トン(2018年))

 2000年代前半から急激に経済成長を遂げ、中国は主要国の仲間入りをしました。都市部の発展は現在も進行中です。圧倒的な人口を背景にさまざまな分野で大きな需要があり、かつ広大な面積を背景に諸資源を供給するなど、諸外国との貿易の規模も大きいことが特徴です。規模の原理で、中国が世界No1の石油消費国、と考えた方もいるのではないでしょうか。

 かたや、歴史的に石油産業を国家の重要産業としてきた米国は、石油を使う文化が根付いているため、消費量は数ある主要国の中でも多い傾向があります。昨年の米大統領選でバイデン氏が容易に勝利できなかったのは、政策の一つに「脱炭素」を前面に出したことが、石油を重視している一部の米国の人々に受け入れられなかったため、という指摘もあります。米国はまだ、石油の国である、だから米国が世界No1の石油消費国、という考えもあると思います。

 答えは、次のページです。

【問2:答え】石油消費量No1は、中国?米国?

【答2】米国

 石油消費量No1は、「米国」です。

 以下の図のとおり、米国の石油消費量は中国の1.46倍程度です。

図:米国と中国の石油消費量 単位:バレル/日量

出所:EIAのデータをもとに筆者作成

 米国の石油消費量の内訳は、ガソリン45%、航空機燃料8%、ディーゼル燃料や暖房用・発電用燃料20%、プラスチック製品向け15%、その他12%です。(EIAのデータより 2021年8月時点)

 石油は、世界屈指の規模を誇る米国経済や米国市民の豊かな生活を、交通・発電・生活必需品の面で支えています。こうした用途で使われる米国の石油消費量は、新型コロナショック直後にロックダウンなどの影響で短期的に急減したものの、その後は回復し、現在はコロナ前と、大きな差はありません。

 中国の石油消費量は、長期的に見れば、緩やかに上昇傾向にあります。2017年1月と2021年8月を比べると、およそ11%、増加しています。新型コロナショックの際、米国と異なり急減しなかったのは、中国のメインのエネルギー源が、石炭だからです。一次エネルギー源のおよそ60%が石炭とされています。(2018年 IEA 国際エネルギー機関の統計より)

 米国のエネルギーの内訳は石油35%、天然ガス34%、再生可能エネルギー12%、石炭10%、原子力9%です。(2020年 EIA 米エネルギー情報局の統計より)この内訳が、先進国の当面のエネルギー内訳のサンプルだとすれば、中国の内訳も将来、このような内訳になる可能性があるでしょう。

 燃焼時の二酸化炭素の排出は、石炭の方が石油よりも多いとされているため(石油は天然ガスよりも多い)、中国は石炭からの脱却を目指すことになると、考えられます。目先的には石油や天然ガスに、超長期的には再生可能エネルギーにシフトするのではないでしょうか。

 では、3問目です。

【問3】なぜ、米国と中国は石油の戦略備蓄を放出しているのか?

 正解に近い回答は、以下の2つの、どちらでしょうか。

1.保管のためのコストを払うことができなくなったため。

2.将来的に使わなくなることをアピールするため。

ヒント:世界的なブーム「脱炭素」を実現するためには、できるだけ石油などの化石燃料を使わないことが求められます。余分に積み上げている在庫があると、将来使うつもり、とみなされかねません。 

 戦略備蓄(あるいは国家備蓄)とは、海外から原油や石油製品を輸入できなくなったり、国内で生産ができなくなったりした時に備えて、用意している備蓄のことです。例えば日本は、今年7月末時点で、合計245日分の備蓄を有しています。(国家備蓄149日分、民間備蓄91日分、産油国共同備蓄6日分 四捨五入のため合計と一致せず)。SPR(Strategic Petroleum Reserve)と呼ばれます。

 答えは、次のページです。

【問3:答え】なぜ、米国と中国は石油の戦略備蓄を放出しているのか?

【答3】2.将来的に使わなくなることをアピールするため。
(筆者が考える、正解に近い回答です)

 戦略備蓄の放出には、さまざまな意図があるため、なぜ放出しているのかを特定することは難しいですが、今、このタイミングで、中国の戦略備蓄放出が話題になり、かつ、この数カ月間、米国の戦略備蓄の減少傾向が顕著であることを考えれば、一つの考えが浮かび上がります。

 以下の通り、米国の戦略備蓄の減少は、トランプ政権の時に始まりました。世界No1の原油生産国となったことを受け、自国での調達が十分できるとの判断とみられます。新型コロナがパンデミック(世界的な大流行)となり、危機への意識が高まった際、備蓄を積み上げる動きが見られましたが、それも短期間に終わり、再び減少に転じました。

図:米国の戦略備蓄の推移 単位:千バレル

出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 今年1月、バイデン大統領が就任し、米国がパリ協定(温暖化対策の枠組み)に復帰しました。世界全体が地球環境を考える方向に再び向きはじめたことを皮切りに、春に米国が主催して40カ国の首脳が集まった「気候変動サミット」で、各国が、温室効果ガスの排出量の削減目標を強化したり、具体策について言及したりしました。

 今年に入り、日に日に、「脱炭素」のムードが高まる中、米国の戦略備蓄の減少の勢いが、増しています。そして足元、気候変動サミットで温室効果ガスの削減についての具体策を提示した中国の、戦略備蓄放出に関する報道が目立っています。米国と中国は今、時を同じくして、戦略備蓄の削減に取り組んでいるわけです。

「備蓄を持っていること」は、将来的に石油を使うことを念頭に置いていることに他なりません。逆に、「備蓄を放出すること」は、将来的に石油を使わなくなることのアピール、と言えるでしょう。この意味で、問題3の答えを、2.将来的に使わなくなることをアピールするため、としました。

 では、4問目です。

【問4】なぜ、「必要性の低下」が相場に上昇圧力をかける可能性があるのか?

