赤字、リストラ、コンビニ撤退「本の物流王」の岐路 業界を騒がせた取次大手「日販」の幹部に聞く
東洋経済オンライン / 2023年12月15日 7時10分
出版取次(卸)大手の日販グループホールディングス(HD)が、2023年後半に入って業界を騒がせている。11月24日、コンビニ大手のローソンとファミリーマートへの雑誌流通から2025年2月末をめどに撤退すると正式発表したのだ。
10月には、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)も出資する子会社が、「TSUTAYA」などのフランチャイズ事業をCCCから譲受。ほかにも東京・溜池山王駅に完全無人書店を開業するなど、書店ビジネスにおける取り組みも活発だ。
赤字に苦しむ中、足元では「日販が人員削減に踏み込んだ」(複数の業界関係者)という噂も飛び交う。一連の動きの背景やリストラの真偽について、中核子会社・日本出版販売の社長も兼ねる日販グループHDの奧村景二専務を直撃した(インタビューは11月中旬に実施)。
コンビニ流通をやめる決定的理由
――コンビニ流通から撤退を決め、業界に衝撃が走っています。
【図表で見る】取次事業の苦戦により、連結でも最終赤字に転落した
この10年間、800億円あったコンビニ取引の売上高が300億円まで後退している。一方、うちでカバーしているコンビニの軒数は約3万で高止まりだ。運賃はコンビニの軒数に応じて支払っているため、売り上げは減ってもコストは固定化してしまっている。
もちろん、他の固定費を削ってきたが、運賃は年々上がってきており相殺されてしまう。営業赤字がどんどんと膨らんでいくことから、2023年1月にコンビニ側と(雑誌流通の撤退について)話を始めた。
「それでも続けろ」「日販がやめるとは何事だ」と言う人が(出版社の中に)いることも事実だ。
――セブン-イレブンを担当する取次2強の一角・トーハンが、2025年中に日販のコンビニ流通網を引き継ぐと表明しました。ただ、移行に際して空白期間が発生する懸念も浮上しています。
引き継ぎを表明した取次(トーハン)が、(日販が撤退する直後の)2025年3月ではなく、7月からやりますと言った。じゃあ、3~6月はどうするの?という話だ。結局、6月30日までは空白期間が生じないように、何らかの形で日販として取り組むことになった。
「この状況を作ったのは日販だ」というふうになっているが、いやいや、ちょっと待ってくださいと。次やる人が「3月」って言えばいいんじゃないの?というのが本音だ。あとは、トーハンさんに7月開始を守ってもらいたい。
――業界内では「日販が人員削減に踏み込んだ」という声も聞こえます。
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