利用者4.8倍増!笑顔を生む手指消毒器の秘密 つい試したくなる仕掛けはこうして生まれた
東洋経済オンライン / 2023年11月30日 9時0分
仕掛けのアイデアで、お金や労力をかけずとも問題解決する。その積み重ねが、社会を確実にいい方向に変えていく。そんなシンプルなコンセプトを掲げる学問が「仕掛学」である。
英語版を含み、世界で広く読まれ、10万部を突破した『仕掛学:人を動かすアイデアのつくり方』の続編にあたる『実践仕掛学:問題解決につながるアイデアのつくり方』を上梓した大阪大学大学院経済学研究科教授の松村真宏氏が、事例をまじえながら、仕掛学のエッセンスについて語る。
身近なところに潜む、さまざまな仕掛け
バスケットゴールのついたゴミ箱、「真実の口」に見立てた消毒器「勇気の口」……。
つい行動してしまうきっかけになるものを著者は仕掛けと呼んでいる。しかし、いざ仕掛けを作ろうと思った時に、どうすれば仕掛けを作れるのかわからないし、どのような勉強をすれば仕掛けを作れるようになるのかもわからない。そこで、人の行動を促す仕掛けの体系的な理解を目指す学問分野として、仕掛学を提唱した。
仕掛けは従来の行動の選択肢を残したまま、新たな行動の選択肢を追加するものである。
従来の行動の選択肢を残すのは、行動変容を強要しないようにするためである。
人には変化を避けたり未知のものを避けたりする「現状維持バイアス」がある。したがって、基本的には従来の行動が選ばれ、新たな行動は選ばれにくい。新たな行動はわざわざ選びたくなるような工夫が必要になる。
私たちがまだ気づいていないだけで、身近なところにさまざまな仕掛けが潜んでいる。
著者は大阪大学一年生向けの全学共通教育科目「学問への扉」で仕掛学を教えており、町中から条件を満たす仕掛けを見つけてきてもらうという課題を課している。講義の最終回には、履修者が集めてきた仕掛けの事例をまとめて「仕掛け100連発」として発表してもらっている。
仕掛けの条件と多少のコツさえつかめれば、誰でも仕掛けを発掘できるのである。
本記事では、3つの事例を通して、実際に仕掛けによって人の行動がどう変わったかを紹介していきたい。
勇気の口
天王寺動物園は大阪市内の憩いのスポットの一つである。近年すっかり雰囲気もよくなって人気の観光地になった新世界も目前にあるので、遊びにくるカップルや家族連れで年中賑わっている。天王寺動物園で動物を見て回って疲れたときは、デッキ下イベント広場がよく利用される。広いスペースで屋根もあるので、イベントのないときは来園者がシートを広げて休憩したりお弁当を食べたりする場所になっている。
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