 正解に近い回答は、以下の2つの、どちらでしょうか。

1.売り手の意向が、市場に反映されやすくなるため。

2.その時は必要性が低下しても、いつか誰かが買ってくれる期待があるため。

ヒント:価格は、需要と供給のバランスで決まると、一般的には言われています。その意味では、必要性の低下は需要減少を意味し、相場に下落圧力をかける要因になり得ます。しかし、必要性が低下し、市場に買い手が少なくなった場合、売り手は何を考えるでしょうか。場合によっては、売り手が一方的に価格を決める事態も、想定されます…。

 答えは、次のページです。

【問4:答え】なぜ、「必要性の低下」が相場に上昇圧力をかける可能性があるのか?

【答4】1.売り手の意向が、市場に反映されやすくなるため。
(筆者が考える、正解に近い回答です)

 世界的に「脱炭素」が大きく進んだ時、石油の消費量は激減していると考えられます。とはいえ、大きな動力を必要とする大型の航空機や船舶では一部、化石燃料が使われているかもしれません。また、ワクチン接種に必要な注射器や医療従事者の方がまとうガウンなど、必要不可欠な石油由来の製品はまだ、存在しているかもしれません。

 先述のとおり、米国のエネルギー内訳でガソリンは45%でした(2020年)。米国で走る自動車すべてが電動になったとしても、石油の消費はゼロになることはありません。ガソリン以外の石油の消費をゼロにできるか? が、自動車の議論の次のステージ(「脱炭素2.0」とでも言うでしょうか)に突き付けられる問いでしょう。

 脱炭素2.0でも、原油の需要は、減少したとしてもゼロにならない、一定程度残る、と考えるのが自然であると、筆者は考えています。

 このことは、超長期的に、原油市場が、買い手(実需)が少ない市場に変貌し、売り手(産油国など)が一方的に価格を決める環境になる可能性を高めていると、考えられます。(実需の話であり、先物市場における現物の受け渡しを伴わない買い手や、原油価格に連動する金融商品の買い手が減少すると言っているのではありません)

「買い手」は価格が安いことを望みます。「売り手」は価格が高いことを望みます。この原理でいえば、売り手が一方的に価格を決めた場合、価格は上昇することになります。この意味で、問4の答えを、1.売り手の意向が、市場に反映されやすくなるため、としました。

 超長期的に原油市場において、経済の常識である、需要供給バランスと価格の関係が、「脱炭素」をきっかけとした需要減少によって、成り立たなくなる可能性があることは、同市場の今後を考える上で、認識すべきことだと考えます。

クイズのまとめ

 本レポートでは、4つのクイズを出題しました。問いと答えは以下のとおりです。

問1 原油生産量No1は、サウジ?米国?
→ 答:米国

問2 石油消費量No1は、中国?米国?
→ 答:米国

問3 なぜ、米国と中国は石油の戦略備蓄を放出しているのか?
→ 答:将来的に使わなくなることをアピールするため。 (筆者考察)

問4 なぜ、「必要性の低下」が相場に上昇圧力をかける可能性があるのか?
→ 答:売り手の意向が、市場に反映されやすくなるため。 (筆者考察)

 冒頭で述べたとおり、賞味期限は3年くらいだと(特に問1・2)、筆者は考えています。米国が国内の世論を反映して「脱炭素」を強めて石油産業が縮小している可能性があること(米国の原油生産量と石油消費量に影響。産業の縮小は両方の縮小につながる)、OPECプラスの減産が終了して増産をしている可能性があること、などがその理由です。

 また、米国については、政策的に「脱炭素」を進めているため、2022年の中間選挙、2024年の大統領選挙で、同国の「脱炭素」をめぐる方針に、なにか変化があるかもしれません。

 以下は、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格の推移です。昨年4月にマイナス価格をつけた、物価動向に影響を与えるため目先の米国の金融政策の方向性を探る上でヒントになる、など何かと話題が豊富な市場です。

図:WTI原油先物価格の推移(月足 終値) 単位:ドル/バレル

出所:各種情報源より筆者作成

 「脱炭素」は、超長期的にみれば必ずしも、原油市場の下落要因とはいえない、また、以前の「「原油相場100ドル」の願望をかなえる4つの条件」で述べたとおり、需要が減少したとしても株価が上昇して景気が上向くムードがあれば、価格が上昇する可能性がある、と考えます。

「原油価格が高いこと=景気が良いこと」と、原油価格を経済指標の一つとみる市場関係者が増えた場合、彼らの思惑もまた、価格上昇の一因になるかもしれません。

 クイズを通じて、原油市場の今と、今後について筆者の考えを述べました。ご参考になれば、幸いです。

[参考]原油関連の具体的な投資商品

国内ETF/ETN

WTI原油上場投資信託 (東証)1690
NF原油インデックス連動型上場(東証)1699
NEXT NOTES 日経TOCOM原油ブル2038
NEXT NOTES 日経TOCOM原油ベア2039

投資信託

UBS原油先物ファンド

外国株

エクソンモービルXOM
シェブロンCVX
トタルTOT
コノコフィリップスCOP
BPBP

(吉田 哲)

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