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「東大理Ⅲに4連敗」夢破れた彼女が見つけた道 合格最低点と僅差で不合格、その後の彼女は?

東洋経済オンライン / 2023年12月3日 7時0分

ただし、この長い期間の挑戦自体に悔いはないそうで、「熱中した経験が今に生きている」と前向きに受けとめていました。浪人してよかったことについても「友達ができたこと」、がんばれた理由についても「数字で成長の実感が得られたから」とそれぞれ語ってくださいました。

「私は浪人以前に何かに打ち込んだことがないので、自分は何ができるのかがわかりませんでした。でも、実際に浪人して、理Ⅲという目標に向かって友達と一緒に熱中したので、輝かしい記憶として残っています。

浪人しなければ、私は絶対に医学部に入れませんでした。受験勉強は大変でしたが、孤独ではなかったので、苦痛ではありませんでした。受験のために必要なものは人間関係で、受験生活で得たものも人間関係です。今でも浪人中の友達が頼ってきたら全力で応えたいし、私が迷ったときも相談できるいい関係が続いています。一緒に努力をした仲間というものは、大人になってしまうとなかなか得がたいものだと思います」

金沢大学医学部を卒業してからの森さんは、ゆうメンタルクリニック・スキンクリニック理事、産業医・公認心理師、美容と保険を扱う皮膚科医として活躍するかたわら、ライターとしても活動しています。

孤独に感じる人に寄り添う皮膚科医に

今年2月には、『発達障害ママの子育てハック』の監修にも携わりました。

「『病気の新しい治療法を開発したい』とか、『不老不死を実現させたい』などと浪人中は考えていましたが、人が苦しいと感じるのは、病気や老いそのもののせいではなく『孤独だと感じたとき』なのかもしれないと思うようになりました。

現在、仕事で心身の調子を崩した方との面談をしているのですが、患者さんは、病気そのものがつらいのはもちろんですが、病気によって周囲に理解してもらえないこと、周囲に自分が求められていないように思うことで余計に苦しさを感じているように思えます。でも、一声かけるだけで、その心持ちが変わることがよくあるんです。

たとえば、帯状疱疹で痛がっている患者さんに『私もなったことがありますが、痛いですよね』と言うと、治療法は何も変わらないはずなのに一気に安心した様子を見せてくれることがあります。苦しみの根底には、『孤独』への恐怖感があるのではないでしょうか。

思えば、私は浪人のときに同じ方向を向いている浪人の仲間がいたからこそ、不安が緩和され、安心感を抱いて勉強に集中ができたのでしょう。だから、もともと努力できる人、できない人がいるわけじゃなく、すべては環境次第なのだろうなと思います。

今、進路や将来に迷っている方は、多数派でなくなることを恐れる必要はなく、やりたいことを追求していくと、同じ目標を持つ仲間ができるので、その仲間を大切にしていくといいのではないかと思います」

「もし孤独を感じられたら、カウンセリングをやっているのでぜひお声がけください」と語ってくださった森さん。

かつて不安を抱きながら多浪・仮面浪人という人と違う決断をし、仲間の存在に支えられて乗り越えてきた彼女は、他者の痛みやつらさを理解し、寄り添うことのできる立派な医師になっていました。

濱井 正吾:教育系ライター

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