東大より攻めてる?「上智大の日本史」問題の凄さ 「現代的な視点」から歴史を見る良問だ
東洋経済オンライン / 2024年3月11日 11時0分
大学入試の問題は、いつの時代も同じというわけではありません。問題の形式面での流行もさることながら、出題されるテーマが時代の影響を受けていることも少なくないのです。大学入試問題を作成するその大学の教授の世相を捉えた問題意識が反映される、世の中に対するメッセージでもあると考えられます。
このような東大日本史を長年にわたり研究し、『歴史が面白くなる 東大のディープな日本史 傑作選』を上梓した予備校講師の相澤理氏が、面白すぎる東大日本史を解説します。
※本記事は『歴史が面白くなる 東大のディープな日本史 傑作選』の内容を抜粋し、加筆修正を施して再構成したものです。
受験生に「考える」ことを求める良問の数々
東京大学の日本史の入試問題(以下、東大日本史)では、受験生の答案にダメ出ししてもう一度出題したり、歴史学において完全な答えを見出していない問いを投げかけたりといった挑戦的な出題もたびたびあります(「東大日本史『同じ問題』が数年越しに再出題の衝撃 いつどんな問題を出してくるかわからない」参照)。
それらは「攻めた」問題ですが、受験生に「考える」ことを求める良問であると、私は予備校講師として確信しています。そしてそれは現代に山積する諸問題に対処するための糧とするためであるのでしょう。だから、世相とリンクする部分が生じるのです。
近年の東大日本史は丸くなった感がありますが、入れ替わるかのように、また違った角度から「攻めた」問題を出題する大学が現れました。それは、上智大学の入試問題(TEAP利用型)です。
私は毎年見ているので慣れてきましたが、今年度の問題文の冒頭をお読みになるだけでも度肝を抜かれるのではないかと思います。
〈問題文〉
2025(令和7)年開催予定の日本国際博覧会(大阪・関西万博)では、海外パビリオンの建設が遅れているという。ウクライナ戦争等に由来する建築資材の高騰や人手不足のために、日本国内の建設業者と契約が進まないのが原因らしい。しかしそもそも、オリンピックや万博といったメガ・イベントで都市を宣伝し、各種の奇抜かつ大規模な建築物を配置、国内外からの観光客を呼び込むという経済活性化の方法自体、もはや前世紀の遺物なのではないか。(以下略)
(2024年・上智大)
問題文はこのあと古代の旧都、近世の城郭といった権力者が行った巨大土木事業とそれに使役される民衆の様子を詳述し、それに沿った形で設問が用意されています。このように現代的なテーマに沿って日本史を概観するというのが上智大日本史の定番であり、例えば、昨年度は移民の歴史、一昨年度はジェンダーの視点から見る歴史でした。
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